私立病院における低所得患者の扱い [インド]
貧しい患者に無料で薬品を！－デリー高裁、アポロ病院に命令
Court directs Apollo to provide free medicines to poor and needy patients
9月23日（水）、The Hindu、p.4
【ニューデリー発】デリー高裁は火曜日、アポロ病院に対して、同病院がデリー市と結んだ無料診療割当制度に基づき、貧しい入院患者に対して無料で薬品や消耗品を供与し、外来患者に対しても無料診療を行なうよう命令した。アポロ病院はデリー市政府との合弁契約に基づき運営されている。
この契約によれば、政府は市内南部のサリタ・ビハールに施設を持つアポロ病院に26％の出資を行ない、アポロ側は25％を保有する。合弁契約は1988年締結で、それと同時に市は15エーカーの土地を年1ルピーで貸与するとともに、施設建設に1億6000万ルピーを拠出した。拠出にあたっての条件として、病院が入院患者向け病床数の33％を無料治療を行なう患者向けに留保し、かつ貧しくその必要性が高いと判断される外来患者のうち40％に対して無料診療を行なうことになっていた。こうした合意に基づき、病院は1997年に病床数600床で開業した。
この病床のうち200床は貧しい患者向けに留保される筈だったが、病院側はこれを拒否し、医薬品の無償提供も無料治療も実際には行なわれていない。結果として、これら200床は現在に至るまで12年間もの間使われずに放置されてきた。
火曜日に出された高裁の命令は、アショク・アガルワル弁護士から提出された訴訟に基づくもの。
A.P.シャー判事とマンモハン判事から成る判事席はさらに、BPL（貧困ライン以下）に属する貧困層、自営業者、専門職、中央政府とデリー州政府、市当局で勤める第Ⅲ種及び第Ⅳ種公務員、及びデリー市政府が勧めた住民については、アポロ病院の割当制の下で無料診療を受けることができると述べた。
上で述べたアポロ病院の記事は割と淡々と事実を述べていると思うのだが、同日のHindustan Timesは第1面で、この問題に関してあと2つ新たな情報を提供してくれる。
◆デリー高裁はアポロ病院に対し、20万ルピーの罰金を科した。
◆アポロ病院は初犯ではない。1998年に1回、2007年にも1回、同様の改善命令を高裁から受けている。
これだけなら「ふーん、そうなの。アポロって悪どいのね」でお終いなのだが、実はこの記事を読んでいて、逆にそんなクォータ（人数割当）が存在していたというのがちょっと驚きだった。アポロ病院というのはウェブサイトを一度ご覧いただけるとわかると思うが、「メディカルツーリズム」と称して外国からの外来患者の治療までやってしまうという、言わばちょっとお金を持っている層を対象に医療サービスを提供している私立の病院だと思っていたからだ。また、僕達在留邦人の中にもお世話になったことがある方もいらっしゃるだろう。ちょっとぐらいお金を払ってもちゃんと診てくれるところで診療も治療も受けたいという人が行く病院だとずっと思っていた。ただ、そこで儲けた利益を使って貧困層向けの無料診療費用を内部補助するという仕組みがあったとしても、それは驚くべきことでもなさそうだ。これも一種の官民連携だろう。
ところが、この1週間後、Hindustan Timesは、この問題についてさらなる記事を掲載した。今度はアポロの問題だけでは済まない。同じように市当局から用地を破格の安値で借り受け、同様の貧困層向けクォータを課せられていながら、結構それをクリアしていない病院が多いということを記事は明らかにしている。（「病院は貧しい患者を十分扱っていない（Hospitals not treating enough poor patients）」、9月30日、Hindustan Times、第4面、Jaya Shroff Bhalla記者）
記事によれば、市内の私立病院38件のうち、外来患者に課されたクォータ（総外来患者数の25％を無料診療）をクリアしていない病院が22件もあるという。下記のデータまで記事には出ていたが、このクォータをクリアできていなかった病院には、マックスやフォルティスなど、在留邦人がよくお世話になっているところも含まれている。
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無料治療を受けられた患者の割合（2009年4月～6月）
クォータ――OPD（外来患者）：患者数の25％ IPD（入院患者）：病床数の10％
Dharamshila Hospital
OPD 1.09 IPD 1.4
Escorts Heart Hospital
OPD 1.24 IPD 0.13
Max Devki Devi
OPD 21.84 IPD 0.91
National Heart Institute
OPD 8.4 IPD 1.8
Pushpawati Singhania
OPD 8.82 IPD 3.8
Saroj Hospital and Heart
OPD 34.58 IPD 2.41
Max Balaji Hospital
OPD 3.35 IPD 2.44
Rajan Lal Dhall
OPD 14.21 IPD 0
R.B. Seth Jessa Ram Fortis
OPD 21.54 IPD 4.42
SHanti Mukund
OPD 1.13 IPD 40.32
Vimhans
OPD 31.31 IPD 0.9
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ことはアポロだけの問題では決してないようである。
何よりも意識の改善が大事だとはおもうんですが、現状では法の徹底と強化が効果的でしょうか。
by duke (2009-10-04 01:11)