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【データ】人権擁護法 [└関連リンク集・資料]

Encarta2003(文書作成は2002年頃)からの引用です。
以下引用

プロローグ

人権擁護法 じんけんようごほう 2002年(平成14)3月に政府が国会に提出し、その通常国会では継続審議となった法律案。人権が尊重される社会を実現するために、人権侵害行為などによる被害の救済、また、その予防のための人権に関する啓発を目的としている。具体的には、人権侵害が国家や公共団体の機関などの権力からのみならず、社会的な強者によってもおこなわれることを認識し、裁判所とは別に、しかし一般行政権から独立した国内人権救済機関として、人権委員会を設置しようとする法律案である。

しかし、マスメディアなどの取材活動に関して、過剰取材を正面からとりあげて規制しているために、個人情報保護法案、青少年有害社会環境対策基本法案とならんで、憲法21条で保障される表現の自由、報道の自由や国民の知る権利を制約する「メディア規制3法」のひとつとして、メディア関係者を中心に多くの批判がある。

II  経緯

1993年12月に国連総会で「国内人権機関の地位に関する原則(パリ原則)」が、また94年には「人権教育のための国連10年」(1995~2004年)が採択された。一方、国内では96年度末に同和対策に関する特別措置法が期限切れになるにあたって、差別意識の解消のための教育・啓発の推進、人権侵害による被害救済の強化などについて、地域改善対策協議会が政府に意見を具申した。

1996年12月に2002年3月までの5年間の時限立法として、人権擁護施策推進法が制定公布された。1997年3月の同法施行にともない、(1)人権の尊重の理念に関する教育と啓発、および、(2)人権を侵害された被害者救済のために、人権擁護推進審議会がおかれた。5月には、法務大臣からこの2点について同審査会に正式に諮問がなされた。

1998年には、国連の規約人権委員会から、入国管理施設、刑務所での処遇に関する問題点が指摘され、日本にできるだけはやく独立した国内人権機関を設置するように勧告がなされた。

人権擁護推進審議会は、1999年7月に「人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本事項について」、2001年5月に「人権救済制度の在り方について」を答申した。この間、被害者に対する集団的過熱取材(メディア・スクラム)が問題視されるケースが続発していた。

これらをふまえたうえで、2002年1月に人権擁護法案の大綱が公表され、同3月に政府が人権擁護法案を国会に提出した。

III  人権擁護法の内容と批判

1  人権委員会

人権侵害の救済、人権啓発、人権擁護委員の委嘱などのために「人権委員会」がおかれる。人権委員会は、任期3年の委員長1名と委員4名からなり、常勤は2名で、内閣総理大臣が両院の同意をえて任命する。人権委員会は、国家行政組織法3条にもとづく、内閣から独立性を有する法務省所轄の外局たる行政委員会として位置づけられる。中央と地方に事務局がおかれる。職務執行の結果は適時に公表され、毎年、内閣総理大臣を経由して国会に報告される。

人権委員会については、人権侵害をおこなう危険を有する行政機関の一面をもつ人権委員会が、公正で中立性をたもった独立の活動ができるか否かが懸念されている。しかも、刑務所などでの処遇で問題点を指摘される法務省の所轄におくことにも批判がよせられている。この点で、1993年のパリ原則や98年の勧告にそっていないとする指摘もある。

2  救済手続

救済手続としては、一般救済手続と特別救済手続がある。一般救済手続とは、人権侵害による被害の救済または予防のために必要があるとき、すなわち、人権侵害に関する相談があり、人権救済の申出や通報その他の情報があれば、必要な調査をおこない、助言、援助、加害者に対する説示・啓発・指導、被害者と加害者の関係調整、行政機関への通告、犯罪としての告発などをおこなう手続き(一般調査)である。

特別救済手続とは、(1)差別的取り扱い、(2)差別的言動、(3)虐待、すなわち、公権力の行使にあたる公務員の虐待、社会福祉・医療・学校などの施設での虐待、児童・配偶者・高齢者や障害者に対する虐待、(4)報道機関またはその取材者の人権侵害行為、(5)被害者による回復が困難な人権侵害など、「特別人権侵害」に対してとられる手続きである。

(1)~(3)および差別助長行為には、一般調査のほかに、特別調査として出頭要請・質問、文書などの提出・留置、立入・検査・質問などをおこないうる(違反者は30万円以下の過料に処すことができる)。また、(4)をふくむ特別人権侵害については、調停および仲裁、勧告および公表、資料提供、訴訟参加という訴訟援助がおこなわれる。差別助長行為等については、停止勧告や公表のほか、訴訟によって差し止めを請求できることになっている。

批判は、報道機関によるものが中心となっている。その第1は、不明確な基準のもとで過剰取材が一般調査対象とされることである。不明確な基準であれば、取材活動を過度に抑制することになる。

第2は、犯罪被害者、犯罪少年、犯罪被害者や犯罪者の配偶者、親族などの私生活に関する事実(プライバシー)をみだりに報道し、その名誉または生活の平穏をいちじるしく侵害することを特別人権侵害としていることである。この点で、権力者の犯罪疑惑に関する取材活動を制限することになりかねない、との危惧(きぐ)が表明されている。

第3は、取材方法としてその相手方が取材をこばんでいるときに、つきまとい、待ち伏せ、見張りなどをおこない、電話やファクス送信を継続的または反復的におこなうことを規制している点にある。通常の取材でもおこないうる方法を、相手方の同意という条件にのみかかわらせるのではなく、取材行為としてゆるされない客観的要件が明示される必要があるとされる。これでは、政治家や公務員など権力者に対する取材や報道に支障が生じるうえ、報道側に権力に対する取材萎縮(いしゅく)が生じ、その結果として民主主義と自由があやうくなる。

第4に、通常の行政機関の系統から独立している人権委員会の措置・処分に対して、不服の申し立てをみとめる行政審判の手続を規定していない点を批判するものもある。

3  その他

労働関係の特別人権侵害に対しては、厚生労働大臣が救済措置をとり、船員労働関係における特別人権侵害に対しては、国土交通大臣が救済措置を命ずることになっている。各大臣は、担当する特別人権侵害に関する事務処理状況について、毎年、人権委員会に報告書を提出することになっている。

この点では、労働分野での女性差別などが、人権委員会の管轄からはずされている点も問題であるという指摘がある。

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※この記事(引用)の投稿日付は2005/3/31ですが、表示順序調整のため投稿日付をずらしています。また、引用元から察するに2002年頃に記述された内容です。


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ちょこ

勉強のために国家行政組織法(3条も含む)を掲載しています。よろしければご覧ください。
by ちょこ (2005-04-23 02:34) 

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