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ひかりごけ [映画関連]

1992年 熊井啓監督

戦時中、実際に起こった人肉食い事件を基に描かれた武田泰淳の同名小説の映画化。
難破して洞窟にたどり着いたが、雪と氷河に阻まれ脱出不可能、救助も望めない、食料はない、という状況で、1人1人死んでいく仲間の肉を食らって生き延びた船長の話。実際の事件ではこの船長は死体損壊の罪に問われており日本史上初の罪に問われた食人事件といわれている。(しかし食人の罪名は存在しないため死体損壊罪)。映画の前半は洞窟での様子、後半は1人生き残り裁かれる船長の法廷の様子が描かれる。

こんな陰惨な事件を題材にして小説、舞台、映画、歌劇まで作られているのはなぜか。それは仲間の肉を食らわねばならないほどの極限状態の心理にドラマがあるからである。そういった閉ざされた環境での心理ドラマといったら、やはり熟練した俳優によるアンサンブル、そして舞台劇が似つかわしく感じてしまう。実際、原作小説は戯曲形式をとっている。

さてそれを映画にした本作、三國連太郎 、奥田瑛二 、田中邦衛 、杉本哲太 、笠智衆 、井川比佐志 と、俳優陣は文句なしに豪華。問題の洞窟のセットは舞台装置のような質感と奥行きだし、法廷は裁判官や検事たちの衣装から、群集の表現までまるきり舞台風。それを映画冒頭とエンディングに普通のロケを使った現代の映像でサンドイッチしている形。なかなか工夫がある。

それでもやっぱり、「うーんこれは舞台劇だなぁ」とばかり思って観ており、あまり内容に集中できなかったような気がする。
裁判以降の船長の心理には興味深いところがあり、原作を読んでみたくなった。


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コメント 2

Sho

観たい、読みたい、と思いながら、映画も本も手をつけていません。
satocoさんの記事を読みながら、「ああ確かに舞台の話だなあ・・」と思いました。
>裁判以降の船長の心理
時間的にはそのあたりまで描かれているのですね。ますます興味がわいてきました。
by Sho (2007-07-14 00:30) 

satoco

描かれているのは裁判のシーンまで、です。その後のことについては、netでちょっと調べたりしてしまいました...。

Shoさんとは、こういう文学作品などの興味の方向が似ている気がして嬉しいです。
by satoco (2007-07-16 00:29) 

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