「魔笛」の台詞 [音楽鑑賞]
前の前の記事で「魔笛」の台詞のことに触れました。
大筋では違いはないものの、観るたびに台詞の若干の違いがあったため、今までも気になっていました。
今回、ちょっとだけチェックしてみてあることに気がつきました。
私はずっとこのオペラのヒロインとヒーローであるパミーナとタミーノの美しいデュエットがないのが不思議でなりませんでした。
いや、最後の方にあるにはあるのですが、第3者が入っていたりで純粋にデュエットとは言えないし、純粋なデュエットの部分は非常に短く、コンサートなどで単独に演奏できるような曲ではありません。
パミーナとパパゲーノのデュエット"Bei mannern welche Liebe fuhlen"、とても美しいですよね。
これに匹敵するデュエットがなぜパミーナ&タミーノにないのかが不思議なのです。
考えてみればタミーノよりパパゲーノのほうがアリアにしても重唱にしても数が多く、魅力的です。
私にとってはパパゲーノのほうが重要な存在です。
しかも"Bei Mannern"のデュエット、内容から言ってまるで恋人同士のような感じがするのです。
日本語訳で書き出してみます。(パミーナ・パパゲーノ・2人)
愛を感ずる男たちには
優しい心も具わっているもの。
甘い愛の情けに、
共に感ずるのは女のつとめ。
愛のよろこびを味わおう、
愛にのみ生命(いのち)がある。
愛は苦しみをも甘くする、
すべての生物は愛のためには何もいとわない。
我々の生活(くらし)に味をあたえ、
自然の中に働くのも愛。
愛の目標(めじるし)は高く、はっきり示される。
女と男より気高いものはない。
男と女、女と男、
二人は神にとどくのだ。
このような美しい愛の讃歌をこの2人のこの関係でどうして歌えるのでしょうか?
その鍵といえるような台詞を発見しました。
前の前の記事でご紹介した音友版のスコアには台詞が”全て”入っているそうです。
後書きで伊藤武雄さんが書いていらっしゃいますが、「公演に当たっては、セリフの部分を全部使うということは殆どなく、演出者が適当にカットするのが普通です。」ということです。
・・・でその台詞を見ているところですが、上記の二重唱の前の2人のやり取り、この台本とカラヤン指揮のCDのブックレットを比べていたら発見がありました。
台本はブックレットに比べてかなりそのやり取りの部分が長いのです。
しかも気になる台詞があり、それは今まで観た舞台では聞いたことがないものでした。
「お前も恋がしたいのね。」
「まったく、その通りでさあ!じゃ、愛してもいいんだね。ありがたい。つまり、あんたを好きになりゃ、逃げ延びることに、大いに入れこんで、鞭が入るというもんだ。ところで話さなきゃならねえ、いいことが、一杯あるんだが、とに角何はともあれ、一刻も早くあんたのお袋さんの宮殿に逃げてゆかなきゃね。」
「本当に嬉しいわ。でも、その王子が本当に私を愛してくださるのなら、なぜご自分で来てくださらないの?私を助けになぜ、早く来てくださらないの?」
青で書いたパパゲーノの台詞の「・・・じゃあ、愛してもいいんだね。・・・」これは今まで聞いたことがありません!
このスコア・・・重唱に使うことはあっても今まで真剣に台詞を見たことはないのですが、この台詞、ドキッとしますよね!
やはりパパゲーノは淡い(?)恋心をパミーナに持っていたのではないでしょうか?
でないとこんなデュエットは歌えないと思うのです。
大体この時点でパミーナとタミーノは会っていないわけですし。
この二重唱、先日NHK-BShiで放送されたメトの子ども向けではカットされています。
私はこの二重唱はそれほど好きではないですし、愛の二重唱と感じたことはありません。恋人や配偶者がいないことを嘆くパパゲーノを慰めるためにパミーナが歌い始めるので、なんというか一般論、だれにでもそういう相手が存在するのだという教訓の歌のようにきこえます。二重唱になっていくのは、パパゲーノが希望を持つようになったということだと思います。
タミーノとパミーナに愛の二重唱がないのは、排他的男女愛というものを描くというか、賛美するつもりがないからだと思います。主張したいのは、違う次元の「愛」のように思います。もっと広い意味というか、普遍的な愛というか・・人類愛みたいな・・うまく言えませんが・・・
by euridice (2007-07-27 09:06)
euridiceさん、コメントありがとうございます!
この二重唱にはフリーメーソン臭さもありますよね。
何となくパミーナとタミーノによって歌われるべきなんじゃないか・・・という気もするのですが、この内容をパパゲーノが・・・というところに何かあるように思えてなりません。
又この曲の中のモティーフが第二幕第一場のザラストロのアリア(合唱つき)の前奏と後奏に使われていることも重要なことのように思えます。
「我々は愛を楽しもう。」
「男と女、女と男、それは神にとどくもの。」
・・・これがこのオペラの本来の鍵・・・と手持ちのブックレットにはあります。(ハインツ・ベッカーという人が言っています。)
このデュエットには2人の心の共鳴が感じられ、それは普遍的な人類愛なのかもしれませんが、私はメロディーが素敵・・・というよりもこの共鳴が魅力的に思えます。
私も最初はそれほど好きだったわけではないのですが、歌いこんでいくうちに好きになりました。(リコーダーアンサンブルでもやりました。)
by Cecilia (2007-07-27 10:13)
このデュエット、モーツァルトはシカネーダーの要求で5回も書き直させられたのですね~!
by Cecilia (2007-07-27 10:24)
本当は、タミーノのアリアが歌いたかったのですが・・・。(^_^;)
トラアクバック、どうしてもうまくいきません。
なのでこちらに。毎度、スミマセンです。
http://grappa60.at.webry.info/200706/article_20.html
by Papalin (2007-07-28 08:26)
Krauseさん、niceありがとうございます!
by Cecilia (2007-07-28 09:22)
xml_xslさん、niceありがとうございます!
by Cecilia (2007-07-28 09:23)
Papalinさん、nice&コメントありがとうございます!
タミーノも是非お願いします。
私もリコーダーアンサンブルでやってみたかったです。
でもパパゲーノのほうがキャラクターとしては好きですね。
他のパパゲーノの曲もお願いします。
トラックバックどうしてうまくいかないのでしょうね?
私も記事の中に貼りつけさせていただこうかと思っていたところでした。
by Cecilia (2007-07-28 09:26)
このオペラはパパゲーノ(シカネーダー)が本当の主役ですから。
映画「モーツアルト」の主役がサリエリだったように。
それから、このオペラは貴族様のオペラではなくエンターテイメントですので。
by トスカ (2007-07-28 09:34)
トスカさん、nice&コメントありがとうございます!
私もそう思います。
タミーノ中心に考えると納得できないことがパパゲーノ中心に考えると納得できるような気がするのです。
いろいろな解釈はあるのでしょうけれど、最高のエンターテイメントですよね。
今日、早速映画を観てきました。
by Cecilia (2007-07-29 00:53)
アートフル ドジャーさん、niceありがとうございます!
by Cecilia (2007-07-29 01:20)
このデュエット、亡くなった師匠と歌った思い出の曲なので好きです。歌詞の深い意味も重要だけど、モーツァルトの音楽を自然に楽しめばいいと思うんです。だって美しいですもの^^
それにコレ、結婚式でも歌いましたよ!
by かあか (2007-07-29 13:52)
かあかさん、nice&コメントありがとうございます!
お師匠様との思い出の曲でしたか!
私にとってはあのF村さんと関わりのある知人との思い出がありますね。
いろいろ調べてみましたが、教訓的な歌を演奏する習慣があったという説もあり、euridiceさんのコメントももっともだなあ・・・と思っているところですが、私も美しい曲だと思っていますので、万が一誰かと一緒に歌えるのなら、心の共鳴みたいなものを大切にして歌いたいです。
夫も歌おうとしていましたが挫折したようです。
by Cecilia (2007-07-31 00:01)
koi3さん、はじめまして。
niceありがとうございます!
by Cecilia (2009-02-26 07:03)