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フランスのロココ芸術とフランス近代音楽 [声楽]

フォーレの「マンドリン」という歌曲を練習しているのですが・・・この曲はただ楽しいだけの歌でないとは思うのですが、訳詩を見てもわかりにくく、困っています。

そもそもヴェルレーヌはヴァトーの絵画の情景をそのまま詩にしているのか?
それとも、男女の愛のかけひきを普遍的なものとして詩にしているのか?
ティルシス、アマント、クリタンドル、ダミス・・・・これらはどういう性格を持った役なのでしょうか?
解説本にはこれらを「アルルカン」とひとくくりにしていますが、どうもそれぞれが異なる性格を持っているようで気になっています。
「アルルカン」とはコメデア・デラルテ(イタリア古典仮面劇)の道化なのですが、18世紀はフランスでもモリエールのフランス喜劇がリュリの音楽の音楽によって上演されていたそうで、そちらも気になっています。しかもモリエールでいろいろ検索してみると、クリタンドルとかダミスという名が出てくるのです。(これはモリエールを読むしかない!)

タルチュフ

タルチュフ

  • 作者: モリエール
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1974/01
  • メディア: 文庫


町人貴族

町人貴族

  • 作者: モリエール
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1955/12
  • メディア: 文庫


しかも今日もパリのコメディー・フランセーズはモリエールの劇をリュリの音楽つきで上演しているらしいのです。(皆川達夫「バロック音楽」に書いてあります。)

リュリ / 町人貴族&カンプラ : 優雅なヨーロッパ

リュリ / 町人貴族&カンプラ : 優雅なヨーロッパ

  • アーティスト: ニムスゲルン(ジークムント), ヤーカー(ラヒェル), ショルテマイアー(ディルク), ハイダー(クラウス), ラ・プティット・バンド, リュリ, レオンハルト(グスタフ), カンプラ
  • 出版社/メーカー: BMGファンハウス
  • 発売日: 1998/08/21
  • メディア: CD

ちなみにヴァトーはイタリア喜劇、フランス喜劇を題材とした絵を描いています。

道化の絵はこんなかんじです。

どの絵を見てもマンドリンを持っているものはなく、みんなこんなギターですね。
何となくBiginの比嘉さん(でしたっけ?)に似ているように思うのですが・・・。

調べるときりがない・・・と感じます。

そもそもヴェルレーヌの「マンドリン」にフォーレ、ドビュッシー、アーンが曲をつけています。
(それはこの曲に限らない。)

なぜヴェルレーヌがヴァトーに興味をもったのか?
なぜ、あの時代の作曲家たちがその詩にこぞって曲をつけたのか?
ラヴェルの「クープランの墓」(クープランも17~18世紀の作曲家)という曲も気になる存在です。

19世紀~20世紀の近代の作曲家とフランスのロココ芸術との関係はやはり何らかの形で存在する、と考えています。

19世紀半ば以降、フランスではパリ・コミューン(市民蜂起)の失敗から、知識人の間で18世紀のロココ的世界を懐かしみ、もてはやす風潮があったそうなのです。

クープランの音楽について皆川達夫さんの「バロック音楽」から・・・。

二十世紀のはじめ、新しいフランスの音楽の道をきりひらいていったドビュッシーがクープランに捧げた賛辞ほどこの作曲家の特質を表現しえたものはないであろう。 「彼はクラブサン楽派中の最高の詩人であり、そのやわらかな憂愁には、ヴァトーのえがいた悲しげな人物達の風景が、神秘的に深くこだましている」(船山隆氏訳)

クープランの音楽は、合奏曲に限らず、クラブサン曲やオルガン曲にしても、教会声楽曲にしても、一切の作為や誇張がなく、ひとつひとつの音をいつくしみつつ、誠実に展開させ、ギャラントで純粋な音楽的な流れのうちにフランス的な詩情の世界を追及している。それは決して押しつけがましく聞く者の心にくいいってくる性格のものではないが、それだけに訴えは真実なものを伝えてくれるのである。

フランスのバロック音楽の方向は人文主義的傾向、自国の芸術の確立、自国語の尊重といった態度によって規定されている、ということを皆川さんは語っていらっしゃいます。

以前「やわらかな音楽教育」の記事でご紹介した寺西先生の「音楽史のすすめ」ではフランス印象派音楽の背景について、次のように述べていらっしゃいます。
フランスは、普仏戦争の屈辱に加えて、その後「孤立化」の苦汁を飲まされて、国民全体がドイツに対する激しく根強い反発を感じていた。そしてそれによって、フランスの文化全般に、改めて国民意識の興隆と精神主義的な動きの復活がみられるようになったのも、むしろ当然のことというべきであろう。

音楽史のすすめ

音楽史のすすめ

  • 作者: 寺西 春雄
  • 出版社/メーカー: 音楽之友社
  • 発売日: 1983/01
  • メディア: 単行本



フォーレの「マンドリン」は1891年に作曲されており(ドビュッシーは1881年に)、そういった時代背景から考えると、いろいろ勉強しなくてはならない、と感じます。

大変優雅で繊細な曲なので、ロココの雰囲気が漂う曲であると感じますね。
ドビュッシー、アーンも聴いてみたいですね。


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コメント 4

ピアノフォルテ

「音楽史のすすめ」買ってみようかしら・・。ceciliaさん、ほんとに熱心な研究者ですね。素晴らしい!モリエールやリュリはバレエ史にも出てきました。
by ピアノフォルテ (2006-02-13 19:05) 

Cecilia

ピアノフォルテさん、nice&コメントありがとうございます!
私は「熱心な研究者」ではないのですが、訳詩では理解しにくいことが多く、今回はついついのめりこんでしましました。
声楽は長時間練習することも出来ないし、こういうことを勉強したり、語学に時間を割くことが練習の一部ですね。(・・・といってもあまりできていませんが。)

この本でショパンについて、こう書かれています。
「・・・彼は、ピアノの減衰する音の性質を見事に逆用し、そこに彼独特のタッチ、ペダリング、テンポ・ルバートを活用しつつ、さらに装飾法や半音階などを巧みに織り込むことによって、ピアノという楽器を存分に歌わせる道を見出したのであった。・・・」

ルイ14世のバレエ・・・DVDになっていたかな・・・?
大変興味があります。
by Cecilia (2006-02-14 08:46) 

ピアノフォルテ

「王は踊る」ですよね。リュリとのいきさつなどもあってなかなかおもしろい映画でした。主役の方がなかなかかっこいいです。
by ピアノフォルテ (2006-02-14 08:55) 

Cecilia

あら、もうお返事が・・・。
是非見てみます!!
by Cecilia (2006-02-14 09:00) 

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