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小説 『氷壁』

最近まで、井上靖の『氷壁』を読んでいました。
文庫本サイズで600ページ近くあって、なかなか取っつきにくいなぁと思ったんですが、
読み出したら一気でした。非常におもしろかったです。

実際にあったナイロンザイルの切断事件を題材にしているのですが、
人の心情や揺れ動く感情が細やかに、丁寧に表現されています。
一つの事象に対して、一定の人物からの視点でだけでなく、様々な人物の感情が描かれているのが秀逸です。
会話の場面でも、両者がどう思っているかを描いています。
特に、ラストの第十一章は感情の表現に引き込まれました。
一つの『死』に対して、人の受け止め方はそれぞれで、少し自分勝手に解釈されるものだなと。
ただ、その人が自分にとって、本当に大切な人の場合、そうしないとこれから先やっていけないのなかと思いました。

そういった意味でも、単なる山岳小説でなく、文学として確立されている作品です。

『Amazon.co.jp:氷壁:本:井上靖』
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