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オペラ「ビリー・バッド」(3) [オペラ(実演)]

さて、今日も(笑)行ってきました、ENOの「ビリー・バッド」。今日はわざわざパリとブリュッセルからやってきたオペラファンのおじさんたち2人と、イギリス人の劇場ファンの4人で開演前からワイン片手にオペラ話で大盛り上がり!外から見たら変な団体だっただろうな(笑)

今回は短い期間で3度目ということでいい加減話の展開も頭に入ってきたし、聞き取りにくい!と文句を言っている歌詞もほぼ聞き取れるようになりました。更に、今回の座席は最前列ということで、歌手の表情もはっきり見えてかなり理解度が深まった気がします。3度目にして、ようやくオペラ自体に感動しました。このオペラ、歌詞が聞き取れないと感動半減ですね。ってことは、音楽自体に力が無いってこと?(^_^;)

前回はクラッガートの視点で見たので、今回はビリーの視点で見てみたのですが、改めてビリーって精神的にガキだな~と思いました。だからキーンリーサイドは17歳の年齢設定にしているんでしょうけど、それにしても世間をしらなすぎる。最初に連れてこられて名前や素性を聞かれている間も、最初はそわそわしているのに脇に控えている仕官の気をつけの姿勢を真似して既に乗組員を気取ってみたり、役職が決まったとたんに待ちきれないように梯子を駆け上ったりするところも興奮しているガキそのもの(笑)

とにかく、退屈だった以前の生活に比べて、下っ端とはいえ軍艦での緊張感とやりがいのある仕事をもらえて前途洋洋、いっぱい友達も出来たし、「きらめく星のヴィア」艦長に気に入ってもらえるように頑張るぞ!何だか唯一年下のノヴィスって奴が反乱のリーダーになってほしいとかなんとかいってきたけどちゃんと断ったし、一生懸命働いてるからもうすぐに昇進できるはず!どうせなら艦長の近くにいる役職が良いなぁ~楽しみだな~というプラスの方向にしか意識が行かないんですよね。だから艦長に呼ばれた時もすっ飛んできて(ここは本当に階段を3段抜かしくらいで駆け上がってました)「分かってます!昇進の話ですよね!」と大喜びな訳です。「違う話」と言われても、クラッガートが実際にビリーの反逆罪に言及するまで、自分が危険な状況に置かれているなんて全く気づいていないんですから、はっきり言って鈍感すぎそして、気に入ってくれていると思っていたクラッガートからの意外な罪状追求に、頭はパニック、艦長に「答弁しなさい」と言われても、この舌が絡まって…焦れば焦るほど言葉が出てこない!どうしよーどうしよーどうしよーオレ、反逆なんて考えたことも無いのに!酷いよ!と、かっとなってクラッガートに致命的な一撃!クラッガートは死亡、艦長は大慌て、ビリーは呆然。

結局裁判が開かれて、ヴィアの証言でビリーは上官に手を上げたことと、殺人の2重の罪で死刑になるのですが、夜の間、鎖につながれて翌朝の処刑を待ちながら、ようやくビリーは周りの状況を冷静に考えるようになります。裁判の場ではつい「艦長、助けてください」なんて言っちゃったけど、自分はただの一船員だし、特例を認めるわけにはいかないよね、こうなったのは自業自得だ、と納得してからのビリーの独白は、かなりぐっときます。わざわざ差し入れを持ってきてくれたダンスカーに「それにしても、あのフランス船を霧で逃したのは悔しかったなぁ~。でも大丈夫、きっとすぐに追いつけるよ!」というビリーには思わず泣きそうになっちゃいました。その時お前はもういないじゃないか、というダンスカーの表情と合わさって、一番感動的なシーンですが、私の中では3度目でようやく話が繋がりました(笑)これはやっぱり字幕いるでしょう、英語のオペラ!

ビリーって、孤児なのにこんなに楽天的で素直で人を疑わない性格になるもんでしょうか。ま、そんな設定についてあれこれ言っても仕方ないですが、ダンスカーに「クラッガートに気をつけろ」と言われても「彼もオレを気に入ってくれてるよ!」と屈託なく言い切るその変な自信たっぷりの態度に「いくらなんでもここらで気づいとけ!」とツッコミ入れたくなります。やっぱり前で見ると顔がよく見えてこういった感情の変化が分かるのが良いですね。特に「ビリー・バッド」は演劇的な要素の強いオペラだと思うので(キーンリーサイドも「音楽のついた劇」と言っていたし)、今回は奮発して高い席を買って正解でした!これだけの期間に素晴らしいキャストで3度も見れば、苦手なオペラでも良い部分が見つかってくるものです(笑)

相変わらず退屈なシーンもいっぱいあったのですが、今回は聴覚障害者のための手話付き公演だったので、その間は手話通訳者のお姉さん(写真前列左から2人目)の表現力豊かな手話を楽しみました(笑)これで最後だと思っていたけど、土曜日の最終公演も行きたいなぁ~。行っちゃおうかなぁ~。おそらく90パーセントくらいの確率で行くことでしょう(笑)自分で自分が信じられませんが、演劇として楽しめるポイントをつかんだのでもう怖いものなしです…多分。



終演後わざわざユーロスターでやってきたおじさんたちとステージドアに行ってキャストからサインをもらったのですが、クラッガート役のために綺麗に剃ったトムリンソンの髭は、既に生えかかってました。「(トレードマークの)髭がなくてびっくりしました」って言ったら「でしょ?皆誰か分からないって言うんだよね。でもこうしてまた生えてきてちょっと落ち着いたよ、わっはっは」と素敵な声で朗らかに答えてくれました。クラッガートと印象が違いすぎ(笑)一緒に出てきたキーンリーサイド日本はどうだったかと聞いたら、「楽しかったよ。ジョヴァンニの公演の間隔が短くてちょっときつかったけどね!」と言ってくれました。この日はキーンリーサイドの兄?弟?が来ていたのですが、髪も顔も背格好もそっくり(笑)この後、クラッガートとビリーとその兄(弟)は仲良く揃って飲みに行ったようです。


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dognorah

予想通りこのオペラを極めてしまいましたね!英語の字幕があったらもっと速く理解が進んでいたでしょうし、私もあれほど退屈しなかったかもしれませんね。
by dognorah (2005-12-16 01:19) 

ロンドンの椿姫

>演劇的な要素の強いオペラだと思うので、今回は奮発して高い席を買って正解でした

そう、まさにそう思ったので(というか前に観たっことあるので知ってたので)、私も大奮発して高い最前列の席にしたのでした。おまけに双眼鏡で更に顔のアップまでたっぷり見ました。
ロンドンでも滅多にない高いレベルのパフォーマンスで、お金は無駄ではなかったです。
http://peraperaopera.ameblo.jp/
by ロンドンの椿姫 (2005-12-16 05:46) 

Sardanapalus

dognorahさん>
>このオペラを極めてしまいましたね
極めたかどうかは疑問(笑)ですが、少しでも楽しめるようになったのは確かですね。これも豪華キャストの賜物でしょう。ENOは3月から字幕導入するらしいですよ。それを決めた芸術監督はいきなり辞任しちゃいましたけど(^_^;)

ロンドンの椿姫さん>
>双眼鏡で更に顔のアップまでたっぷり
そうしたくなるキャストでしたね。脇に至るまで皆芝居もしっかりしていて、違和感が無いというか。高い(と言っても日本のオペラファンには「この程度で!」と怒られそうな値段ですが)チケット代の元はしっかり取りました。何とか映像にして欲しいなぁ~ENOの予算では無理でしょうけどね。
by Sardanapalus (2005-12-16 08:58) 

keyaki

オペラ「ビリー・バッド」(4)もありそうないきおいですね。
ずーっと楽しく拝見してます。
オペラ「ビリー・バッド」のオーソリティーになっちゃいましたね。
好きな演目は全公演行くという知り合いがいます、しかも前の方の席で。その都度違う発見があったり、演技が変わっていたりもあるそうです。うらやましい話ですね。
レポート(4)期待してます!
by keyaki (2005-12-16 09:40) 

助六

行くところまで行きましたね~。何をやるにしても重要なことだし、また誰にでも出来ることではないですね!
小生はオペラにはやはり何よりも音楽を求める方なので(音楽と台本に集中できる演奏会形式も大好きです)、クラッガートやビリーの視点から見るという発想には眼を啓かれ、勉強になりました。逆に言うとそれだけこのオペラは「演劇的」ということでしょうね。

>このオペラ、歌詞が聞き取れないと感動半減ですね。ってことは、音楽自体に力が無いってこと?
やっぱりそうすか、そうでしょうねー。Sardanapalusさんのレポートに感服している私がこのオペラを再聴することは、もうないかもね。
by 助六 (2005-12-16 10:53) 

Sardanapalus

keyakiさん>
>オペラ「ビリー・バッド」(4)もありそうないきおい
あると思います(笑)次はヴィアの視点から書いてみますね。

>好きな演目は全公演行く
「好きな」演目なら分かりますよ(笑)
>違う発見があったり、演技が変わっていたり
コレは本当ですよね。今回の「ビリー・バッド」の記事を自分で読み返しても、回数を重ねるごとに新たな発見があったな~って思いますから。勿論、毎回微妙に演技も違います。特にキーンリーサイド(笑)この人はまあ、そういう人なんですけど。
by Sardanapalus (2005-12-16 18:33) 

Sardanapalus

助六さん>
>行くところまで行きましたね
本当に、何だかんだ言いながらもこれだけ通える環境に感謝!です。

>オペラにはやはり何よりも音楽を求める
となると、「ビリー・バッド」はちょっと退屈ですよね。ビリーはまだしも、クラッガートのパートは暗いし、ヴィアのパートは変なメロディだし(笑)私もこの公演で充分、もう一生見なくても平気だし、全曲を通して聴くことも無いでしょうね~。
by Sardanapalus (2005-12-16 18:41) 

さよならBilly mou

Billy、終わりましたね。また行っちゃったのかな~Sardanaさまは。
Simonは16日のTuckett のPinocchio初日にZenaidaと現れたそうです。余裕ですね~ 唖然茫然口あんぐりです。心配して損しちゃった。これは日本の有名なバレエ掲示板の情報です(Rieさま、Moriyaさまいつもありがとうございます)。こないだもTuckettとZenaidaが共演しているManonを見てたというし、(これはSaradanaさん情報)いい関係っていいわね(意味不明)。
by さよならBilly mou (2005-12-18 11:51) 

Sheva

ごめん、また間違えちゃった。上記はShevaです。
by Sheva (2005-12-18 11:52) 

Sardanapalus

Shevaさん>
>また行っちゃったのかな~
行っちゃいました(^_^;)久しぶりに極寒の気候の中並んで、当日券を買いました。寒かったけど、本人が「これでビリーは終わり(断言)」と言っているので、見ておかない手は無いですよね。記事自体はちょっと時間がかかるのでもう少しお待ちください。

>16日のTuckett のPinocchio初日にZenaidaと現れた
>心配して損しちゃった
よ、余裕すぎる…(@_@)この2人、お互いの演目は勿論、よく一緒に劇場に現れるんですよね。キーンリーサイドは14日の公演で足にサポーター巻いてたから後1公演大丈夫かなぁ、なんて正に心配して損しちゃった、です。昨日もヤノフスキーちゃんと見に来てましたよ♪本当にすらっとしていて美しいですね~。私もあんな彼女欲しい!(笑)
by Sardanapalus (2005-12-18 18:30) 

agojun55

昨日のロンドンは寒かったですね。その寒いなか行ってきました。券がなく立ち見しか選択の余地なし、つらかった。その前の晩ROHで甘い汁吸ったおかげで余計身にしみました。同性カップル結婚法の実施のタイミングのよい記念オペラ公演でした。
by agojun55 (2005-12-18 23:48) 

ロンドンの椿姫

Sardanapalusさんの2回目と同じ日に行ったのに、やっと記事が書けましたのでTBさせて頂きました。このENOのは一回しか観てないので、Saldanapalusさんの理解度にははるかに及びませんが。

4回目きっといらっしゃるとは思ってましたが、すごいです。
http://ameblo.jp/peraperaopera/
by ロンドンの椿姫 (2005-12-19 05:00) 

Sardanapalus

agojun55さん>
>券がなく立ち見
わ、じゃあ私が「今日は立見が出てる~」と見回していた中にいらっしゃったのですね。お疲れ様です。

>同性カップル結婚法の実施のタイミングのよい記念オペラ公演
話の結末はあんまり目出度くないですけどね(^_^;)
by Sardanapalus (2005-12-19 08:13) 

Sardanapalus

ロンドンの椿姫さん>
いつものようにTBありがとうございます~。いつもどおり丁寧な記事を読ませていただいて、あーそういえば私まだあらすじアップしてないや(笑)ということを思い出しました。

>理解度
勝手な感想ですよ~。しかも、ヴィアに対してふざけた見方してるし(笑)ロンドンの椿姫さんのように、ちゃんとヴィアの親身になって聞くのがこのオペラの王道だと思います。
by Sardanapalus (2005-12-19 08:19) 

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