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フォルクヴァンクプライス [diary]

右後ろの大きい白い物体は背後霊ではありません。Foto:穴猿
今日は、今学期の大きいイベントの一つである、学校内のコンクールが行われた。
その名も、『Folkwangpreis(フォルクヴァンクプライス)』。そのコンクールで、私と韓国人のチェリスト・ジュノ君も弾いた。

まだ18歳なのに、ものすごい音色を出すジュノ。普段は「ガンダムが好きだ~」「エヴァンゲリオンが好きだ~」「マンガマンガ~」とお子ちゃまなのに、チェロを持たすと途端におっさんに変わる。
息の深い音楽、繊細な感受性、それに何よりも一番大きいのは、彼の人柄。
そんな彼と一年半程一緒に弾いてきて、学校の行事として参加したのは、11月のナターリャ・グートマンの講習会以来今回が二回目。

ジュノは、5月に入って左手首が腱鞘炎になってしまった。
「僕もう痛くて弾けないよー。でも練習しないといけない・・・」と、涙声で何度も電話してきた。もちろん長く弾けないので、二人の合わせもろくに出来ない。そのうち、私も中旬頃に左手首の腱鞘炎が再発してしまった。二人で同じ箇所に湿布を貼って『怪我姉弟』と笑い飛ばしていたけど、合わせもできなきゃ、レッスンも受けられなくなって、二人の不安とイライラはつのるばかり。
今無理をすると、将来にも関わってくる不安があったので、「今回のコンクールもうやめた方がいいんじゃないか?」と言ってみたが、「いや、コンクールまでの我慢。絶対受けたいから受ける」という、彼の強い意志があったので、私も最大限の努力と協力を、と決めた。
私の腱鞘炎は二回目なので、悪くなる直前で気がつき幸い軽症ですんだけれども、ジュノは初めてで、そしてコンクールも近く、イライラが増していた。
昨日あったコンクール前のクラスの発表会でも、左手首の震えが酷くて、どうしても最後の一曲が弾けなかった。

そんなこんなで今日。
私たちが提出していた曲は、

・ラフマニノフ:ヴォカリーズ
・ベートーベン:チェロソナタ 第3番 Op.69
・ショスタコーヴィッチ:チェロ協奏曲 第1番 Op.107

この中から、ヴォカリーズとベートーベン1楽章、ショスタコーヴィッチの1楽章と3楽章を審査員に指定され演奏することになった。
合わせが足りていないという不安はあったものの、何とかショスタコーヴィッチの1楽章まで無事終了。3楽章は、チェロのみのカデンツァになる。
この曲の一番要の部分の、この5分間の3楽章。
私はジュノの必死な背中を見ながら色々なことを想い出し、そしてジュノの楽器から出てくる、信じられない大きな魂にビックリして、ステージの上なのに、もう涙ぐんでしまった。
本当に素晴らしいカデンツァだったのである。

終わった後は、ブラボーの嵐。そして、楽屋には長蛇の列。全てジュノの友達。
ジュノの人柄があらわれてるなぁと思った。分け隔てなく人と付き合えて、そして心優しいジュノだからこそ、人はジュノを心配し応援し続けていた。
私も彼と一緒に弾くようになって、色々なことを学んだ。それはこれからも続くと思う。

今回は本当によく頑張った。
結果は明日の午後に出る予定だけれど、それはこの際どうでもいいよ。
傍で見てても苦しくなるくらい自分を追い詰め、それでもやり遂げたこと、そして私もその過程を一緒に歩めたこと。これは何ものにも変えがたい嬉しさ。

苦しさが大きい分、後に残る嬉しさは大きい。
これを久しぶりに味わえて、今日はとてもいい気分で家に帰ってきた。

レッスンでお忙しいのにわざわざ聴きに来て下さったアネゴ猿様、いすの高さを変える恐怖症に怯えてる私の変わりにやってくれた+譜めくりをしてくれた穴猿、そして聴きに来てくれた各動物たちに大感謝です。

あ、そう。
今日一番に嬉しかったのは、私の恐竜教授が聴きに来てくれたこと。
一ヶ月ぶりの再会だけれども、元気そうだった。
恐竜教授には室内楽もたくさんレッスンしてもらっていて、もちろんジュノともレッスンを受け、私たちのデュオをとても好意的に思ってくれている。

・・金曜日から、恐怖のソロのレッスンも始まる。
明日からちゃんと切り替えなければ。。

写真:ジュノのオンマ(ママ)と三人で。


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保健室006

シュリちゃん
腱鞘炎の話を聞いていたので、保健室としては責任を感じて昨日のコンクールを聴きにいきました。しかし腱鞘炎のけの字も感じませんでした。素晴らしい演奏ほんとうにおめでとう!!
シュリちゃんのヴォカリーズ、すごく色っぽくて素敵でした。あれほどまでの色彩豊かな背景をつくってもらえたら、チェロ弾く人しあわせだろうな~、気持ちいいだろうな~って思いながら、何故かシュリちゃんばかり見ていました。

話は変わるけど、昨日Mensaでトラちびに会ったので、我々のブログのことをおしえておきました。ここに登場する日も間もないことでしょう。尚、名前についての会議を、出来たら今月中に設けましょう。
by 保健室006 (2006-06-01 17:01) 

ほくと

腱鞘炎に関しては、私はアマチュアだし素人だし、早く良くなることをお祈りすることくらいしかできないのだけど・・・。

せめて、ジュノ君には以下ののウェブサイト、教えてあげて。
http://tiyu.to/

強烈なオタクサイトであるにもかかわらず、一般人にもオタクが分かる稀有なサイトです。
by ほくと (2006-06-01 21:44) 

ミミ

おめでとうございます!!
まだ18歳のチェリストですか!将来が楽しみですね。
シュリちゃん、腱鞘炎はやく治るといいね。
お大事に。
by ミミ (2006-06-02 08:32) 

しづ

素晴らしい演奏だったんだね。
シュリさんの演奏もものすごいエネルギーに溢れているので、ジュノさんと二人、共に完全ではない状態を精神力でカバーしながら、きっとすごい演奏をしたのでしょう。

結果だけではないけれど、結果もついてきて良かったね!!!
本当におめでとう。
by しづ (2006-06-02 09:08) 

reiga

シュリさん、おめでとう!!
ジュノ君とシュリさんの、音楽に掛ける熱意が一位という結果をもたらしたのでしょう。 そして、思いやり。
二人で演奏するには欠かせませんね。
腱鞘炎を乗り越えて、努力して得たもの、一生の中でも忘れられない貴重な体験になったと思います。
辛い時があっても、この日の事を思い出して頑張ってくださいね!
by reiga (2006-06-02 10:47) 

東京の師さん

おめでとう!!!
二人とも腱鞘炎なのに、いい結果につながり良かった!!!
シュリの演奏しか知らないけど、すごくよくなっていて、おじちゃん嬉しくて涙物です。
とにかく、おめでとう!
8月に東京の演奏会で聴くのが楽しみです。(^^)
シュリママもおめでとうございます!!!!!!(^^)
by 東京の師さん (2006-06-02 12:29) 

御喜美江

シュリちゃん、本当におめでとう!!!
これでデカイ顔して『あの店』へ行けます。
あなたは我々Werden村動物の誇りであります。

シュリママ、おめでとうございます!!!!!

東京の師さまには、心から尊敬の念を感じます。このような素晴らしい師があって、今日のシュリちゃんがあるのです。遠い異国の地において、師の支えがどれほど大きなものであるか、私には分かるような気がします。東京の師さんのコメント読んで、涙ぐんでしまった私です。
by 御喜美江 (2006-06-03 05:33) 

れれれ

 シュリ、素敵!  おめでとう。
by れれれ (2006-06-03 13:03) 

shuri

みなさん。本当に本当に本当にどうもありがとうございます!!!
おめでとうと言ってくれる人が、私のそばにこんなにいてくれたなんて・・・私も涙ぐみながらメッセージ読みました。
これは、ジュノにも必ず伝えます。
明日は2人で祝杯をあげる予定なのだ・・ふふ。
まだまだこれからの2人ですが、これからもがんばっていきます。
どうぞよろしくお願いいたします。

■保健室006さま
コンクール来てくださって、本当にありがとうございました!!とても心強かった!!動物たちにとっては、アネゴは教祖ですものね!
ヴォカリーズも含め今回は、私たちの力以上に、チョー先生の力が大きいような気がします。私たちだけではここまでいかなかったはず。
ドクターを含め、素晴らしい先生に囲まれている環境って、とても幸せです。
んんんーちびトラ来ませんねえ。
寒いから冬眠しちゃったのかも・・。(笑
by shuri (2006-06-03 18:16) 

shuri

■ほくとさん
ありがとうございます!!
腱鞘炎は、ここから一時間の所に良い医者がいるらしいので、無理やりにでもジュノを引っ張って行ってきます。
朝6時までに行かなきゃいけないんだけど・・・。(泣
ジュノは語学も堪能で、ドイツ語だけでなく、英語、日本語、ブルガリア語も微妙に話せます。日本語のWebも見られる日がくるのではないかと期待していますが。。いつになることやら。鍛えておきます。

■ミミさん
どうもありがとう!!
ジュノは、可能性がどこまでもあって、地平線のように何でもできそうなので、これからほんと楽しみ。
私もジュノとチョー先生のおかげで、ずいぶん変わった部分もあるし、エッセンに来てよかったと思うことの一つです。
またいつか機会があれば、聴いて下さいね!
by shuri (2006-06-03 18:25) 

shuri

■しづさん
書き込みどうもありがとう!!とっても嬉しい!!
うん。まだまだな2人だけれども、あの怪我がなかったらあの演奏はできなかったんじゃないかと私は分析しています。ジュノはあんな苦しい音楽できなかったもの。前は。段々と大人に向かう少年を傍で見てるおばちゃんの気分。ふふふ。

■reigaさん
うわーー!書き込み、ありがとうございます!!!山猿ママもきっと喜んでいるはず!
今回のことで、2人の間の雰囲気もずいぶんよくなりました。きっとこれからの演奏にも反映されてくるはず。今でもショスタコの3楽章を思い出すと、涙が止まらなくなるのですが、今回のことはきっとずっと心に残っていると思います。
by shuri (2006-06-03 18:34) 

shuri

■東京の師さん
せんせええーーーーーーー!!せんせーーー!!!!!
うわーーーん嬉しいーーー。ありがとうございます!!!とっても嬉しい!!
今は、前回の三月よりはまともになってるはずです。(hoffentlich)ただ腱鞘炎にずっと付きまとわれていて・・。今年はどうもそんな年のような気がしてきました。ジュノが腱鞘炎になったというのを聞いて、「あ、うつしちゃった」とか思ったんですもの。
御喜先生も仰ってくれていますが、本当に先生の力がとても大きいと痛感しています。
これからもがんばりますよ~!!!夏もどうぞよろしくお願いします!

■御喜美江様
本当に本当にありがとうございます!!!
東京の師さんもそうですが、御喜先生の影響力も私にとってとても大きなものです。Werden村の動物たちの”埃”にならないようにこれからも頑張ります!
次回は、水曜日の20時に「あの店」ですよね?
ただいま山猿ママは九州へ出張中ですので、きっと帰還したらまたメッセージを書くと思います・・。

■れれれれ
うんうん!!どうもありがとう!!!!
日本には無事到着しましたか????
久しぶりの日本はどう?
by shuri (2006-06-03 18:51) 

東京の師

御喜先生 さま

はじめまして。
御喜先生には、シュリが本当にお世話になり本当に有難うございます!!!心から感謝しております!!!
あんな○○なやつですが(○○はそれぞれの方の判断にゆだねたいと、ここでは、あえて申し上げます!爆)
実は繊細で、先生にはきっとたくさん!たくさん!助けて頂いていると察します。先生の存在あってのシュリとなっていると思います。
(実際に、本人も御喜先生には感謝しているとのこと、以前申しておりました。)
本当に有難うございます!私からも御礼申し上げます!
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
by 東京の師 (2006-06-03 21:15) 

shuri

■東京の師さん

あんな○○なやつですが、の○○に何が入るのか、微妙に気になります。
こっそり教えて。
いったい何の文字を入れようと思ったんですかい??

たくさんの方にお世話になっているんだと、私が今ここにいられるのは、そういった方々のお陰なのだというのを、とことん感じています。
まずは、ここのエッセンを薦めて下さった、東京の師さんに大感謝です!ありがとうございます!!
by shuri (2006-06-06 08:34) 

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