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Lydia Mendoza [テックスメックス]


 今回取り上げるのはLydia Mendoza。第2次世界大戦前から膨大なレコードを残したテックスメックスの女王さま。このCDでは1950年代の名演が聞けます。 
 彼女のトレードマークは12弦ギターを自ら弾いて歌う弾き語りにありますが、ここではマリアッチバンド、コンフント、オルケスタ等、さまざまな編成の楽団と共演しており、参加ミュージシャンも、Narciso Martinez, tony De La Rosa, Beto Villa Orquestaなど、興味深いラインナップとなっています。
 録音時期は1952年ころから1960年代はじめまで、Lydia33歳〜40歳くらいの時期にあたります。
 このCDの構成はカンシオンからマリアッチ等のメキシコ歌謡まで多岐にわたり、リズムもポルカ、ボレロ、タンゴなどさまざま。彼女独特のびのある歌い方がグルーブ(うねり)を感じさせ、アルバム全体に多様性があるにもかかわらず統一感が伝わってきます。おおよその内訳は、Mariachi Idealというメキシコ歌謡やマリアッチ向けのバンドが4曲、Beto Villa Orquesta 2曲、Narciso Martinez(Y su conjunto)6曲、Tony De La Rosa y Conjunto2曲、ギターを中心とした編成7曲、ほかとなっており、全部で26曲。やはり彼女の得意なストリッングバンド的な編成の曲が多いようです。この構成からもわかるように1950年代のLydiaの回りには、当時のテックスメックス(Musica Tejana)のほとんどの要素とスタイルが集約されていたことがわかります。
 内容的には、やはりNarciso MartinezやTony De La Rosaとの共演に興味が湧きます。Narciso Martinezとの歴史的共演(50年〜54年)は、アコーディオンの音も素朴な感じで、なんとなく懐かしい、古めかしい雰囲気があります。歌のバックにまわったときのNarciso Martinezの演奏も素晴らしく、Lydiaの太くて力強い声にはあっていると思います。本CDのライナーノーツによればTony De La Rosaは、Lydiaのもっともお気に入りのアコーディオン演奏者(Orquesta Reader)だそうです。Tonyとの共演は1954年。2曲ともボレロで、おしゃれなアコーディオンのフレーズが聞こえてきます。バックにまわったときのアコーディオンのきめ細かいフレーズなど聞き所は多い。もし可能であればポルカの曲も聞いてみたかった。

 1916年、Monterreyからの移民の子供としてTexasのLeonorに生まれ、幼少のころはチューイングガムの包みに書いてあった当時の流行歌の歌詞を暗記して曲を覚えていったというエピソードの持ち主であるLydia Mendozaは1928年に彼女の家族とともに初録音、その後ソロとして独立し、Bluebird等に録音、人気を博しました。1934年最初のヒット曲"Mal Hombre"(Lydiaの代表曲)を出し、戦後はIdeal等で録音したのは前述したとおり。戦後はメキシコでも盛んに演奏活動をし、Jose Alfredo Jimenezなどとの交流をもったようです。なおWikipediaで調べた限りでは彼女は現在91歳でご存命とのことです。彼女は持ち前のボーカル能力と自身のリズム感(グルーブ)により、どんな曲でも自分のものにしてしまうという、希有の才能を身につけた歌手ということができるでしょう。日本でたとえるなら美空ひばりさんのもっている才能と似ているといえましょうか。と、わかったようなことをなんとか調べて書いてみましたが、テックスメックスの巨人は、そんなに簡単に紹介して全貌がわかるはずありません。興味がありましたら彼女のものならどれもみんなよいので、是非とも一度CDを聞いてみてください(入手しやすいです)。
 というわけで1950年代のMusica Tejanaの二大潮流であるConjuntoとOrquesta、そのどちらのスタイルとも録音し、しかもクオリティーの高い演奏を実現したLydia Mendozaをもって本ブログ第3節のおわりとし、次回はそのまとめを書くことにします。

 
 


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ベアトラック

日本も、やっと秋らしくなってきましたか?
こちら出張中のサンタフェも、日中はともかくとして、(標高2100mの所為もありますが)朝晩はすっかり涼しくなりました。
昨日、サンタフェのプラザで、偶然マリアッチのパレードを見ましたよ。高らかなトランペットの音に、気分も高揚しました。
by ベアトラック (2007-09-02 21:28) 

長谷雅春

ベアトラックさん、Deacon_blueさん、niceありがとうございます。ベアトラックさん、いまサンタフェですか? 
by 長谷雅春 (2007-09-02 23:15) 

ベアトラック

僕のブログにコメントをいただき、ありがとうございました。早速、Tobias Rene のブログを見てきました。彼の名前は聞いたことがありましたが、音はまだでしたので嬉しかったですよ。
ニック・ロウも懐かしいですね。ライ・クーダーたちと組んだ「Little Village」を思い出しました。

お返しといっては何ですが、サンタフェで一番人気のブルース・ロック歌手ALEX MARYOL のサイトをご紹介します。 http://www.alexmaryol.com/
彼のお兄さんは、僕のお気に入りレストランの経営者なんですよ。
by ベアトラック (2007-09-03 00:11) 

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