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マグダレンの祈り [映画関連]

2003年 ピーター・ミュラン監督

1964年のアイルランド、ダブリンにあるマグダレン修道院を描いた作品。この修道院はマグダラのマリア(娼婦だったが祈りと労働により最後は聖女として天国で永遠の命を与えられた女性)の名を冠していることからもわかるとおり、性的に"堕落した"女性達を矯正させるのが目的の場所。閉鎖される1996年までに述べ3万人の女性が収容されていたという、実在の場所である。本作は実際にそこで起こった実話を元に作られている。

修道院の話なのだが、監獄かせいぜい何かの収容所と言った方が実態に合っている。管理、労働は厳しくシスターによるイジメすら起こる。
入所時に所長であるシスターが女性の一人に勝手に名付けをしてお礼を強要する。入所者が人格を取り上げられ、服従を強いられることを端的に示すとても上手いエピソードだと思った。

収容されている女性達の中には本当に堕落した例もあったのかもしれないが、本人は何も悪くないのに従兄弟にレイプされたため身内の恥扱いされたり、ただ単にキレイで男の目を引いたから、という些細なきっかけで修道院送りにされている女性もいる。

そんな女性達が異常な環境の中で、どう暮らしていくか、どう変化していくかが見所。脱走を狙うもの、心が壊れていくもの、服従を強いられることに逆に喜んで従っていくもの、ただ静かに状況を見つめているもの、自分なりに教義や倫理への考察を深めるもの。

当時のダブリンは敬虔なカトリック社会であり、その中で描かれる"性的に堕落"の内容が現代日本から見て行きすぎだと感じるのは当然であるが、当時の女性達がそのあたりをどう受け止めていたのかも興味深いところだった。自分も敬虔なカトリックでありつつ、自分は罪は犯していないと主張したり、悪いことをしたわけではないが教義で言えば罪であろうと納得したり、または最初からクリスチャンではあっても自分の信念を強く持っていて、こんなの間違ってると自分の感覚で判断していたり。そして敬虔なクリスチャンであるものの方が、修道院や神父の実態の受け止め方が難しい。

それにしてもこういう社会って恐ろしい。たとえば前述のレイプ事件。レイプした従兄弟の方はどうやらお咎めなしのようなのである。男性と女性でこの処遇の違い。シングルマザーなどという選択肢は端からなく、問答無用で子供は養子に出されてしまうし。
100年も昔の話ではない。たかだか40年前のことである。

比較的キャリアの浅い女優が主要な登場人物を演じているが、主要キャストはどの女性もとても生き生きとして魅力的に描かれている。重いテーマだが、次にどんな事件が起こるのかとハラハラする展開で、飽きずに見ていられた。
雰囲気は少し「カッコーの巣の上で」を思い出させる。
なかなかに見ごたえのある作品だと思う。


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