SSブログ

ヨーロッパ絵画名作展 [05展覧会感想]

18日にうらわ美術館で開催中の山寺 後藤美術館所蔵 ヨーロッパ絵画名作展-宮廷絵画からバルビゾン派へ-』に行ってきました。

この展覧会は、山形市の山寺にある後藤美術館のコレクションから、18,19世紀の絵画を中心に72点を紹介するもので、チラシの紹介文を一部要約すると、「西洋の長い絵画の伝統の中では、宗教や神話、文学、歴史に深く根ざした『物語る』絵画が主流であったいえ、それぞれの時代や画家の様式の違いはあれ、連綿と続く『物語性』の絵画の中にこそ、西洋の絵画の真髄を見出すことができる」そうだ。(←これが今回のテーマでもあり、この美術館のコンセプトらしい。)

~展示構成~
Ⅰ.宮廷絵画からアカデミズムへ Ⅱ.バルビゾン派とその周辺 Ⅲ.ヨーロッパ諸国の絵画

ニコラ・ド・ラルジリエール《カトリーヌ・ギィモン・デュ・クードレイの肖像》ジャン=マルク・ナティエ《落ちついた青色の服》展示室にはいると、ニコラ・ド・ラルジリエール《カトリ-ヌ・ギィモン・デュ・クードレイの肖像》、ジャン=マルク・ナティエ《落ちついた青色の服》、ジャン=バティスト・グルーズ《小さな数学者》といったとても綺麗な肖像画による出迎え。《落ち着いた青色の服》は貴族の夫人などを神話の女神に見立てて描く『歴史的肖像画』の一点らしい。《小さな数学者》は少年だそうだ。テオドール・ジェリコー《戦い(サルヴァトール・ローザの模写)》はいかにもジェリコーって感じのごちゃごちゃした感じのもの。ジェリコーはローザ《英雄の戦い》を何度も模写しており、「ドラマティックな描写を特徴としたローザは、人間の内面にうねる感情の起伏を表現しようとしたジェリコーにとって重要な先駆者だった」そうだ。(このころからジェリコーの方向性は決まっていたみたいだ・・・)ウジェーヌ・イザベイ《難破船》はサイズも大きく、迫力のある作品。自然の怖さを実感できる。ジェルマン=テオデュール・リボ《花》は、昨年の『花と緑の物語展』(東京都現代美術館)では《花瓶の花》というタイトルで展示されていたもの。(静物は得意ではないが見覚えのあるものだったので、気になって図録で確認してみました。)

ジャン=バティスト=カミーユ・コロー《大きな木のある浅瀬》ジョルジュ・ミシェル《木立の道を行くきこりの荷馬車》は落ち着いた雰囲気の中に、光と影による雲の迫力がアクセントとなってとても奥行きのある作品。ジャン=バティスト=カミーユ・コロー《大きな木のある浅瀬》《サン=ニコラ=レ=ザラスの川辺》は、ジャン=バティスト=カミーユ・コロー《サン=ニコラ=レ=ザラスの川辺》コローだなぁ~って感じの観ていると気持ちが落ち着く優しい作品。《サン=ニコラ=レ=ザラスの川辺》は解説によると、「実景に基づく習作に物語的要素と夢幻的雰囲気を加えて完成させた作品」とのこと。程良く力の抜けた感じがナイス!!ナルシス=ヴィルジル・ディアズ・ド・ラ・ペーニャ《フォンテーヌブローの森》《フォンテーヌブローの森の小径》は、構図は似ているものの色使いは全く異なるもので、結構見応えのある作品だと思います。

ジャン=フランソワ・ミレー《ポーリ-ヌ・オノの叔父、ギヨーム・ルミィの肖像》、ミレーの肖像画は初めて観ました。「農民画での叙情や憧憬とはまったく異なる、ミレーの冷静な観察眼と鋭い写実性が発揮されている」とのこと。ジャン=フランソワ・ミレー《庭にて》《庭にて》は、昨年の『花と緑の物語展』(東京都現代美術館)で観た時はデッサンのかわいい絵という感じだったのですが、今回、解説を読みながらこの作品をじっくりと観ると、ミレーの優しさが伝わってきて、とても愛着が湧いた。解説によると、「ボストン美術館が、これと同題・同サイズの作品を所蔵している。まったく同じ構図で、主たる技法としてパステルを用いることも共通。こちらは、作者自身によって再制作されたレプリカである。実に伸びやかな筆使いでバルビゾン村にあったミレー家の裏庭を描く。登場人物は確定できないが、おそらく中央の若い女性が長女、左の幼児は次男か五女であろう。ミレーが農村に溶け込んで暮らしていたことが分かる。」とのこと。ミレー自身がどうしても手元に置きたかった作品の一つということでしょうか。

ギュスターヴ・クールベ《ピュイ・ノワール渓谷》ギュスターヴ・クールベ《ピュイ・ノワール渓谷》は、自然の荒々しさと静けさが同居しているかのような作品。解説も無かったので軽く流している人が多かったが、個人的にはこういう作品は結構好きだ。そしてチラシの表にある、《波》。113.3×145.0cmと予想していた以上に大きな作品で、とても迫力のある写実的なもの。打ち寄せる波の荒々しさと夕焼け(又は朝焼け?)により空の赤みがかった雲とのバランスが絶妙で、奥行きのあるとても素晴らしい作品。アンリ=ジョセフ・アルピニー《月明かりの湖》解説によると「クールベは、荒ぶるエネルギーを秘めた海に対峙し、その力強さを十全に画面に再現しようとした。これもそのような海景画であるが、実は亡命先のスイスで追憶の中で描いたもの」とのこと。記憶だけを頼りに描いたって・・・(⌒○⌒; ポカーン
アンリ=ジョセフ・アルピニー《月明かりの湖》、みた瞬間、カミーユ・コローっぽいなぁ~という感じだった。解説によるとコローの作品を熱心に研究していたらしい。詩とか俳句が似合いそうな雰囲気の、味わい深いとても素晴らしいもの。

ジョアッキーノ・パリエイ《夜会》ジョアッキーノ・パリエイ《夜会》は、18世紀の貴族階級の日常の情景をやや大げさな身振りで描き、背後のドラマを連想させようとする、19世紀に流行した風俗画の典型的な例だそうだ。こういった絵はあまり好きではないが、ドレスの質感はとても素晴らしく、女性の表情はとても立体的。絵というより、そこに人形が置かれているかのよう。特に、ドレスのシルクのような光沢と優しい質感は最高!!ジョゼフ=マラード=ウィリアム・ターナー《ウスターシャーの眺め》ジョゼフ=マラード=ウィリアム・ターナー《ウスターシャーの眺め》ウスターシャーの大聖堂をスケッチしたものらしい。見応え十分。(ちなみにウスターシャーはウスターソースの原産地だそうだ)ジョン・コンスタブル《少女と鳩(グルーズの模写)》は、明らかに失敗だろう・・・グルーズの作品と並べて展示されていなかったのが幸い。(頼まれて描いたらしいが、「グルーズの画風は性に合わず、制作は楽しまなかった」らしい)

ヤコブ・ファン・ロイスダール《小川と森の風景》ヤコブ・ファン・ロイスダール《小川と森の風景》。まさか、ロイスダールの作品に会えるとは思っていなかったので、とても驚いた!しかも、103.2×130.5cmと大きなものだ。この作品に会えただけでこの展覧会に来て良かったと思える、風景画好きにはたまらない逸品です。解説によると、「17世紀オランダの巨匠ロイスダールの風景画は、200年後のフランスの画家たちに大きな影響を与えた。この作品に描かれた森と川と動物は、多くのバルビゾン派の画家たちの取り上げたモティーフと共通している。特にドービニーは強い感化を受けたと言われている。奥深い美しさを感じさせるロイスダールの風景表現は、後世の画家にとって非常に豊かな霊感の源泉となったのである。」とのこと。そういえば、ロイスダールとバルビゾン派の関係なんて考えもしなかった。言われてみると、確かに似たような雰囲気の作品は多いかもしれない。これからバルビゾン派の作品を観る時は、ロイスダールの画風を意識することになりそうだ。

 この展覧会はあまり宣伝がされていないせいか、展示室は人もまばらで、じっくりと作品と対峙するには、申し分ない!!しかし、大きな問題が一つ。照明がガラスに反射してしまって作品の微妙なニュアンスがイマイチ伝わってこない・・・作品の質はとても高く、展示構成もとても素晴らしいものなのに。展示室は広く、作品の間隔も程良く、落ち着いた雰囲気。休憩場所も多く、サンプルの図録も置かれおり、とても親切。また、展示室内の作家・作品の解説も多い。(図録の解説と全く同じです。)

今回、いつ観に行こうかと考えているところに招待券がプレゼントで当選したので、安心しきって会期末になってしまった。観覧料630円でこれだけの作品が観れるということはめったに無いのではないでしょうか。これは、おすすめの展覧会です。ファーブル美術館展(新宿)とも似通った作品群なので、そちらを観に行った方は、(作家の解説を飛ばして)作品解説のみでじっくりと鑑賞しても良いのではないでしょうか。こちらの展覧会にはロイスダール、ターナー等の作品があり、新宿にはシスレー、ギヨマン、マティス等の作品があることからも、作品構成からするとこちらを観てから新宿のほうが順番としてはいいかもしれません。(ベルリンの至宝展で味を占めたこともあり、両展覧会とも2回目を検討しています。)最終日にギャラリートークがあるそうだが、それもちょっと面白そう。

  • 図録:2000円(税込)

うらわ美術館(http://www.uam.urawa.saitama.jp/

 

表

裏

【新潟展】 新潟三越:2005年1月2日~1月17日
【大阪展】 京阪ギャラリー:2005年3月24日~4月5日
【埼玉展】 うらわ美術館:2005年4月29日~6月26日


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:アート

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。