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『歌わせたい男たち』 [演劇]

はじめてのベニサン・ピット。
正確には「隅田川左岸劇場ベニサン・ピット」。
ベニサンとは紅三。 
紅染め主流の染屋、紅屋三之助が創業者だから、紅三。
この劇場は、もともと紅三のボイラー室だったという。

    
    (紅三)                      (ベニサン・ピット)

『歌わせたい男たち』(作・演出永井愛)をベニサン・ピットで観た。
歌わせたいのは、「君が代」。
歌わせたい男たちとは、「君が代」斉唱時に全員起立を求める管理者たち。
これは、都立高校の卒業式での「君が代」をめぐる物語だ。
こうした重いテーマも、永井さんの手にかかれば、上質な喜劇に生まれ変わる。
永井さんは、笑わせながら、本当は泣いていた。

    
    『歌わせたい男たち』 

人がどういう意見をもっているか、それは態度に表れて初めて、他人に知らされる。
心では反対でも賛成したっていい、反対すると失うものが多いのなら。。。
心とは違う態度をとる自由も、我々には保障されている。
たった40秒の「君が代」斉唱。
40秒起立しないだけで、あなたの人生を台無しにしてはいけない。
あなたが、何を悩み考え、起立したのか、誰にも見えない。
そして、見えないことを誰も責めたりはしない。
だから、起立しましょう、ね。

管理する側の校長が、そう演説する。
校長にも、反対した過去があったから、少なからず説得力がある言葉だ。
本当は、起立しない人間を罰することこそが問題なのだ、などと声高に叫んだりもしない。

...それでもあなたは、心のままに動くのだろうか?

答えを出さずに、芝居は終わった。
答えは、観客にゆだねられた。
歌いたくない男が歌う、『暗い日曜日』が客席に哀しく響いた。

           
       (今朝の陸  朝日に向かって)


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