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ジョルジュ・ド・ラ・トゥール展 [05展覧会感想]

25日(金)の夕方にジョルジュ・ド・ラ・トゥール展(国立西洋美術館)に行ってきました。日本でのラ・トゥールの知名度の低さか、時間的なものか、そのあたりはよくわかりませんが、結構、空いてました。この日は夜間開館日ということで、時間を気にせず、ゆっくりと観ることが出来ました。やっぱり、美術館はこうでないと!!(←昼間のゴッホ展に対する不満も込めて(^o^)丿)

会場の大まかな流れは、以下の通り(案内図より)

  宗教12使徒-音楽-宗教-風俗 

《聖トマス》今回の展覧会のきっかけとなる《聖トマス》(国立西洋美術館蔵)はこのアルビの《キリストと十二使徒》連作に属するもので、計13点の連作のうち5点しか真作は現存していないそうです。《聖トマス》のほか、聖アンドレ》《聖小ヤコブ》《聖ユダ(ダダイ)》の計4点が展示されていました。この4点以外のものについては、真作・模作の写真が展示され解説も付されており、ものすごく、丁寧な展示構成に驚かされました。連作の中でこの作品は唯一の動の作品だそうです。昨年、常設展で《聖トマス》を初めて観た時、ものすごい緊張感が伝わってきて、その迫力と存在感に圧倒されたことを今も鮮明に覚えています。(チョット怖かったんです・・・(ーー;) )聖人を人間のように自然な感じで描き、強い宗教性を感じさせないこの種の絵画は、奥が深いけど、日本人には受容され易いのではないかと。(宗教画としてではなく、一つの絵画作品として受け入れられるし・・・)

《聖フランチェスコの法説》(ラ・トゥールの失われた原作に基づく?同時代の模作)《聖フランチェスコの法説》(ラ・トゥールの失われた原作に基づく?同時代の模作)という模作が展示されていました。頭蓋骨を膝に乗せる聖フランチェスコに付き添い、祈りをささげる修道士。その二人を蝋燭の明かりが照らす場面を描いたものです。この蝋燭の火の描き方やその明かりによるコントラスト、構図・・・ん~、これが模作???それくらいすごい作品だと思います。模作に心を打たれる自分って・・・(暴) 図録の解説には「・・・工房で制作された質の良い模作であることは疑いない。・・・本作品は、その制作におけるラ・トゥールの関与の有無に関して意見が一致せず、未だ問題が解決されていない稀な作品のひとつ・・・」との記載。どうやら、部分的にラ・トゥールが手を入れた工房との共作らしいです。

《聖ペトロの否認》も工房との共作らしいですが、これも素晴らしい作品でした。ラ・トゥールの署名・年記があるにもかかわらず、真作とは断定できないものだそうです。主要な部分はラ・トゥールが描いたもののよう。様々な実験的試みを含んだもののような気もするのですが・・・

《聖ヨセフの夢(聖ヨセフの前に現れる天使)》《聖ヨセフの夢(聖ヨセフの前に現れる天使)》はラ・トゥールの全作品中最も完成度が高く、ラ・トゥール芸術のすべてが集約されたものだそうです。確かに、すごい・・・おそらく、単品で観たら私のような素人にはそのすごさはわからなかっただろうと思います。いくつもの真作・模作を観てきたうえでこの作品の前に立つと、確かにそれまでの作品とは違う何かがこの作品にはある!!(これが今回のような大規模な展覧会の醍醐味かも・・・)この作品は《大工の聖ヨセフ》(ルーヴル美術館蔵)としばしば比較されるそうです。今回はとても質の高い模作(工房のものらしい)が展示されていましたが、欲をいえば、真作も観たかった!(過去に日本に来たことがあるそうだ)

《荒野の洗礼者聖ヨハネ》《荒野の洗礼者聖ヨハネ》《書物のあるマグダラのマリア》は、感動というより心を持っていかれる(魂を抜かれる?)ような作品でした。この2つの作品の前に立ったとき、何故か泣きたくなった・・・(これこそが宗教及び宗教画なんだなぁ。なんてしみじみと思ったりなんかしたりも)《書物のあるマグダラのマリア》マグダラのマリア》は、ラ・トゥールが最も好んで描いた主題で、真作・模作とも数多く残っているそうですが(最も、絶対値が少ないわけで・・・)、解説によると「・・・この主題の中で最も単純化された形態をもち、ヴォリュームのある頭髪が聖女の顔の下半分は見せながらその目は覆い隠すさま、テーブルに腕を置き愛情を込めるように両手で包み込んだ頭蓋骨と無言の対話をするさまが、神秘的な雰囲気を演出している。蝋燭の炎に透かされた大きな本の一頁が、その炎に熱せられた空気によって立ち上げられる様子を描いた部分は、本作品に比類なき独創性を与えている」ということです。難しいことはよくわかりませんが、この作品を観た時、静寂の後、寂しさやむなしさ、悲しさといった感情が押し寄せてきた・・・

《煙草を吸う男》(東京富士美術館蔵)とその模作については、いずれも素晴らしいものには変わりないけど、本当に真作なのかなぁなんて。ここまで、真作と模作ををいくつも見てきた感触からすると、工房との共作のような・・・(他の真作についても共作のような感じのものもあったが・・・)ん~、難しいっすね、素人にはよくわからん!! (>_<)

《ダイヤのエースを持ついかさま師》《ダイヤのエースを持ついかさま師》というルーヴル美術館の至宝ともいうべきこの作品は、アジアへの貸し出しは今回が初めてだそうです。クラブのエースを持ついかさま師》(フォートワース、キャンベル美術館蔵)という作品は、残念ながら出品されていませんでしたが、《ダイヤ~》の方が完成度の高いもののようです。もし、並べて展示したら《クラブ~》は習作にみえちゃったりして!!また、《ダイヤ~》はルーヴル所蔵の6点の真作のうち、最も美しくかつ重要な作品のひとつで、ラ・トゥールの作品系列の中でも異彩を放つこの作品は、ラ・トゥール研究においても重要な位置を占めているそうです。確かに、これまでの宗教画等とは一線を記すこの作品、《聖トマス》等と比べると本当に同じ人が描いたものとは思えない・・・でも、《蚤をとる女》《金の支払い》等を観ていると、やっぱり、ラ・トゥールなんだよなぁ。この作品はすごいというより、面白いっていうのが正直なところ。

光と闇(影)のコントラストを描いたらピカイチ!特に、蝋燭の火や明かり、その光に照らし出される人物等。たった一本の線がすごく重要な意味を持ち、それだけで、絵に迫力や動きがでたり・・・やさしい光の描写、大胆な構図・・・挙げたらキリがない程、素晴らしい。

国王付きの画家として名声を得ていたにもかかわらず、その後急速に忘れ去られ、300年という長い眠りから覚めた・・・

確かに、神秘的で謎めいた部分が多いけど、その間評価されなかったのも事実。展覧会全体を通してみてみると、わかるような気もします。現代では、シュールやキュビスム等、様々な見方・考え方・手法があり、ラ・トゥール芸術を理解し受け入れることが可能な環境が整いつつあるからこそ、見直されたといえるのではないでしょうか。また、写真も大きな意味を担っていると思います。《ダイヤ~》のように卵形の平面的な顔も今なら芸術作品として、(モディリアーニやマリー・ローランサン、藤田等のように)それを受け入れる土台がある。しかし写真のない時代、肖像画・宗教画としてラ・トゥールの作品が社会から受容されるのは難しかったのではないでしょうか。このような素晴らしい作品が、戦争によってその多くが失われてしまい、わずか40点余りしか現存していないのは本当に残念です。

音声ガイドはチョット長めですが、すごく丁寧でわかり易い解説です。ガイドを聞きながらじっくりと鑑賞されることをおすすめします。

 展覧会後、「ラファエロ、カラヴァッジョ、フェルメール、レンブラントを観たいっ!」て、強く思いました。(←ただの欲張り!?)

~おまけ(よけい!?)~ 私の感覚的なもの(というかお気に入りです)

外で光(光の変化)・・・モネ

室内で外からの光(瞬間)・・・フェルメール

室内で肖像(ホワイト、ハイライト、特に明るさ)・・・レンブラント

室内で蝋燭・宗教(朱赤、コントラスト、特に闇)・・・ラ・トゥール

 

  • 図録:2200円(税込) (※2000円(税込))
  • 音声ガイド:500円(税込) (領収書に図録の200円引券あり)

HPに割引券があります。

国立西洋美術館(http://www.nmwa.go.jp/index-j.html

読売新聞(http://event.yomiuri.co.jp/latour/

 

※細密画工房絵草紙:インタビュー(http://www.ezoushi.com/

 

表裏

表裏

 


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コメント 14

インフォシェルジュ

はじめまして!
早速のご訪問とコメントありがとうございます。
この展覧会は今まで観た展覧会で群をぬいていますね。
カタログ良かったのですね...買っておけばよかった。
よろしかったら、また遊びにきてください!
by インフォシェルジュ (2005-05-02 06:56) 

りゅう

>インフォシェルジュさん、はじめまして&こんにちは。
TB&コメントありがとうございます。
本当に素晴らしい(というか、贅沢な)展覧会だと思います。
カタログは・・・
作品数が少ない分、内容にこだわったという感じでした。
また遊びに行かせて頂きます!
by りゅう (2005-05-03 00:51) 

naonao

もう二年前くらいになるのですね。私も行きました。この展覧会!!
このチラシ懐かしいです。
by naonao (2007-02-17 22:34) 

りゅう

>naonaoさん、nice!&コメントありがとうございます(^o^)丿
いい展覧会でしたね!
先日、常設展で《聖トマス》を鑑賞してきたところです。
西美の企画展は構成がしっかりとしていて内容が充実しているところが大好きです。「持ってきて並べた展」とは大違いですね♪ヾ( ̄ー ̄)ゞ
by りゅう (2007-02-18 15:40) 

TaekoLovesParis

今、また、なつかしく思い出しながら、読んでいます。
上のバージョンのちらしもあったんですね。やはり、ろうそくの光ですが、
下の方がお客さんをよべますよね。
by TaekoLovesParis (2007-02-18 23:19) 

りゅう

>TaekoLovesParisさん、nice!&コメントありがとうございます(^o^)丿
宗教画は得意ではないのですが、ジョルジュ・ド・ラ・トゥールだけは別です。
この繊細な光の描写は観る者を別次元へと誘います。
この展覧会は凄い内容でしたね。
日本でこれだけの作品が揃うことは無いのではないでしょうか。
久しぶりに図録を開いています(^_^)
by りゅう (2007-02-19 23:22) 

いっぷく

りゅうさん♪トラックバックありがとうございます。

不覚でした!りゅうさんが記事にしている事知りませんでした(涙
心臓ドキドキで一気に読ませていただきました。
う~ん、観たかった、残念。
この時期もロンドンにいたので情報も得てませんでした。
さすが、りゅうさんだなって感激でした。
ラ・トゥールってすごい画家ですね、僕の中の位置付けでも
トップクラスです。
by いっぷく (2007-11-01 23:44) 

りゅう

>いっぷくさん、nice!&コメントありがとうございます(^o^)丿
真作の約半数が上野に集結したとても貴重な展覧会でした。
展示数が少ないので作品間もゆったりとしていて、
落ち着いた雰囲気の中で音声ガイドを手にのんびりと楽しみました♪
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール、私も大好きな画家のひとりです。(^_^)/
by りゅう (2007-11-02 20:09) 

サンフランシスコ人

ロサンゼルス美術館(LACMA)のラ・トゥールの絵画は出品されていませんでしたか?

すばらしい作品です。
by サンフランシスコ人 (2007-11-09 03:07) 

りゅう

>サンフランシスコ人さん、コメントありがとうございます(^o^)丿
残念ながらロサンゼルスのものは・・・(T_T)シクシク
質の高い素晴らしい展覧会でした!(^_^)/
by りゅう (2007-11-09 21:54) 

サンフランシスコ人

サンフランシスコ美術館には、ラ・トゥールの絵画が2点展示されています。
by サンフランシスコ人 (2007-11-13 10:32) 

りゅう

>サンフランシスコ人さん、コメントありがとうございます(^o^)丿
図録をチェックしたところ、《老人》と《老女》が掲載されていました。
いずれもこの展覧会には出品されていませんでした。。。
by りゅう (2007-11-13 21:06) 

サンフランシスコ人

クリーブランドのラ・トゥールは必見です。
by サンフランシスコ人 (2007-11-18 03:48) 

りゅう

>サンフランシスコ人さん、コメントありがとうございます(^o^)丿
クリーブランドの作品、来てましたよ~O(≧∇≦)O イエイ!!
by りゅう (2007-11-18 16:42) 

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