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純化 [ガムラン]

ここではずっと、けっこう大編成のガムランについてばかり書いて来たけれど、今回はグンデル・ワヤンを取り上げてみる。

《バリ》幻影~バリ影絵芝居

《バリ》幻影~バリ影絵芝居

  • アーティスト: 民族音楽
  • 出版社/メーカー: Warner Music Japan =music=
  • 発売日: 2008/08/06
  • メディア: CD

グンデル・ワヤンってのは「ワヤン用のグンデル」。って云ってもなんだか分からないのでちょっと説明すると、ワヤンはジャワやバリなんかで行われる影絵芝居のこと(ぼくも上演されているのを見たことはない。Wikipediaの該当項目はこちら)。で、その伴奏を行う楽器がグンデル。

グンデルってのは要するにガムランでよくある青銅製の鉄琴(ってなんか変だが察して下さい)。ガンサなんかと見た目的にはよく似ている。でも片手にハンマー状のばちを持って演奏する(もう片方の手はミュート用に使う)ガンサなんかと違って、両手に先の丸いばちを持って演奏し、ミュートはばちを持った手のひらの付け根の方で行う。簡単に書いてるけど、技巧としてはとても複雑なものになるはず(ちょっと実際の演奏の感覚をイメージできない。演奏している姿をYouTubeとかで見たことはあるけどやっぱりよく分からない)。

グンデルそのものはスマル・プグリンガンなんかの編成にも入っている(ゴン・クビャールでもヤマサリには入っているはず)のだけれど、こちらはグンデル・ランバットと云う。グンデル・ワヤンとはチューニングが違うらしい。

で、グンデル・ワヤンは基本が4人編成。楽器は大きめのグンデルがふたつ、小さめのがふたつ。大編成ガムランみたいにリズム担当楽器とかがあるわけじゃなくて、同じ楽器が大小合わせて4台で全編成。理屈から云うとこれで最大8声の和音が出せることになる。まぁ実際は和声を中心に曲が展開することなんかはなくて、メロディを重ねて曲が進んでいくんだけど、ここにガムラン特有のコテカン技法(ひとつのメロディを同じ楽器ふたつが分担して担当する)が絡んでくるから、たかが4台の楽器とはいえ生み出される音楽はとても複雑なものになる。コテカンの相方が違うメロディを叩けば、息があったまま全体として違うメロディになるわけで、おそらくその辺りを超高速で互いに呼吸で見切りながら演奏を展開していくことになるんだろうから、出来上がるのはふわふわとしながらも凄まじいドライブのかかったものになる(この辺り、皆川厚一さんのガムラン武者修行に、スカワティのグンデル・ワヤンの親玉である故イ・ワヤン・ロチェン氏にしごかれる壮絶かつ爆笑ものの描写がある)。

ここで挙げたCDはタガスのグンデル・ワヤンの録音。編成の大きなゴン・クビャールなんかと違ってグンデル・ワヤンの場合演奏者が4人なのでパーソネルが記載されていることが多いんだけれど、この録音についても同様4人の名前が書いてある。見た名前があるなぁ、と思ったら、演奏者のひとりは同じタガスのグヌン・ジャティのファウンダーのひとり、イ・マデ・グリンダム氏だ。

1969年とけっこう昔の録音なので、皆川さんが関わっている80年代辺りの録音に比べると音がなんと云うかちょっとほわっとしていて丸い。と云うか、これは楽器そのものがそう云う音質なのかもしれない。なにしろグヌン・ジャティを擁するタガスのグンデル・ワヤンなのだし。そう云うわけで癒しになるのかどうかは分からないけれど、この浮遊感はぼけらっと聞くのにはけっこういいかも、とか思ったりするのであった。


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