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『仏像 一木にこめられた祈り』展 [06展覧会感想]

東京国立博物館で開催されていた特別展『仏像 一木にこめられた祈り』を観に行きました。この展覧会は奈良・平安仏から江戸時代の円空・木喰まで、一木彫の名品が上野に集結するもので、日本人がこだわった木で仏像を造ることの意味を考えるとともに、そこで培われた良質な木の文化を通して日本人の心や精神性に触れ、「檀像の世界」「一木彫の世紀」「鉈彫」「円空と木喰」という四つのテーマを通して、その底流に脈々と流れる日本人が木と仏に託した祈りの世界を浮かび上がらせるものだそうです。

~展示内容~
第一章 檀像の世界 第二章 一木彫の世紀 第三章 鉈彫 第四章 円空と木喰

まず最初にお会いしたのは、重要文化財の東京国立博物館所蔵・十一面観音菩薩立像さまです。いきなり五重・六重の人だかりです。ふだん、所蔵作品展では多くの方がスルーしている観音さまなんですがね。後ろ側を見ることが出来たからでしょうか。(えっ、所蔵作品展でも後ろOK!?)ん~やっぱり企画展の最初の展示だからでしょうね~観音さまもさぞかしビックリしておられることでしょう。(≧∇≦)/ ハハハ
この第一章は全て重要文化財。ガラスケース入り。大混雑。(^_^;)

大本命は国宝のせくすぃ~な観音さま。

十一面観音菩薩立像(滋賀・向源寺蔵)国宝・十一面観音菩薩立像(滋賀・向源寺蔵)さまが今展覧会の大本命。こちらの観音さまにお会いするため、今日、この場にいるといっても過言ではありません。その圧倒的な存在感にしばし呆然。像高194.0cmは迫力あります。オーラが違います。前から後ろからじっくりと拝見。後ろからみた観音さまのウエストのくびれがとてもせくすぃ~でびっくり!!後ろからすぅ~っと手を入れて抱きしめたくなるほど。滑らかでしなやかでとても綺麗。(ばち当たりですみません・・・(^_^;))そして、衣が風を受けて柔らかくなびくような流れるような表現もとても自然。前からみると、その腰を捻り片膝を緩めた姿勢がとても凛々しい。衣の表現と相まって、そのまますぅ~っと前に動いていきそうなポーズともいえそうです。見る角度によって静にも動にも受け取れます。それでいて矛盾は一切なし。滑らかな肌や衣の質感、特に衣のひだや装飾、台座・・・凄すぎます。もちろん慈悲深いお顔も。平安時代・9世紀のものだそうです。平安仏師の心意気がヒシヒシと伝わってきます。前後左右、計30分以上、ここで過ごしました。
想するかのような慈悲深い表情、ふくよかな胸や腹の肉付け、腰を捻って立つすらりとした肢体などその類いまれな美しさから、日本に現存する十一面観音像の白眉ともいえる像である。
 顔の脇、頭上や後頭部に十の面を大きく表し、その姿は非現実的であるが、それをまったく違和感なく、美しい調和の中にまとめあげている。柔軟な肉体やそれを覆う衣の薄く柔らかな質感表現も見事である。
 頭部と体部から台座の蓮肉(れんにく)、さらに両腕から本体を離れて台座に垂れる天衣も含めて針葉樹の一材から彫出しているが、全く破綻がなく、木彫に習熟した仏師の高度な技術がうかがえる。
 本像を安置する観音堂は、かつてこの地に栄えた渡岸寺の跡地にある。同寺廃絶後、本像と堂は長年土地の人々によって護られてきたが、明治以降は向源寺の管理下に置かれている。

 
れまで門外不出とされてきた本像は、向源寺の飛地境内の観音堂の本尊として伝来しており、この場所は、かつて天台寺院の渡岸寺の跡地であったと伝えられている。
 渡岸寺は、聖武天皇の勅願によって当時都に流行していた疱瘡(ほうそう)の厄除け祈願をこめて十一面観音像を刻んだことに始まり、その後最澄によって再興されたといわれている。元亀元年(1570)の姉川の合戦に際し、寺は焼失したが、観音像は村人の手により土中に埋められ難を逃れたとのことである。 (公式サイトより)』
会期後半のみの期間限定展示です。会期前半は国宝・菩薩半跏像(伝如意輪観音)(京都・宝菩提院願徳寺蔵)さま。こちらもお会いしたかったのですがね~
第二章で印象深かった仏さま。
聖観音菩薩立像(奈良・れんじょう寺蔵)
如来立像(伝宝生如来)(京都・金剛心院蔵)
十一面観音菩薩立像(和歌山・慈光円福院蔵)
四天王立像(出円持国天・伝広目天)(島根・大寺薬師蔵)
四天王立像(広島・古保利薬師堂蔵)

第三章の鉈彫では、宝誌和尚立像(京都・西往寺蔵)さまがとても素晴らしく見応え十分でした。こちらは 宝誌和尚の顔がパカッと割れて中から観音さまが現れる瞬間を仏像化したもの。仏像で瞬間を表現するものは珍しいのではないでしょうか。鉈彫りのうねうね~っとした波模様がその瞬間を見事に表現しています。とても神秘的というか神聖な瞬間。仏さまですが神秘的と表現してよいのでしょうか?語彙力が無いため他に適切な表現が見つかりません・・・(^_^;)とはいっても、そもそも一木彫の原点は霊木や神木にあるそうですからね。(=^_^=) ヘヘヘ
鉈彫の仏像の中で、際立っていたのが十一面観音菩薩立像(神奈川・弘明寺蔵)さま。こちらはうねうね~というべきか、むずむずっというべきか。

第四章のやっぱり見所は円空の可愛い仏像不動明王さまがにっこり♪(^_^)もちろん十二神将立像(埼玉・薬王寺)さまもにこにこ♪先日、埼玉県立歴史と民俗の博物館の常設展示でお会いした十二神将立像ととてもよく似ていました。聖観音菩薩立像(岐阜・阿弥陀寺)さまも可愛い。
木喰の子安観音菩薩坐像(立木仏)(愛媛・光明寺蔵)さまは観音さまが木の中から出てくるみたい。見応え十分。でも木喰の仏像は私の好みではない。

この展覧会、展示の仕方、特に照明のあて方がナイスです!!がとても素晴らしい。神秘的というか、幻想的というか・・・第一章では、強い光で床に影が綺麗に出ていました。混雑の中にも一瞬の静寂を感じることが出来ます。第二章では、後ろに布が張られ、そこに浮かび上がるような優しい影。これには皆さんうっとり。これは今展覧会の注目すべき点ではないでしょうか。そして、一木彫の展覧会ということで、『仏像の後ろ側』という通常ではなかなか見ることの出来ない部分も楽しませてもらいました。
でも、最後の木喰のショーケースはいけなかった・・・木喰の表面ツルツル仏像さまはどっかの民芸品店やお土産屋さんみたいだった。。。(^_^;)
さすが会期末、すごい大・大・大混雑。昼間に鑑賞したダリ回顧展よりもはるかに混雑していて、展示室は凄い熱気!!平成館のアノだだっぴろい展示室がとてつもなく狭く感じました。来場者は計33万5489人だったそうです。

東京国立博物館(http://www.tnm.jp/

仏像 一木にこめられた祈り (http://www.butsuzo.jp/

 



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TaekoLovesParis

ほんと、国宝の11面観音の腰の曲線が美しいですね。
ギリシア神話のヴィーナスの曲線とは明らかに違いますね。
照明がよかったんですか。最近の展覧会は、見せる工夫があって、
楽しめますね。
こんなに来場者が多かったら、、また数年後に開催されるかもしれませんね。期待してます。
by TaekoLovesParis (2006-12-21 22:11) 

Tak

こんばんは。

今思い返しただけでも
凄い展覧会でしたね。
沢山の仏様に沢山の見学者。

慣れない場所であんなに
ジロジロ観られて仏様も
さぞかしお疲れだったでしょうね。
by Tak (2006-12-21 23:07) 

くみみん

こんにちは。
へそ曲がりな私がお隣まで行ってスルーした「仏像展」
私はお寺の中でただ一人の仏様と会話するようにお会いしたいな〜!!
でも、そのように見るには色んなところにいかないと無理ですね。普段見られない仏様もいらっしゃるし。
こんなチャンスはないのかもしれません!しかも後ろ姿まで見られるなんて!
仏師が仏様を掘っていらっしゃるのをドキュメントのTVっで見たことがありますが、すごく大変なんですよね。
by くみみん (2006-12-22 14:59) 

りゅう

>TaekoLovesParisさん、nice!&コメントありがとうございます(^o^)丿
国宝の観音さまは寺外初公開。滋賀まで行くというのはなかなか大変なことですので、滅多にお目にかかれません。とても貴重な機会でした!
以前記事にしたように、お正月に「夢の美術館・仏の美100選」をテレビで見ていたので、仏像展を年内に1度は観に行きたいと考えていました。今年の企画展の最後を締めくくるに相応しい展覧会だったと思います。
by りゅう (2006-12-22 22:24) 

りゅう

>Takさん、こんばんは。TB&コメントありがとうございます(^o^)丿
凄い展覧会でしたね~度肝を抜かれました。
一木彫にこだわるというところに、東博の心意気を感じます。
そうですよね、慣れない場所で前後左右からジロジロと見られて仏さまもさぞかし緊張して疲れたことでしょう。クリスマス休暇ですかね~、今頃ゆっくりと寛いでいるのではないでしょうか。(^_^)
by りゅう (2006-12-22 22:35) 

りゅう

>kumiminさん、nice!&コメントありがとうございます(^o^)丿
わかります、その気持ち!今回は、なかなか行くことのできない、滅多にお会いすることのできない仏さまが多数いらっしゃっておりました。
特に国宝の観音さまは寺外初公開。滋賀までお会いしに行くことは実質的に厳しいのでとても貴重な機会だったと思います。(^_^)
一本の木から全体又は主要部分を造り出す一木彫という方法で、霊木や神木といった特別な木から造り出されものだそうです。8世紀とか9世紀の木彫りが現在も綺麗な状態にあることにも驚きました。
私もドキュメント番組で見たことがあります、確か最後に目を入れるとのこと。この瞬間が一番緊張すると仏師が話していたような記憶があります。
by りゅう (2006-12-22 22:59) 

りゅう

>ぽんこさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿
by りゅう (2007-01-20 00:37) 

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