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阿修羅のごとく [映画関連]

2003年 森田芳光監督

向田邦子の作品はいつもいい。時代の差か、そこで語られる考え方には受け入れ難いものも多々あるのだが、それでも引き込まれ、胸に染みるものがある。
森田芳光はもともと好きな監督。「ハル」が一番のお気に入りだ。一見何の変哲もない日常の描写から人の心がぐっと浮き上がってくる。
この二人のタッグ、すごくはまっている。
全編静かでしっとりした風情なのに、秘められた激情もちらりと顔を覗かせる。まさに阿修羅のごとく、だ。

主演の四姉妹は大竹しのぶ、黒木瞳、深津絵里、深田恭子。大竹しのぶはさすがの貫禄。不倫相手とのドタバタのシーンが毎度おもしろく、色っぽい。黒木瞳はあまりにはまり役。私はこの次女が一番キライだ。一人だけおとなしく結婚して二児を儲け専業主婦をしている。安定した毎日だが夫の浮気にひそかに嫉妬心を募らせる。私は黒木瞳は世間で言われているような華やかでかわいらしいイメージの裏にすごく女のドロドロしたものを感じさせる人だと思っている。そこがぴったり。三女は真面目で不器用、深津絵里らしい役と言える。深田恭子の四女もいい。同棲相手のダメ男に尽くすたくましくてちょっと崩れた感じがうまい。

脇も実に豪華。桃井かおりと大竹しのぶの掛け合いなんてすごいエネルギーを感じるし、四姉妹の両親、仲代達也と八千草薫もすばらしい。三女の夫役、中村獅童は「いま、会いにゆきます」と同じような役。やはりこういう役の方が似合う。

みんなそれぞれ事情があるけど、女は実はたくましく、しなやかに乗り越えていくのだと言うテーマには共感できるが、男にやや甘すぎるような気がしないでもない。時代なのか、向田邦子と私の性格の違いか。

映像が美しく、昭和の風俗描写もステキ。特に女優陣の着物姿がとてもしっとりとキレイだ。

見ごたえのある作品だった。


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コメント 2

Sho

これは未見なのですが・・ 数年前に再放送されたドラマを見ました。それがあまりにも完成度が高かったので、映画はどうなのだろう?と思っていました。
>全編静かでしっとりした風情なのに、秘められた激情もちらりと顔を覗かせる
これは向田作品の特徴と思います。この作品は見ていないのですが、今まで見た向田作品はそうだったなと思いました。
黒木瞳に対する感じ方、同感です。
>男にやや甘すぎるような気がしないでもない
女に辛く男に甘いのも、向田さんの特徴のように思います。私は
satocoさんと違って(笑)全くもってこのタイプなので、ついつい感情移入してしまいます。近々観たいと思いました。
by Sho (2006-06-28 11:35) 

satoco

shoさん、(ハル)もお好きでしたよね。きっとお気に召すのではないかと思います。 ただ私はドラマの方は見ていないので、ドラマの完成度には匹敵しているかどうか、は残念ながら不明ではありますが...。
by satoco (2006-07-05 19:29) 

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