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<数時間前の景色> [短編]

(まえがき)

「僕は朝が大嫌いだ」
この一言で大体の人間性が分かるから恐ろしい。
 
「私は朝が大好きだ」
こんな人がいたとしよう、もう明らかに僕とは相成れ無そうな響きではないか?
 
もう一度言うが、「僕は朝が大嫌いだ」。
ましてや冬の場合は「大嫌い」の前に、「最高に」が付いてくるキャンペーンが開催されてしまうほどだ。

「僕は朝が大嫌いだ」には他にも意味を含んでいる。
それは、一日が終わってしまうからだ。
いや、本当に終わるわけじゃない。頭の中での話しだ。
大体人間がやるべき事は決まっている。
想像も付かない現実とはなかなか襲ってくるものではないわけだ。
朝ベッドの中でスケジュールを思い出す。
大体その通りに一日を過ごす。
まるで同じ日を二回味わったんじゃないかと錯覚する事もあるぐらいだ。
「デジャビュ」と呼ばれるものを体験した事はないか?
僕なりの解釈でしかないがそれは、朝ベッドの中で「一日が終わってしまう」人が体験してるんじゃないだろうか?
僕はそんな気がしている・・・。

 

(1)
 
7時57分
 
時計を叩いた後、また僕は夢の中へ旅しに行ってしまった。
まぁその夢が面白ければある意味ではその旅も「ありな方向」にしてやりたいが、どうも「最悪」な夢だった。
断片的な記憶を辿るのもためらわせるほど、僕は脂汗をかいていた。
まぁ良く覚えてない事だし、さっさと忘れるのが正解だ。

いつものように一先ず時間を確認して驚いて見せた後、余裕を持ってシャワーなどを浴びる時間は無くなったが、まだ間に合う可能性はあると軽く深呼吸をした。
クセでテレビを付けた。
まだ画面は真っ暗なまま耳に飛び込んできた文章は、

「・・・犯人は少し興奮状態で、今は説得にも応じない姿勢です。誘拐された子供の安否が心配されます・・・」

早朝からテレビでは、誘拐事件を取り上げていた。
他人事にしたいわけじゃないが、朝からちょいとヘビーだ。
チャンネルを回したが、その誘拐のニュース以外ではアニメぐらいしかやってない。
どっちにしろ見てる暇はないし、テレビはすぐに消した・・・
 
そう、今日実は大事な面接の日なのだ。
しかも、自分の受けた会社で唯一最終面接まで残してくれた奇特な会社なのだ。
ぶっちゃけてしまえば親父が働く会社だったというなんとも情けない話なんだが・・・。
「親父の世話にはならねぇよ!!」って家を飛び出して3年、もう世話になってる自分をどう受け止めるべきかは後で考える。
昨日あれ程自分に「明日だけは必ず起きること!!」と魔法をかけた筈だったのだが、僕にはそんな力が無かったらしい。
奇妙な出来事ならあったんだが・・・ここではその説明をしてる時間さえも惜しいのだ。
なぜ面接を早朝からするんだと逆ギレしてみても、とにかく9時までには会社に着かなければいけない事だけは拭いようの無い事実だ。
 
洗面台でカラスの行水よろしく石鹸も付けずに顔を洗い、シェーバーで髭を剃る。
昨日床に投げ出したままのスーツ、シャツ、ネクタイの三点セットを素早く身に付け、髪の毛はワックスで適当に済ませた。
その隣の小さなテーブルにはコンビニで買った弁当の食いかけや、カップラーメンの空が僕を迎えてくれる。
「我ながら素晴らしい一人暮らしだなぁ・・・」なんてつぶやいてみた。
 
万年床の煎餅布団を踏みつけながら目の前の鏡に映る自分は、何処かだらしない空気を羽織っているがもうしょうがない、遅刻するよりはなんぼかマシだろう。
シャツの右の襟の折れ曲がりを気にしつつ、手には書類の入った鞄を忘れずに持って玄関を飛び出した。
 
家の施錠をする時間も惜しいぐらいに急いでいたんだが、良く考えたら電車が来る時間は決まっている。
玄関を飛び出す必要もなかったわけだ。
ここで急いでも乗る電車は同じと気付き、ポケットから鍵を取り出ししっかりと家の施錠をした。
家から駅までは運が良い事に、走れば30秒で着く距離だ。
現在の時刻は8時2分。とにかく自分の出来る限界が、結果、この時間になったわけだし今更ジタバタしても一本前の電車に乗れるわけでもない。そう、何も変わらないのだ。
目覚めた時点で電車の出発する音がしてたわけだし、その次の電車には乗れるわけだから、最速で用意したと言える。
一人で納得し満足した。
もう一度鍵をポケットにしまい、駅まで小走りした。
予定通り、8時8分に到着する電車に関心しながら、その電車に僕も乗り込んだ。
一本前の電車は田舎電車のせいだろうか、7時58分には出てしまっている。
もう一本ぐらいは、7時58分と8時8分の間に来そうにも思えるが、現実は意外とこんなもんかな?と。
 
電車に乗車している回りの人の顔は当たり前だが、知らない人ばかりだ。
金髪の朝帰り風の兄ちゃんや、携帯を神業のように扱う学生、恥ずかしげもなさそうに化粧を続けるOL、昨日の酒が抜けてないようなサラリーマン。
ただ一つだけ「殺伐」という統一感があるだけだ。
そして電車の中では必ずヘッドフォンをするのが僕のルールだ。
フェイバリットアーティストを僕なりのベストで聞くのが電車の中での唯一の楽しみなのだ。
「僕だって頭の中ヒーロー描いて 憧れて悔しくって・・・」軽快なサウンドに乗せて聞こえてくる歌詞が僕の感情とダブる。
僕もヒーローには憧れるし、今でもそれは変わらない。
善悪の境目が無いこの時代のヒーローって一体どんなものだろうと考えたりもする。
ただ、この年になると「ヒーロー」って言葉を口にするのもなんか恥ずかしくなってた・・・。
 

(2)
 
僕は、「川上 慶二」と言う21歳のフリーターだ。
因みに親父は「慶一」。安易だが長男だったらしい。まぁそんな事はどうでも良いが、自分の息子に「二」って付けるのはどうなんだ?しかも僕は一人っ子だ。
自分の方が強いんだぞってアピールでもしたかったのだろうか?
名前だけ見ると親子と言うより兄弟と言われそうだが・・・そんなところからオヤジの人間性を問いたくなる。
 
僕の趣味はサッカーで、見るのではなくやるほうだ。今でも友人とサッカーチームを結成しているぐらいだし。
プロを思い描いた事だってあったし、今でも諦めたわけじゃない。
その証拠が今日の面接だ。他の落ちた会社も全て「サッカーチーム」を持っている会社だったのだから。
「サッカーチーム」と言ってもプロのではないんだが、まぁサッカー好きと言う事は分かってもらえるだろうか?
高校時代、全国大会ベスト4にもなったし、レギュラーでもあった。
最後のは自慢だ。
 
などと言っているうちに乗り換え予定の駅に着いた。
時間は8時32分。
ここから走れば次の乗り換えの電車には、歩いたんじゃ間に合わない電車に乗れる可能性がある為、ヘッドフォンステレオは鞄に投げ捨て、走り出した。
この一本を早める事が出来れば、面接前に軽い休憩が入れられる計算だ。
肩で息して面接を受けたんじゃ、間に合ったところであまり期待は出来ないだろうし。
8時34分の電車の次は、8時39分。
この5分が僕にはとても重要な問題だ。
とにかく僕は全速力で駆けていた。
まるでサッカーのオフェンスでもしているような気分だ。
足元の見えないボールを巧みに操り、ディフェンダーを次々と抜いていく。
「おっと日本の川上、敵陣を一人で切り開いていく~!!」自分で実況までつけて乗り換えの電車と言う名のゴールを目指した。
改札を抜け最後の階段を3段抜かしで駆け下りるが、目の前で無常にも扉は閉められた。
「ゴールキーパーのナイスセービングと言ったところか・・・」なんて冗談を言ってる場合ではないんだが。
電車が行ってしまったんだからしょうがない。
普通に考えたら間に合う方がおかしい乗換えなのだからと自分を慰めた。
肩で息をしながら次の8時39分の電車に乗り込み、目的の駅までヘッドフォンから流れる声に合わせ頭の中でまたユニゾンをした。
「僕だって頭の中ヒーロー描いて 憧れて悔しくって・・・」
 

(3)  

8時50分
 
目的地に電車は滑り込んだ。
地下鉄から吐き出されて改札をくぐり、エスカレーターよりも早く地上に出た。
時間は8時52分・・・。
ここから歩いて約8分のところに会社はある。
イコール走ればまだギリギリ間に合う計算は通用しそうだ。
駅を出てすぐ左にある大きな交差点の信号がなかなか変わらない事も承知してるし、近道も確認済みなので、自分なりのルートで会社を目指す。
信号を回避する為、距離的には少し遠回りになるが実は会社までの時間を短縮できる、駅から右に向かった先の歩道橋を駆け上がったんだが、その時に疑問が生まれた。
見下ろした交差点で渋滞が起きているのだ。
同じ目線では気付かなかったが、俯瞰で見るとその状況が手に取るように把握できた。
しかも歩行者までがいつも以上に集まっている。
いつもは流れこそ多いが、そこまで渋滞をする場所ではない為、それが何か大体見当がついた。
そしてそのすぐ後、サイレンが聞こえて来た。
確信に変わった。
事故だ。
それ以上の事は分からなかったが、誰かが事故にあった事だけは理解した。
野次馬をしてる暇は今の僕には無いわけだし、親父の顔に泥を塗るわけにもいかない、しかも面接官の一人が僕の親父というあまりにも素晴らしいオチまで付いている。
とにかくその場を後にし、全速力で会社に向かった・・・。
 
どうにかこうにかと言う言葉がしっくりきそうなギリギリ8時57分には会社に辿り着いた。
この時ばかりは自分の逃げ足の速さと、近道を見付けたことを褒めたくなる。
まぁその前に電車に乗れてればこんなことにならなかったわけだから、1勝1敗ってところか。
面接用の書類を受け付けの女性に渡した時に、少し笑われはしたが、間に合ったのだから気にはしない。
満面の笑みで返してやった。
僕から遅れること2分ぐらいだろうか?僕よりも本当にギリギリで他の面接者がもう一人間に合ったようだ。
勿論僕と同じように肩で息をしている。
外見的には運動神経が悪そうには見えなかったので、多分交差点に捕まった口だろう。電車は僕と一緒の電車だったかも知れない。
やはり近道は大正解だ。
僕は「うんうん」と「僕も同じようなもんだから」の意味を込めてその男に頷いて見せた。
その男は親近感を覚えたのだろうか?僕に息を弾ませながら喋りかけてきた。
「知ってる?駅前の交差点で・・・事故があったんだよ・・・」
そう男は息切れをしながら切り出した。
「あぁ、知ってるよ渋滞してたし、救急車が来てたからね」
何のひねりも無しに普通に僕は返した。
「その事故にあったのが・・・どうも小学生を庇った中年らしいよ・・・」
男はまた肩で息をしながら続けた。
「しかも・・・嫌な偶然だよね、その中年の男性は・・・スーツの胸に、この会社のバッジをしてたらしいよ・・・」
そこまで話して男は大きく深呼吸した。
 
・・・なんだか嫌な予感がする。
ここの社員?中年?こんなギリギリの出社?僕の回りで当てはまる人物が一人いるんだ。
僕にそっくりな・・・いや向こうが本家本元の朝にルーズな親父が頭に浮かんだ。
 
他の面接者が面接をしてる部屋のドアを何の躊躇も無く開けた・・・が、親父はいなかった。
それと同時ぐらいだったか、僕の携帯が無機質にやる気無さそうに鳴った。
着信は実家からだ。もう内容は分かっていた。
「慶二?あたしよ!!お父さんが!!・・・」
その話を聞いた自分の息子のあまりにリアクションが冷静であった事に母は違和感を覚えたかも知れない。
会社から面接は先送りにするとの特例をもらい、母から聞いた病院へ急いだ。
今朝僕が見た夢はこれの事だったんだろうか?
 
その時鞄の中で微かに歌う声が聞こえた。
「・・・自分の事さえおぼつかないんじゃ 他人はともかく君さえ守れないんだ・・・」


(4)

あっけないぐらい簡単に親父は死を選んだ。
母親も、僕もまだ病院に着く前に息をひきとったんだ。
僕が病院に着いたすぐ後に母親も僕を追うように病院に着いた。
一番先に病院に着いたのは皮肉と言うべきでないだろうが、あの親父が助けたという小学生の母親らしき人だった。
小学生の母親らしき人は深々と頭を下げた。
初対面ではあるが、僕達が自分の息子を助けた中年の身内だとすぐに感じたんだろう。
礼儀として僕も頭は下げておいた。
病院の先生が言うには、「打ち所が悪かった」と簡潔なコメントだった。
それを聞いて母は当たり前だが泣き崩れている・・・
その隣で小学生の母親が僕の母親に声をかけれずにただ直立不動になっていた。
薬品の匂いがする真っ白い廊下で、母親の泣き声だけが響いていた。
だけど、僕は妙に冷静だった。
そして子供の頃にあった奇妙な事件を思い出していた・・・
 

(5)

親父が居間で新聞を開いている。
テレビでは「天気予報」が流れている。
母親は台所で何か料理をしているらしい。
何気ない家族の朝だ。
僕も自分の真隣の椅子の上にランドセルを投げて自分も椅子に座った。
「お前は俺に本当にそっくりだな」
親父が言う。
「寝ぼすけなところもそうだが、寝癖の位置まで同じなのは俺が恥ずかしくなる程だ」
そういう親父は何処か嬉しそうだ。
「母さんはとっくの昔に俺を起こしても無駄だからって起こしてくれなくなったしな」
と目の前の僕に言ってるふりして、台所の母親の背中に言っている。
「あらあら?いまだに毎日起こしてますよ?あなたが起きないだけでしょ?」
流石夫婦と言うべきか、自分に言われたとすぐに察知した母親は台所から顔を出して親父の背中に反論。
暖かい、本当に何気ない家族の朝だ。
 
その日学校の体育で友達が大怪我をした。
マラソン大会が近い為に、マラソンの練習をしていたんだが、学校の校庭が狭かったのが原因で公道での練習だった。
友達の大怪我の原因は、曲がり角の死角になった付近から運悪く歩道にバイクが突っ込んで来た為だ。
真昼間だというのに居眠り運転だったのだろうか。
僕の目の前で友達が倒れて行く様を見るまで何が起きたか分からなかった。
病院に運ばれる友達を見て、「もしも僕が友達に声をかけていれば・・・」、「もしも友達の手を掴んでいれば・・・」「もしも・・・」
頭の中で「もしも」があちこちに飛び交い残響し、酷い耳鳴りが起きた。
その耳鳴りに恐くなり両手で耳を塞いだけど、耳鳴りは酷くなっていき、その場にしゃがみこんだ。
見慣れた風景が傾いていく・・・いや、僕がまるでスローモーションのように耳に手を当てたまま倒れていったのかも知れない。
地面と体がまったくの平行になるその瞬間目の前の景色が音も無く「グニャリ」と曲がった・・・
 

親父が居間で新聞を開いている。
テレビでは「天気予報」が流れている。
母親は台所で何か料理をしているらしい。
何気ない家族の朝だ。
僕も自分の真隣の椅子の上にランドセルを投げて自分も椅子に座った。
「お前は俺に本当にそっくりだな」
親父が言う。
ん?
「寝ぼすけなところもそうだが、寝癖の位置まで同じなのは俺が恥ずかしくなる程だ」
そういう親父は何処か嬉しそうなんだが、僕は違和感が体の奥の方から沸沸と上がってくるのを感じた。
この後の親父の言い回しはきっとこうだ、(母さんはとっくの昔に俺を起こしても無駄だからって起こしてくれなくなったしな)
「母さんはとっくの昔に俺を起こしても無駄だからって起こしてくれなくなったしな」
違和感が確信に変わっていく。
じゃあ次は母親がこう言うんだ、(あらあら?いまだに毎日起こしてますよ?あなたが起きないだけでしょ?)
「あらあら?いまだに毎日起こしてますよ?あなたが起きないだけでしょ?」
確信した。
これは「数時間前の景色」だ。
でも何故なんだ?
「もしも」と願ったからか?
そんな簡単なことだろうか?
さっぱり訳が分からないが、とにかく「数時間前の景色」だと言う事に関しては意外と早く受け入れることにした。
小学生とはそんなもんだ。
 
あっさり「数時間前の景色」を受け入れる事で、友達を助ける事も出来た。
ややこしいが、1度目の「数時間前の景色」通りに、2回目の「数時間前の景色」もバイクは突っ込んできた。
バイクの自爆はどうにも出来なかったが、とにかく友達を大怪我から救う事は出来たんだ。
友達にはなぜあの時間あの場所にバイクが突っ込んでくる事を知っていたのか不思議がられはしたが、相手も小学生だ、すぐに話題は別のところに切り替わっていた。
自分を褒めてあげたいのは、その事故が起きる直前まで誰にも言わなかった事だ。
親にも言っていないし、先生にも言っていない。
冷めた小学生と言えるかも知れないが、「信じてもらえるはずがない」って感じていたし、逆に、友達に「いついつにどこどこでバイクが事故を起こす」なんて言ってしまったら、今度は好奇心旺盛な小学生達は馬鹿にしながらもその場所にわざと行きたがってしまい、余計な惨事が生まれる可能性もあったと考えていたんだ。
 
僕は予知夢を見ていたのだろうか?それとも現実に「数時間前の景色」をもう一度経験したのだろうか?
けど、小学生にはちょっと荷が重すぎたらしく、それ以上考えがまとまらなかった・・・
 

(6)
 
子供の頃から十数年使わなかった「もしも」を頭に浮かべてみた。
 
なぜ十数年「もしも」を使わなかったかと言えば、虚しくなるからだ。
「もしも競馬でとんでもない大穴を当てたら?」
「もしもラスベガスで当たったら?」
「もしも宝くじで3億円当たったら?」
大人になっての「もしも」は何故かこんなんばっかりだった。
現実逃避したい、掴めないような夢物語ばかりにすがるのに嫌気がさしたからだ。
結局のところ楽して幸せになりたい、イコール「金」ってのが非常にリアル過ぎる。
僕の「もしも」も似たようなものだった事に一番の嫌気がさしたからだ。
 
しかし今の「もしも」は違う。
あの子供の頃の気持ちでの「もしも」だ。
「数時間前の景色」が見れるように強く願った。
あの頃の耳鳴り以来、例えば飛行機の中での気圧の違いでの耳鳴りや、無音になった時の静けさで起こる耳鳴りさえも背中にゾクッと何かが走るようになり、耳を塞いでいた。
そして今、僕にはあの頃よりも大きな耳鳴りが、何の前触れも無く襲いかかってきた。
咄嗟に耳を塞ぎ、その場にしゃがみこみたくなる位の恐怖と戦っていた。
「頼む、もう一度だけでいい・・・数時間前の景色へ・・・」
自分の声さえも掻き消されそうな耳鳴りに負けないように何度も繰り返した。
 
薬品の匂いのする廊下がゆっくり傾き出したのか?僕が倒れていくのか?
廊下と体が平行になる瞬間、目の前の景色が音も無く「グニャリ」と曲がった・・・。
 

(7)

7時57分
 
カーテンの隙間からこぼれる強い光で目が覚めた。
これが「数時間前の景色」か「明日」なのかこの瞬間は分からないが、とにかく脂汗をかいていた。
 
クセでテレビを付けた。
画面はまだ真っ暗なまま耳に飛び込んできた。
「・・・犯人は少し興奮状態で、今は説得にも応じない姿勢です。誘拐された子供の安否が心配されます・・・」
「数時間前の景色」と同じようなコメントをテレビが話していた。
 
すぐに実家にも電話をした。
3回目のコールで母親が出た。
「はい川上でございます」
余所行き声で電話に出る母親に、「僕だけど親父はもう家を出たよね?」と唐突に聞いた。
 
親父は「生きて」いたし、会社にも向かっていた。
これは「数時間前の景色」と確信した。
 
親父は携帯電話を持っている。
しかし、不運としか言いようがないが、実家から会社まではずっと地下鉄なのだ。
駅によっては繋がるが、事情を説明するような時間は無いだろう。
 
繋がらない親父の携帯の留守電にとにかく自分の見た「夢」を書き殴るように説明した。
「僕だけど、今から言う事は冗談なんかじゃないから、ちゃんと聞いてくれ」
僕はそう切り出して、「会社付近のあのデカイ交差点で8時47分過ぎに、ランドセルの子がいたら何かのはずみで公道に飛び出すんじゃないかと思うんだ。自分の意思か事故かは分からない。だけどそれを助けようとした親父の身にも危険が生じるんだけど・・・でも、でもだから子供が飛び出す前に、そうなる前に子供を止めてくれ!」
もうなんと言って良いか分からなかった。
つじつまがおかしく、矛盾だらけで意味不明な文章にしか聞こえないかも知れない。
だけど僕はその現場を見ていない。
子供のその時の格好も見ていない為一体事実はどうなのか知らなかった。
あくまで人から聞いた噂を信じただけだ。
どう綺麗に説明しようとしても「予知」なんておかしい事だけは確かだったし、何よりも、地下鉄から出てすぐにこの留守電を親父が聞く保障が何処にも無かった。
小学生の頃に誰にも言わなかった自分を思い出しもした。
 
1度目の「数時間前の景色」が夢であろうが現実であろうが構わない。
2度目の「数時間前の景色」を捻じ曲げる必要が僕にはある。
留守電の「運任せ」的なものじゃ解決にならない。
やはり僕が自分の手で捻じ曲げなければいけない。
助けたいってのも勿論あるが、そんな自分で作りあげる感情以前に、正義感の強い親父の「血」がそうさせるんだろう。
 
今回の「数時間前の景色」を受け入れて分かった事がある。
それは、目覚める時間は変えられないって事だ。
1度目に目覚めた時の記憶までしか戻れないと言うなんとも歯痒い事実に気付いた。
 
分かっている事は8時47分過ぎに事故が起きるであろう事実だけだ。
これは間違いないと思える。
1度目の「数時間前の景色」の僕があの駅に辿り着いたのは8時52分。
って事は5分ほど早くあの駅に着きさえすれば・・・現実を捻じ曲げられる可能性がある事もまた事実だ。
 
床に投げ出したままのスーツ、シャツ、ネクタイの三点セットをのうち、「ネクタイ」は省いて素早く装着し、髪を無造作にワックスで仕上げ、顔も水で済ませる。シェーバーはしなかった。
施錠もせずに僕は駅に向かって駆け出した。
 
電車の他にもっと速く着ける方法も考えた。が、バス停はあるがバスは見当違いな駅に行くだけだし、タクシーは滅多に通らない。
携帯でタクシーを呼んだところで来るまでに5分以上かかるし、第一、道路の状況が掴めていない為リスクが高すぎる。
自慢じゃ無いが愛車は持ってないし、それよりも免許を一つも持ってない。
 
だったら、やる事は一つに絞られた。
僕が時間短縮出来る場所が一箇所だけあったはずだ。
そう、「乗り換え」だ。
あの場所で、死に物狂いで走れば5分時間を巻き戻せる。
それしか方法はない。

予定通り、8時8分に到着する電車に、1度目の「数時間前の景色」とは違い、今度は苛立ちを覚えながら乗り込んだ。
7時58分と8時8分の間に電車が来ない事もこの時ばかりは恨んだ。
電車に乗車している回りの人の顔は、1度目の「数時間前の景色」とまったく同じ人ばかりだ。
金髪の朝帰り風兄ちゃんや、携帯を神業のように扱う学生、恥ずかしげもなさそうに化粧を続けるOL、昨日の酒が抜けてないようなサラリーマン。
「殺伐」という統一感までが一緒だ。
だが、電車の中では必ずヘッドフォンをする僕のルールは今回ばかりは中止だ。
携帯と財布以外は全て家に置いて来たからだ。
一定のリズムで刻む電車の「ガタンゴトン」って音がやけにでかく感じた。
耳障りだったので鼻歌を歌ってごまかした。
「ポーズ決めたら変身出来ないかなぁ出来ないよなぁ・・・」


(8)
 
8時32分。
 
1度目の「数時間前の景色」同様、まったく同じ時間に電車は乗り換え予定駅に着いた。
この一本を早める事が出来れば、1度目の「数時間前の景色」を捻じ曲げられる可能性がひらける。
なんとしても8時34分の電車に乗らなければ、意味が無い。
この場所が全ての分岐点だ。
とにかく僕は全速力で駆けていた。
ここで鞄を置いてきた事、ネクタイをしてこなかった事が生きてきた。
しかもだ、説明不足だったかもしれないが、足元は「シューズ」で来たのだ。
「ローファー」では無理があると玄関口でとっさに「シューズ」に履き替えたのだ。
リクルートスーツにシューズとはちょっと異色だが、明らかに景色が早い。
足元の見えないボールを巧みに操り、ディフェンダーを次々と抜けて、改札を飛び越えて最後の階段も飛び降り、そのまま転がりこむように電車と言うゴールネットに突き刺さった。
「ゴール!!ゴール!!ゴール!!ゴーーーーール!!!!!」
何処かの実況アナウンサーみたいに頭の中で叫んだ。
「成せばなる」なんてこんな時に使うのだろうか?とにかくこれで大きく「捻じ曲げる」チャンスに近づいた・・・。
 
計算通り8時45分に電車は目的の駅に滑り込む。
1度目の「数時間前の景色」以上に急いで改札をくぐり、エスカレーターよりも早く地上に出た。
時間は8時46分30秒・・・。
あと数十秒で事故は起きる。
そんな事が本当に起きるんだろうか?と言うぐらいの日常の風景が逆に恐怖を誘う。
交差点に向かって走ると思い思いのスーツを身に纏う会社員、OL、学生、ランドセルの子達もチラホラ目立つ。
誰もが同じようにジリジリと苛立ちながら信号待ちをしている。
この中に親父も、あのランドセルの子もいるはずだ。
「すいません!!ちょっと通して下さい!!子供が危険なんです!!」
説明不十分の僕に対して、まわりのスーツ姿はあからさまに顔を歪める。
「すいません!!急いでるんです!!通してください!!すいません!!」
どこだ?スーツ姿の隙間を縫いながら横断歩道に少しづつ近づく。
横断歩道のギリギリ一歩手前に数人のランドセルを背負った子達が見えたその瞬間だっただろう、何かに押され僕はよろめいていた。
 
「!?」
 
振り返ると、僕の後ろのスーツも同じように、僕に体重を預け後ろを睨んでよろめいている。
誰だかは分からないが、躓いたか、転んだりしたのだろうか?
そんな事を瞬時に頭に描いた時にはバランスを取れずに僕も前のスーツにぶつかっていた・・・
大人はよろめいたで済むが、1番前にいたランドセルの子達の一人はバランスを崩し、道路に飛び出していた。
僕はとっさに叫んでいた。
「親父!!いるなら子供を助けてくれ!!」
 
けたたましいクラクションとともに一台の車が子供に襲いかかる一手前で一人の男性が子供を救い出した。
その後鈍い音と、ゴムの焦げる匂いが辺りに散らばった・・・
 
そこで疑問が沸いた。
今の事故の発端は僕じゃなかったか?
もしかしたら僕が割り込みした事に腹を立てた誰かがわざと押したんじゃないのか?
「数時間前の景色」が一体どんな事故だったかは知らない。
だけど、これじゃ何も解決になってないんじゃないか?
分からない・・・分からないが・・・
 
バランスを崩していた僕の前に投げ飛ばされた子供はただその場で泣き叫んだ。
そしてもう一人僕の前では中年男性が倒れこんでいた・・・。
 

(9)
 
翌日。
 
僕は薬品の匂いが立ち込める部屋にいた。
母親も一緒だ。
目の前にはベッドに横たわる親父の姿があった。
右腕には点滴を受け、親父の横のモニターは親父の鼓動を一定のリズムで刻んでいた。
 
親父はまだ目を覚まさないが、1度目の「数時間前の景色」とは明らかに違うところがあった。
そう、言い方は悪いが「生きている」んだ。
僕の目の前の親父は確かに生きている。
だけど、事故のすぐ後に浮かんだ疑問は未だに消えてなかった・・・
 
ドアをノックする音の後、あまり間を空けずに、初対面だが見覚えのある先生が入って来た。
入ってきて早々、「いやぁ~打ち所が悪ければ大変な事になりましたよ」
「無意識なんでしょうかね~ちゃんと自分で頭などは守ったせいで、左腕の骨折と肋骨にヒビ、体中の打撲で済んでます」
「まるで自分が事故に合う事を初めから予測してたような対処の仕方です」
この言葉に「ひっかかり」を覚えたが先生は続ける。
 
「運動神経が良かったんでしょうねぇ」
「頭にも異常は見られませんし、命にも別状はないですよ」
笑顔交じりに先生は語った。
部分部分の専門的な文章は覚えていないが、とにかく命に別状は無い事を知れただけでもう十分だった。
親父が大怪我をしたのは紛れも無い事実だし、僕の不甲斐なさもこれまた事実だ。
だけど、1度目の「数時間前の景色」を捻じ曲げる事が出来たのも事実だ。
 
例のランドセルの男の子が親父の為に、精一杯の感謝の気持ちを込めて書いた絵が壁に貼られていた。
そこには親父に似てない似顔絵と、「おじちゃんはぼくのひいろお!!はやくよくなってね!!」と綺麗とは言えない字で書いてあった。
僕も子供の頃に同じように「おとおさんわひーろーだ!!しょうらいぼくもひーろーになるんだ!!」って書いた事があった。
それを思い出した途端、知らず知らず泣きそうになった。
 
「やっぱり親父は今でも僕のヒーローだよ」
 
それでも事故の後の疑問は拭えなかった。
「僕は間違ってなかったんだよね?」と目覚めない親父に投げかけた・・・。
 

(10)
 
 2日後・・・
 
目を覚ました親父はこう切り出した。
「腹へったぁ~!!」
あぁそれで良い。それでこそ僕の親父だ。
親父は自分の姿をキョロキョロと数秒見た後、「お前も元気そうだなぁ!!俺もこんなんだけど元気だぞ!!」
と、骨折した腕を上げて見せる。
「いいからおとなしくしてろよ!!」
僕はいつものように返す。
「母さんはどうした?」
「あぁ、なんか親父がそろそろ目を覚ましそうだから、親父の好物買いに行くってさ。ホント恐いね夫婦の絆ってさ」
「流石俺の女房!!多分イチゴを買ってくるなぁ」
と嬉しそうな親父。
 
どのくらいだろうか?
ほんの数秒・・・いや数分だったかも知れない。
それまでのトーンとは明らかに違う口調で親父は話しはじめた。
 
「お前はもしもって信じるか?」
「もしもあの時ああしておけば、こうしておけばって願った事が現実になると思うか?」
「俺は奇妙な出来事に出会ったんだ」
「いつもどおり遅刻ギリギリで会社に向かってる時にな、目の前で子供が轢かれそうになっていた。それを助けられなかった・・・」
 
少しためらいながらも続ける。
 
「率直に言ってしまえば、恐くて車に飛び込めなかったんだ」
「子供は多分即死だったと思う」
「その時に感じたよ、自分の息子だったらためらったのか?ってな」
「答えはノーだ、間違いなく後先考えずに車に飛び込んだはずだ」
「他人だから、身内だからって天秤にかけてる自分にうんざりもしたし、その場で後悔もしたよ」
「もしももう一度チャンスがあるなら必ず助けるのにってな」
「いつから俺はこんな弱い人間になったんだって、嫌な人間になったんだと自分を責めたよ」
「何度も何度も・・・俺はヒーローに憧れてたはずなのになぁってな・・・」
「その時だった、大きな耳鳴りの中、景色がグニャリと曲がるような感覚に襲われたんだ」
「気付いた時には俺は新聞を読んでたんだ」
「その朝の風景は違和感だらけだった。そして気付いた」
「それが数時間前の景色だとすぐに受け入れることにしたよ。そしてあの子を助ける事を誓ったんだ」
 
「目的の駅に着いたのは1度目の数時間前の景色とあまり大差無い時間だった・・・」
「とにかくその短い時間の中で、あの子を捜したんだ」
「あの子が横断歩道に辿り着く前に見付ける事が出来れば事故は回避出来ると思ったからな」
「しかし、他にもランドセルを背負って、校帽を被ってる子なんて沢山いるし、ましてや制服を着ていて特徴もこれといってない、背丈も似ている子が多い、名前も分からない」
「こうなったら子供が倒れこんだ時に助けるしかないと感じたんだ」
「それでどの子か迷う事もないと感じたし、その時はそれ以上考えられなかった」
「まぁそこからはお前も知っての通りだ」
「だから・・・だから俺はヒーローなんかじゃないんだ」
そこまで話して親父は俺の目を見た。
そして少し間をおいて続けた。
「今日、目を覚ますまでの間、お前が子供の頃の事も思い出した」
「覚えているか?お前がまだ小学生だった頃の話だ」
「なんでも、友達を助けたんだ。僕は友達の危機を救ったんだ。1回目は無理だったけど、2回目は救ったんだよ。ってな」
「僕もヒーローになったんだ、でもヒーローは正体がバレちゃいけないからこれはお父さんと僕の秘密ねと言っていたんだ」
「その時は聞き流しはしてないものの、子供の意図するものを理解してなかったと気付いたよ」
「あぁ、これの事だったんだってな」
「1回目は無理だったけど、2回目は救ったって意味もようやく理解した」
「十数年かけてやっと答えが分かったよ」
「お前は俺よりもずっと前にこの奇妙な出来事を体験してたんだったって理解した」
「あの事故の前に聞いた留守電も聞いた時は驚いたが、今思えば納得だ」
「お前も俺と同じように数時間前の景色を見たんだな?」
そう言ってまた親父は俺の目を見た。
 
「あぁ、見たよ。ただ違う事がある」
「俺の見た数時間前の景色は、親父が死んだんだ」
「1回目もオヤジは勇敢に子供を救っていたんだよ」
「だけど、その場所に俺はいなかった。その時には俺はもう面接会場にいたからね」
「そして2回目の数時間前の景色は、おれのせいで・・・おれのせいで事故になったかも知れないんだ」
「ヒーロー気取りで自分が助けるつもりだったくせに逆に事故を引き起こしたんだ・・・」
少し感情が昂るのを感じた。
 
「いや、それは違うんじゃないか?」
「結果がどんな形になったかはやはり結果論でしかないだろ?」
「ただお前は自分にとっての最善をつくした、そうだろ?」
「目の前で起こるかも知れない事実を指をくわえて見ていられなかったんだろ?」
「それで良いじゃないか」
「それでこそ俺の息子だ」
「子供だって、俺だって・・・俺はかなり痛いが元気なんだ、もう自分を責めるのはよしなさい」
親父の言葉はとても温かかった・・・
「なんだか親父に救われたよ」
精一杯の照れ隠しで僕はそう言った。
 

(11)
 
「子供の頃は他に誰も同じ体験をした奴がいなかったから、同じ日を2回体験したような気にもなってた」
「でも今回は違う。親父も似たような体験をしている。しかも微妙に形を変えて・・・」
「これは、数時間前の景色は現実ではないって証拠じゃないのかな?」
僕の結論はこうだった。
 
「そうかも知れないな」
簡潔な返事を親父はした。
 
「随分あっさりとかたずけるねぇ~」
僕が言う。
 
「どっちが正解って永遠に出ない問題だろ?恋の相談する女の子みたいに二人で永遠にこの話題を続けるのも違うだろ?」
親父は言う。
 
「確かにね。女の子ってず~っと同じ話題を繰り返す時あるよね。かっこいい、かっこわるい、告白する、しない、あれは何でだ?」
僕が言う。
 
「お前、話の論点そこじゃないだろうに」
親父の突っ込みが入った。
 
「そうそう、俺はヒーローじゃないって言ってたけどさぁ、車に自ら突っ込む人をヒーロー以外に例えるとバカって言うしかないんじゃない?」
と僕はちゃかした。
 
苦笑いをした後、親父が何かを思い出し勝ち誇るように、「そうそう、留守電の用件はもっと分かり易く簡潔にしなさい。あんな文章じゃ面接で落ちるに決まってる」
 
この親父・・・。
 
「それって今必要だったぁ?」
僕は溜息混じりに切り返したがサラリとかわされた。
 
「それより母さんは何処まで買い物に行ったんだ?」
「さぁ?親父の好きなイチゴを狩りに栃木まで行ったんじゃねーの?」
「ありえる・・・」
いつものバカな会話に戻っていた。
 
病室の無音のテレビでは、「誘拐犯逮捕、子供の無事を確認」と短いテロップが流れていた・・・。

 

(あとがき)

えーっと、かっこよく言えば僕の「短編」、僕なりの言い方をすれば「駄文」は楽しんで頂けたでしょうか?
別に誰かに発表したくて書いたものでは無かったんですが、唯一マネージャー2人に見せたところ意外にも良い反応が返ってきました。
誰かに伝わるように書いたつもりもないし、小説のように書きたいわけでもなかったんですが、こんな駄文でももし楽しんでもらえたらとFACESの皆さんに、手始めに(爆)発表する事にしました。
何度も反復しますが、誰かに伝えようとか、「良いでしょ?」とかそんな気はサラサラないんです。
なので、発表すると決めてからも、書き直しはしていません。(ちょっとした)
この作品は去年の11月中に、1日で書き上げたものです。
元々なぜこんな駄文を書いたのか?皆さんの中にはこれが気になる方もいらっしゃるでしょう。
僕はSURFACEの歌詞の全てを書いています。
その歌詞達に込める思いは、リアルの自分の経験や、希望など「椎名慶治」の心で書いています。
いわゆるノンフィクションに近いわけです。
それに比べて今回の駄文はフィクション。
多分これから先も僕の歌詞には使われる事がないであろう言葉達なわけです。
しかし、頭の中を整理するためにも、言葉を吐き出してしまおう、ゼロにしてしまおうという思いから書き上げました。
僕の頭の許容量はそれ程大きくないんです。
吐き出さないといつまでも同じ世界観に固執してしまう事が多々ありましたから。
この駄文を書き上げる事で、歌詞の世界観を広げる事が出来るような気がしました。
そしてそれは正解だったみたいです。
今後、また駄文を書き上げる事がある気がします。
その時は皆さんを犠牲にしても良いのでしょうか?
少し不安に思いつつも、あとがきにかえさせてもらいます。

2003,4,1 椎名慶治

 

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以前このブログで短編を書いていると言ってから数ヶ月、とうとうアップしたわけですが、見ての通りこの短編「2003年」に書いた前作なんですよ。元々ファンクラブのみで先行公開をしたものなんですよね。

続編はやっぱり前作を読んでもらってからの方が楽しめるかなぁ~と思ってコチラをさきにアップさせて頂きました。

アップする場所もすっげ~色々考えたんですよ。オフィシャルだったり、MCさんだったり、ブログでも別枠にするとかね。でもやっぱいつもの自分の場所でアップするのが1番リアルなんじゃね~か?って思いましてここに決めました。

真剣に考えずに軽い気持ちで楽しんでもらえれば嬉しいです。あくまでお遊び程度ですので。

 

 



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