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「ルワンダ大虐殺~世界で一番悲しい光景を見た青年の手記~」 [本ノンフィクション:ジェノサイド]

ルワンダ大虐殺 〜世界で一番悲しい光景を見た青年の手記〜

ルワンダ大虐殺 〜世界で一番悲しい光景を見た青年の手記〜

  • 作者: レヴェリアン・ルラングァ
  • 出版社/メーカー: 晋遊舎
  • 発売日: 2006/12/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • 7点

 

1994年ルワンダで起きた、多数派フツ族による、少数派ツチ族の大虐殺。

3ヶ月で80万~100万人、ルワンダ国内にいるツチ族の3/4もが虐殺されたと言われ、映画「ホテル・ルワンダ プレミアム・エディション 」や「ルワンダの涙 」の題材ともなっている。

 

本書は、ルワンダ虐殺の時、目の前で家族全員を殺害され、奇跡的に生き延びたツチ族の青年の心の叫びを綴った本である。

この本には、虐殺当時のルワンダの凄惨な状況と、青年の憤怒、絶望に満ちている。

突然隣人が殺人者となって襲ってくる恐怖、何の罪も無い家族が目の前で惨殺された事への絶望、惨殺現場で受けた醜い傷跡に対する苦悩、家族を殺した人間が何の罰も受けず平穏に暮らしている事に対する怒り、そして何度も繰り返される大虐殺が起きるまで信仰していた神への問いかけ・・・。

ルワンダでは、国民のほとんどが虐殺の加害者、もしくは被害者の立場に立つ。事体を収拾するため、大統領は、虐殺に加担した人々に対し、軽い罰で対応している。もし、虐殺加担者を全員厳罰に処すれば、国民の大多数がその対象となり、国が維持できないからだ。

この辺は、「ジェノサイドの丘〈上〉―ルワンダ虐殺の隠された真実 」に詳しく載っており、こちらを読めば「そうするしかないのかも・・」と納得できるのであるが、被害者である著者にとっては、とても納得できるものではない。自分が同じ立場に立ったとしたら、やはり青年のようにどこにもぶつけようがない怒りと悲しみにのた打ち回る気がする。

青年の心の叫びの吐露である本は、ルワンダの虐殺で多くの人が味わったであろう気持ちを教えてくれる。彼の心にいまだ平安は訪れていない。家族を惨殺した人間が罪を償わない限り、心の平安は無いと彼は言う。しかし、それは今のルワンダの現状を考えれば不可能に近いことである。もし犯人に復讐したとしても、復讐は復讐を呼ぶ。虐殺の残した重い後遺症を解決する難しさを考えさせられる。

そして、虐殺が行われていた当時の、人間が人間をゴキブリ(フツ族はツチ族をそうよんでいた)を殺すように、殺す事が害虫を駆除する事のように正当なこととして行われる様子は、人間の持つ残虐性をこれでもかっと思うほど見せてくれ、そちらも恐ろしい。

ただ、ルワンダ虐殺の歴史的背景などについては詳しく書いていないので、そういうのが知りたい人は別の本を読んだ方がいいと思う。  

 

 


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