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危険な運転は危険運転ではないのか [飲酒運転撲滅]

「飲酒の危険運転、不適用か 福岡地裁が訴因変更を命令」(iza!)


あの福岡飲酒運転幼児3名虐殺事件で福岡地裁の裁判長が、福岡地検に「訴因変更」を命令した。
訴因変更というのは読んで字の如く「起訴状に書かれた犯罪の具体的事実が異なる」ため検察官の求めに応じて裁判所が認める訴因の変更のことだ。
要するに「危険運転致死傷罪」では厳しいから「業務上過失致死罪」などに変えなさいと裁判所が命令をしたと言う事になる。

この裁判、今月6日に検察が求刑を行ない「懲役25年」を求めている。
判決公判も1月8日と決まっている。
このような状況下で訴因自体を変更するというのは如何なものだろうか。
もちろん、法制度上では問題は無いのだろし、もしかしたら良く行なわれていることかも知れないが。

「なぜあれで危険運転にならないのか」というのは誰しもが思うことだろう。
どこが合致しなかったのだろう。
飲酒をし、その飲酒直後に運転をしたことは認めている。
車の速度はそれほど早くなかったと本人は言っているが、ぶつかってから停まるまでにずいぶんな距離がある。
そして、(被告は)軽い衝突だと思ったので橋の上に被害車両が無いことに気がつかなかったから当然に被害者一家が川で溺れていることも認識していなかったと言っている。
この二つだけでも衝突時に正常な意識で運転できていなかったことは十分にわかると思うのだが。

「危険運転致死傷罪」が出来てから、結局適用されるケースがあまりにも少ない。
そのために「自動車運転過失致死傷罪」が出来たのだが、どんどん法律が細かくなり日常生活に制限が加わる。
法律というのはどんなに細かく作っても逐一の事情には合致しない。
それをどの法律でどのようなレベルの罰を与えるべきかを判断するのが裁判なのだと思っていたのだが、そういうわけでもなさそうだ。

検察は思い切って「訴因変更」をせず、そのために裁判所は無罪判決を出してもらったらどうだろうか。
当然、控訴はしない。
すると被告は無罪放免になって社会に戻ってくる。
そこで社会による制裁を加えれば良い。
社会による制裁はいろいろな方法がある。
法的に反する事をする必要は全くない。
これだけのことをしでかしておいて無罪なのだから、社会は彼を許さない。
そして罪を償ってくれば忘却されるであろう年数になっても社会は忘れない。
それだけだ。
そして、いつまでも無限地獄を味わえば良い。

しかし結局、地検は命令をうけた以上、訴因を変更せざるを得ないのだろう。
大物弁護士がつくとこういうメリットがあるということがわかったような気がする。
誰が被告の弁護士費用を賄っているのだろうか。
いくら公務員とは言え、この年齢では給料はたかが知れている。
両親や親戚にも「金持ち」が居るわけでもなさそうだ。
まさか、この弁護士まで「手弁当」でついているわけでもなかろうに。

それとともに、裁判所も業務上過失致死傷罪に変更させるのであれば判決は当然最高の7年6月を出すのか。
まさか、またここから割引判決で5年とか言わないんだろうねぇ。

関連資料

「総務省法令データ提供システム」(刑事訴訟法)


第三百十二条
裁判所は、検察官の請求があるときは、公訴事実の同一性を害しない限度において、起訴状に記載された訴因又は罰条の追加、撤回又は変更を許さなければならない。
○2  裁判所は、審理の経過に鑑み適当と認めるときは、訴因又は罰条を追加又は変更すべきことを命ずることができる。
○3  裁判所は、訴因又は罰条の追加、撤回又は変更があつたときは、速やかに追加、撤回又は変更された部分を被告人に通知しなければならない。
○4  裁判所は、訴因又は罰条の追加又は変更により被告人の防禦に実質的な不利益を生ずる虞があると認めるときは、被告人又は弁護人の請求により、決定で、被告人に充分な防禦の準備をさせるため必要な期間公判手続を停止しなければならない。

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福岡飲酒運転幼児3名虐殺事件第6回公判

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コメント 20

 これ聞いたときに、愕然としました。「ズームイン」で辛坊さんが、「危険運転致死傷罪」に問うのは難しいと言ってはいましたが何もこの時期に・・・
 さらに、驚いたのが被告が友人に水を持ってこさせた行為が、逆に判断能力アリの裏づけになってしまったようです。

 こうなったら、記事にもあるとおり「無罪」の判決を出して、野に出して、この矛盾に満ちた法律を変えなければならないという世論を起こさなくてはいけないと思いました。
by (2007-12-19 18:49) 

南雲しのぶ

woody45さん、コメントありがとう。
偽装工作をした方が得をするというおかしなことが罷り通ろうとしていることに憤りを禁じ得ません。
何度も言うようですが、法律が日常感覚と乖離すると誰も法律を信じなくなりますよ。
そして、金やコネを使って有力弁護士を雇って減刑してもらえば良いんですから。
立法府も玉虫色で使えない法律を作るのではなく「法治国家」と言える国になるようなものを作ってもらいたいものです。
by 南雲しのぶ (2007-12-19 22:40) 

kenji47

飲酒をして「正常な運転が困難な状態」だったことが、危険運転致死傷罪の適用要件なのですから、そうした事実が認められなければ適用できないのは当然のことです。
いくら結果が重大だからといってもこの原則は動かせません。
刑法は結果責任を問うものではないからです。


>大物弁護士がつくとこういうメリットがあるということがわかったような気がする。
誰が被告の弁護士費用を賄っているのだろうか。
いくら公務員とは言え、この年齢では給料はたかが知れている。
両親や親戚にも「金持ち」が居るわけでもなさそうだ。
まさか、この弁護士まで「手弁当」でついているわけでもなかろうに。

この弁護人はこの第一審において見事な働きをしたと評価できるのではないでしょうか?
口から出まかせを言ったわけではありませんよ。
事実を一つずつ積み上げて言って検察の主張の矛盾点を明らかにしていったわけです。

私が疑問に思うのは、南雲さんが「三人死亡」という「事実」を指摘して被告人に厳罰を求めているにも関わらず、事件全体の「事実」には無関心で被告人側の主張立証は不要だと言わんばかりの態度を示すところです。
検察の主張立証と弁護人の主張立証が闘わされることで事実が明らかになっていくのだと思われますがいかがでしょう?
by kenji47 (2007-12-19 23:28) 

南雲しのぶ

kenji47さん、コメントありがとう。
kenji47さんの言われていることはちょっと難しくて良くわからないのですが、今回の事件ってもともと被告は酒を飲んでいることは認めているわけですよね。
酒を飲んで自動車を正常に運転できるのでしょうか?
たまたま正常に運転できてしまったということはあっても、それは例外なだけですよね。

私は「三人が死んだ」から厳罰を求めているのではなく、飲酒して運転して事故を起こしたのだから厳罰に処すべきだと言っています。
もちろん、「三人が死んだ」ことも含めないわけではありませんがそれが最優先ではありません。

それと事故後、水を1ℓも飲むという証拠隠滅をしておいて「検察主張の矛盾点を明らかに」と言うのは如何なもんなんでしょう。
もちろん、水を飲ませてしまったことは警察検察の落ち度かも知れませんが。
立証は検察側の責任とは言いますが、証拠隠滅した側も水を飲む前において酩酊状態でなかったと立証すべきだと思いますがね。

後日、改めて記事を書こうと思っているのですが、証拠隠滅した側が得をするというのでは正当な裁判にはならないと思いませんか。
と聞いても、「法的にはそんなことはありません」とお答えになられるでしょうが。
by 南雲しのぶ (2007-12-19 23:42) 

テレマーカー

出先からですが・・・。
「人を殺したかったら、酒をちょっと飲んで車で事故を起こせばいい。殺人罪には当たらず、危険運転ではないから危険運転致死で裁かれる事もない。業務上過失致死で、割引5年だ。」
さて、これを見て、こう思って起こした場合はどうなるんでしょうかね。
証言無しでは立証不可能。
戯言はともかく、飲酒運転のトラックが起こした死亡事故の教訓からこの法律って出来たんですよね。その成り立ちから言って酒飲んで運転する事は既に危険運転だと思っていましたが、そうではないようですね。
酒気帯びとか変な前段階を設けず、「非合法薬物、及び酒類などを服用して運転した場合、危険運転に当たる。」とすればいいのに・・・。
法があっても法治出来ない法律なんて、なんの役に立つのか。
(横レス無しなので、思い切ったコメントになっています・・・m(_ _)m)
by テレマーカー (2007-12-20 01:13) 

南雲しのぶ

テレマーカーさん、コメントありがとう。
私もそう思います。
法律というものは、法律弱者を助けるために「曖昧」な言葉を使うのでしょうが、実際には法律に詳しい人を助けるためだけになっているようにいるように思えてなりません。
「飲酒によって正常な運転が困難」って「飲酒」「正常」「困難」という3つも主観的な判断に重点が行なわれてしまい、結局、数字が一番ものを言うことになります。
「そこで何が起こったのか」をもっと追求すべきなのですが。


裁判(公判)の詳細ってなかなかわからないことが多いです。
メディアが詳報を伝えている裁判は一言一句伝わって来ますが、そうでないと調べようがないことがあります。
もっと詳しく伝えてくれるような方法がないものでしょうか。
by 南雲しのぶ (2007-12-20 06:31) 

kenji47

>証拠隠滅をしておいて「検察主張の矛盾点を明らかに」と言うのは如何なもんなんでしょう。

証拠隠滅を図ったから危険運転だ、とは言えませんよね?
危険運転の事実があったか否かはその行為を行った当時の運転者の状態から認定すべきものです。


>立証は検察側の責任とは言いますが、証拠隠滅した側も水を飲む前において酩酊状態でなかったと立証すべきだと思いますがね。

水を飲んだ量、経過時間から事故当時の酩酊度は医学的に推認可能だと思われます。
これは南雲さんも生活実感からおわかりでは?
実際、そういう証拠は提出されているて思われます。
by kenji47 (2007-12-20 06:39) 

南雲しのぶ

kenji47さん、コメントありがとう。
証拠隠滅するということは、自分の「真実の立証」も失われると思うのです。
しかし、結局検察側が事実の立証責任があるため被告にその責任は無いわけですよね。
だから「黙っていさえすれば良い」ということにつながっていませんか?

後段で言われている医学的推認ですが、結局統計でしかなく「そうであった可能性が高い」というレベルなのではないでしょうか。
彼の場合は飲水によって相当のアルコールが流出した可能性も無い訳ではない。
例えば、過去に「水を飲んだ量、経過時間」からアルコール量が酒酔い運転からの減少率に達する事例が一件でもあれば「酒酔い運転であった」と言えるのではないでしょうか。
結果として被告は自分自身で自分の飲酒量を「本当かよ」と疑わせることをしたのですよね。

本来は実際に当日同様にアルコールを摂取し同じ行動をとらせてから水を飲んで、というような実証実験を複数回行なうことで彼の減少率を判断することが必要なのではないでしょうか。

いずれにしても、証拠隠滅した側が隠滅した事実に対して立証する必要がないというのはおかしくないですかね。
「正常な運転ができるアルコール量だった」と証明すべきではないかと言うことです。

今回の事件から、法律を改正して「飲酒即危険運転」とする方が本来なんだと思います。
こうやってドンドン法律が市民生活を圧迫して行く事になるのですが。
by 南雲しのぶ (2007-12-20 07:06) 

kenji47

>だから「黙っていさえすれば良い」ということにつながっていませんか?

憲法には黙秘権が認められているのですから、そういうのなら憲法改正を主張されてはいかがでしょう?


>いずれにしても、証拠隠滅した側が隠滅した事実に対して立証する必要がないというのはおかしくないですかね。
「正常な運転ができるアルコール量だった」と証明すべきではないかと言うことです。

もちろんそういう主張立証を被告人側はやっていると思いますよ。
日本の刑事裁判では、被告人は証明責任はなくとも積極的な訴訟活動をしないことには有利な判決を得ることができませんからね。
今回は、その立証に成功したということだと思います。
by kenji47 (2007-12-20 09:06) 

南雲しのぶ

kenji47さん、コメントありがとう。
私は、憲法改正(見直し)するべきだと思ってこのブログで主張しています。
黙秘権のことでではありませんが。
今回のことで黙秘権も改正すべきかもしれないと考え始めました。

なぜ黙秘権が権利として認められるに至ったのか。
黙秘権の必要性はなんなのか。
もっと広くみることも大切だと思いますが。

被告側が主張立証をしたとのことですが、では日本人全員がアルコール量の減少率が検察が指摘するほと下がらなかったと言うことですね。
こういう場合、彼自身にも検察が指摘している飲酒状況を再現して水を飲ませて測定するということをしているのでしょうか。
証拠隠滅をしたのでなければ統計や学術上の理論を使って立証することも可能でしょうが、隠滅された事実を再現するためには実際にやってみないとわからないですよね。
by 南雲しのぶ (2007-12-21 06:22) 

kenji47

とりあえず黙秘権がなんのためにあるのか考えてみたらいかがでしょうか?


<黙秘権は何のために?>法学館憲法研究所

http://www.jicl.jp/chuukou/backnumber/25.html
by kenji47 (2007-12-21 22:48) 

南雲しのぶ

kenji47さん、コメントありがとう。
とても参考になりました。
ただ、黙っていて良いという理由としては薄いですね。
法律家の皆さんには十分な理由になりうるのでしょうが、市民からすれば「だからと言って黙っていて良いものではない」と思うだけです。
法律は文字だけ見ていれば良いわけでは無いと思うのですが。
by 南雲しのぶ (2007-12-21 23:09) 

こう

 車を運転していて、一番緊張するのが追い越しの瞬間です。理由はおわかりと思いますが、車間距離が極端に近くなるからです。狭い隙間をすり抜けるわけですよ。
 酔っていて、スピードを上げて行うのは、私からすれば無謀です。やはり、危険行為です。

 「危険運転致死傷罪」の摘要が難しいかも知れませんが、泥酔状態で追い抜いたことと、結果、重大事故になったことからすると、このままでは「悪いことは悪い」という示しがつきませんね。
by こう (2007-12-22 07:43) 

南雲しのぶ

こうちゃん、コメントありがとう。
無理な運転をするという事自体がすでに精神的に運転が困難になっているんだと思うんですよ。
若い頃ってどうしても変に自信を持ってしまってスピード出したり追い越したりしますが早く気づいてもらいたいものです。

危険運転致死傷罪も使い物にならないのなら意味ないんですよね。
だから自動車運転過失致死傷罪が出来ちゃったわけですが。
ドンドン厳しくなって行きます。
by 南雲しのぶ (2007-12-22 21:08) 

kenji47

もっと「事実」というものを重視したほうがいいと思いますよ。

実際どれくらいの酩酊度合だったのか、とか、
衝突時の速度とか、
被害者の不適切な行動はなかったかとかです。

なんだかあまりにも漠然と、

飲酒 → 事故 → 危険運転

みたいに決め付けていると思います。
もっと「事実」に目を向けるべきではないでしょうか。
by kenji47 (2007-12-22 22:25) 

南雲しのぶ

kenji47さん、コメントありがとう。
レスが少し長くなりそうなので後日別記事立てさせていただきます。
というか、別記事にしようとおもっていた内容をコメントしていただきました。
そこなんですよそこ。
by 南雲しのぶ (2007-12-23 06:18) 

kenji47

昨日、TBSの「ブロードキャスター」で、被告人と同量のアルコールを飲んで酩酊度合いを検証する、なんてことをやってました。

これなんていかにも浅い事実の捉え方であって、被告人がどれくらい時間をかけてアルコールを摂取したかとか、摂取後事故時までの経過時間とかをまったく無視してしまっています。

マスゴミがああいう浅薄な事実の扱い方をしているから、視聴者も短絡的な思考に陥るのではないかと思わされました。
by kenji47 (2007-12-23 07:20) 

南雲しのぶ

kenji47さん、コメントありがとう。
確かにキチンとした前提条件をクリアしたものでなければ信憑性は低くなりますよね。
当該番組は見ていませんが、他の番組でも同様のことをしていたのを見た時にそう思いました。
しかし、同量のアルコールを摂取すれば「酔っぱらう」ということは理解できます。
一度酔っぱらった状況であることを自覚していながら飲酒後1時間程度で車を運転するということの異常さは伝わったのではないでしょうか。

2007-12-21 06:22のコメントレスで述べさせていただいたように、弁護側は本人に実証実験を行なった上で否定しているのかどうかが伝わって来ません。
本人に飲ませた上で「酔っぱらっていなかった」と証明したのでしょうか?
by 南雲しのぶ (2007-12-24 07:06) 

kenji47

>同量のアルコールを摂取すれば「酔っぱらう」ということは理解できます。

こういう大雑把な事実のとらえ方につながっているのが問題だと思うのです。
by kenji47 (2007-12-24 22:12) 

南雲しのぶ

kenji47さん、コメントありがとう。
大雑把ですかね?
甘いとは思いますが、「飲酒の怖さ」を伝えるものと考えればそんなもんでしょう。

弁護側は被告本人を使って実証実験をしたのですか?
していないで「被告には影響なかった」ってどう証明するのでしょう。
机上の空論で人が3人も死んだ事件を裁かれては困りますよ。
by 南雲しのぶ (2007-12-25 07:24) 

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