ハゼを釣って天ぷらを食べよう [季節を遊ぼう!ゆる釣り部]

みなさん、釣りは好きですか? 釣りっていうと、いろいろな道具を揃えたり、仕掛け作りが難しかったりと、ちょっと面倒臭い遊びだと思われるかもしれない。実は私もそう思う。一匹でも多く釣るための張りつめた緊張感とかも大の苦手だ。
でも釣りっていうのは、それこそ魚の種類以上に釣り方があり、その中には気を張らないでできる“ゆるい釣り”もたくさんあるのだ。このコラムでは、そんな季節ごとのゆるい釣りとその周辺模様を紹介していきたいと思う。

text by 玉置 豊

秋になったのでハゼを釣ろう

このまま冬まで続くんじゃないかとさえ思われたもの凄い猛暑がさらっと過ぎ去り、急に気温が下がってきた。そう、一年振りに秋という季節がやってきたのだ。あ、一年ぶりの秋って当たり前か。半年振りだったらきっと南半球からの転校生。毎年この季節になると釣りたい魚がどーんと増えるので、俄然釣りに行く回数が増えてしまう。夏の間ももちろん釣れる魚はあるのだけれど、ほら暑いから。

今回狙う“ハゼ”という魚は、初夏から河口などの浅場で釣れだして、8月くらいに数釣りのピークがくる。この頃なら釣れるときは100匹、200匹という単位で釣れるんだけれど(私はそんなに釣ったことないけれど)、どうにもサイズが小さい。釣る場所にもよるけれど、江戸川河口あたりだと7月だったら7センチ、8月だったら8センチという感じで、いっぱい釣っても料理するのが面倒くさい。これはこれで頭ごと唐揚げにすると美味しいんだけれどね。

その小さかったハゼも、10月になると10センチオーバーになるのだが、そうなると浅場ではあまり釣れなくなるので、少し深場を探る必要が出てくる。今日はその天ぷらサイズ、刺身サイズのハゼを狙ってやろうと、東京湾に面した防波堤にやってきたのだ。


やってきました東京湾。

ハゼ釣りの仕掛けを準備しよう

今回のゲストはガテン系釣り人のクモさん(仮名)という友人で、この人は東京湾での普通じゃない釣りや真夜中の潮干狩りに詳しい素敵な人。会うたびに「ミミズ(ウナギ釣りのエサにする)がとれる場所知らない?」とか「栗が落ちている公園とか知らない?」とかの怪しい情報交換を二人でしているのだ。

なんでもつい最近この釣り場で、わずか2時間の間にエサがなくなるくらいにハゼが大漁だったとの事。ここの釣り場は潮が満ちている時間帯しか釣れないらしいのだが、今はまさにその時間。きっと前回以上の爆釣(多くの釣り人が一番好きな単語)間違いなし。目標100匹。


今日のゲストは仕事帰りにニッカズボンで釣りをするクモさん。

今の季節だとハゼは少し沖にいるということで、リール竿を使って“陸っぱりからチョイ投げ”で攻めることにした。陸っぱり(おかっぱり)とは船ではなくて陸から釣ることで、チョイ投げとはチョイと10~20メートルくらい仕掛けを投げて釣ること。ちなみにクモさんは“元つっぱりでチョイ悪”だ。

仕掛けは糸の先に天秤という針金をひん曲げたような金具をつけて、そこにオモリと針のついた糸をつなげる。なお、私が今回使った天秤は、本来延べ竿(リールを使わない竿)で使用するための天秤なのでマネしないように。普通はもう二回りくらい大きい天秤を使います。別にコレでも困らないんだけれどね。


天秤とオモリのバランスが悪い。でも気にしない。

下の写真が仕掛けをセットした状態。エサはアオイソメというニョロニョロ系の生き物で、エサを付けようとすると指先に甘噛みをしてくるのがチャームポイントだ。


アオイソメはハゼの一口サイズに切って使います。

さあ、ハゼを釣ってやろう

仕掛けを準備し終わって、さあこれからやるぞというタイミングで、さっきまで穏やかだった海から急に強い風が吹いてきた。ガビーン。この「さあ、釣りをやろう!」というタイミングでいきなりの強風に見舞われるのは今までに何回も経験しているのだが、逆に急に穏やかになったという経験は一度もない。

強い向かい風にもめげずに1.2メートルの短い竿で仕掛けを投げる。仕掛けが風で戻されてぜんぜん飛ばない。ちなみにこの黄色と黒の釣り竿はその見た目から「阪神竿」とか「リゲイン竿」とか一部の人に呼ばれていて、ワカサギ、キス、カワハギ、ウナギ、アジ、サバ、アカエイなど大小さまざまな魚を釣り上げたお気に入りの名竿だ。こいつならきっとハゼも釣ってくれるはず。本当は2,000円くらいの安物なんだけどね。


がんばれ、ボクの阪神竿。

私は仕掛けを投げたら、竿を手で持ったままリールを少しづつ巻いて広く探っていく。クモさんは竿を2本出して竿を置き、アタリがあるのをじっくり待つ。置き竿の場合は魚が掛かると竿先がブルブルと揺れるのだけれど、今日は風が強すぎてアタリがわかりづらそう。


風が強くてオールバックになりがちのクモさん。

大漁間違いなしと思われていたハゼ釣りだが、風の影響か日頃の行いが悪いからか、釣りを始めてから20分ほど経つのだが、二人ともまだ一匹も釣れていない。アタリは頻繁にあるんだけれど、エサだけとられて魚が針に掛からない。さらにこの場所は根掛かりが多くて仕掛けがどんどんなくなっていく。それでもねばり強く釣りを続けて、ようやく私の竿になにかが掛かったと思ったらカニだし。


カニ。ハゼ釣りをやっていると結構釣れます。

どうにかハゼをゲット

ヤバイヤバイヤバイ。今日の夕飯はハゼがメインの天ぷらにしようと思っていたんだけれど、このままだと野菜だけの精進揚げになってしまう。あるいはエサのアオイソメが食卓に並ぶはめに。イヤイヤイヤ。一匹も釣れないと今日の釣りに誘ってくれたクモさんにも悪いなあとがんばるもなかなか釣れない。

お互いがどのタイミングで「もう帰りましょうか」というのかを探り始めた頃、プルプルプルっという小気味のいいアタリがあり、ようやく、ようやく、一匹のハゼが私の竿に掛かった。10センチほどに育った堂々の天ぷらサイズだ。


苦労して釣った一匹。嬉しい。

久しぶりに狙って釣ったハゼは相変わらずかわいらしく、でっぷりと太っていてとても美味しそう。この一匹が釣れたことで、今日はこいつをつまみと思い出にして美味しいビールが飲める。よし、贅沢して発泡酒じゃなくてビールを買っちゃおうかな。


ポッテリとした唇がセクシー。

この一匹を合図に時合い(よく釣れる時間帯)がきたらしく、クモさんもポツポツとではあるけれど釣れだした。私は根掛かりの連発で天秤がなくなってしまい、オモリを直に結ぶというアバウトな仕掛けにチェンジしたが、それでも何匹か追加することに成功。こういう適当な仕掛けで魚が釣れると、普通の仕掛けで釣るよりも“してやったり”感があって嬉しかったりするんだよね。私だけかな。


こんな仕掛けでも釣れるときは釣れます。

3時間ほど頑張って、どうにか二人がかりで10匹ほどのハゼを釣ることができた。時給2匹か。この季節のハゼ釣りとしてはとても少ない数だけれど、久しぶりのハゼ釣りはやっぱり楽しかった。誘ってくれたクモさんに感謝。


どうにか夕飯のオカズを確保。

釣ったハゼはもちろん天ぷら! 前回のあんま釣りで釣ったウグイやアブラハヤは初めて食べた魚だったのでおっかなびっくりの料理だったけれど(食べたらおいしかった)、ハゼなら何度も料理して食べたことがある。今日はせっかくの釣りたてハゼなので、素材の持ち味をいかすべく、アツアツのところに天つゆではなくて塩をちょっとつけていただきます。

釣りたて揚げたてのハゼはフカフカとやわらかく、ほんのりと甘みがあってうま味が濃い。東京湾で釣れたというとイメージが悪いが、江戸前で捕れたといえば高級品。ビールとの相性ももちろん最高。臭みなんかは一切なく、あんまり美味しくて一気に食べきってしまった。

ちくしょう、もっと釣ってくれば良かった。食べたりないから、また近々ハゼを釣りにいってこようっと。


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