『労働者Ｍ』

昨日（2月24日）、今年初めての演劇鑑賞になった。
題目は、『労働者Ｍ』（作・演出ケラリーノ・サンドロヴィッチ）。
ちなみにケラリーノ（通称ＫＥＲＡ）は、ナイロン100℃を主宰する、れっきとした日本人である。
このイミシンなタイトルは、ＫＥＲＡがバンドのボーカリストだった時代の曲名から拝借したそうな。

　　　　　　　
　　　　　　　　　　　『労働者Ｍ』パンフレット

まず最初に、ストーリーを解説する人物が登場する。
それによれば、この作品は
①ふたつの物語が交互に、あるいは混在している
　　例えば：そば、うどん、そば、うどん、の展開から、うば、そどん、の展開もある、というような
②セリフやシーンに「欠損」がある
　　例えば：セリフを音を出さないで話すこと（クチパク状態）や、あるべきシーンがない、というような
これら①②を念を押して、幕が上がる。
分かりにくい展開だと強調するためか、これで分からなければ結構だと突き放すためなのか、とにかく、観客を煙に巻く。

ふたつの物語の時代は、《現代》と《近未来》。
現　 代の舞台となるのは：　自殺志願者の悩みを聞きながら、あやしげな商品を売りつける事務所
近未来の舞台となるのは：　自由と引き換えに、粗末な食料と住居を与えられる収容所
「Ｍ」とは、人の名前にちなんでいる。
現　 代では：　事務所の職員全員の頭文字　（牧田・ミミ・黛・ミドリ・目崎・三島・益子）
近未来では：　収容所を管理する、姿なき最高責任者の呼び名　（Ｍ）

回り舞台でそれぞれの物語を区切って見せたかと思うと、やがて混在して行く。
おまけに、刑事、インタビューアー、主婦、土星人といった、謎めいた訪問者が次々にあらわれる。
欠損したセリフは観客にも分かるが、欠損したシーンは果たして、どれなのだろうか？
ふたつの物語は繋がったのだろうか？それとも。。。
ＫＥＲＡによれば
「抽象画やコンテンポラリーダンスにはストーリーを求めない人が、演劇という形になった途端にストーリーを求めます。
理解は演劇の大前提だからです。
けれどそろそろ、分からないことを味わったり、理解するためにさまざまな感覚や思考を駆使する作業が、演劇を観る楽しさに加わってもいいですよね」　（『労働者Ｍ』パンフレットより）
ということになる。

無意味に見えてとんでもなく可笑しいセリフ、笑い飛ばしながら心に残るセリフの数々。。
いつものように、結論は決して明るくはないけれど。
楽しい、3時間半のＫＥＲＡワールドを堪能した。

　　　　　　　
　　　　　　　　　　　会場（シアターコクーン）入口

（お・ま・け）
観客席には、有名人の姿があった。
気がついただけでも、中村勘三郎、高橋克実、片桐はいり、そして草なぎ剛の面々（敬称略）。
特に草なぎクンとは、トイレから出てきたところを、至近距離ですれ違った。
ファンならずとも、心浮き立つ出来事だった。

※　追　記
今回観劇したＫＥＲＡ作品について。
誰も異論がない特徴として
①上演時間が長い　（3時間以上が平均的）
②回り舞台がある　（一つだけでなく二つあったことも）
③スライドを多用する　（映像と音楽そして時には字幕セリフとして使う）
④セリフがすごく面白い　（会話がいちいち可笑しい）
があげられる。
ついでに、個人的な感想を付け加えるなら、
⑤深読みをしなくても良い　（しても良いけど）
⑥ハッピーエンドではない　（暗い結末という訳ではない）
というところ。
男性客が多いのも特徴で、数人だけが大声で笑う、というマニアックなセリフも必ずある。

 

《今日の陸》
今日は、陸にとっても心浮き立つ出来事があった。
愛知県からＭさんご夫妻が、上京された。
ご夫妻とは、ホームページを通して、数年前からお付き合い頂いている。
奇しくも、昨日観たＫＥＲＡ作品と同じく、ご夫妻の頭文字はＭ。
昨日とは、Ｍつながりです？？
東京でのハードスケジュールの中で、時間を工面して陸に会いに来てくださった。
陸は、少しよそゆきの顔をした。

　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　よそゆき

　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　少しよそゆき

　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　それでもまだ少しよそゆき　　　　　　　

コメント 26

よそゆき、っていいなぁ。（笑）
どにもこーにも落ち着かない、そんなキモチかな。
by knacke (2006-02-26 08:04) 

外人の？？と思いきや日本人とは、ケラリーノさん。（ちょっとクラリーノに似てなくもない。すみません。＾＾；）
劇団に詳しくないのですが、お芝居には興味津々です。
わかりにくそ～なところにさらに・・。

陸君、結局最後まで「よそゆき」？？
by (2006-02-26 08:31) 

もろ「有頂天」世代です（^-^）
当時から考えながら観てしまうとワケわからんよーに
なってしまう音楽だったので、右脳で感じ取るいい訓練に
なったかもしれません・・・
しかしつよぽんと至近距離とは・・・浮き立ちますっ！
by (2006-02-26 10:29) 

ケラ演出のお芝居、見てみたいな～って思っていただよ。
なぜならおでもtoucoさんと同じく「有頂天」世代！
バンドの雰囲気もすごい不思議な感じで、おもしろかったっけな～（懐かし）。
by misso (2006-02-26 11:01) 

KERAさんの世界は、難しすぎて私にはわかりません・・・
多分、5回見ても分からないと思う・・（涙）
by (2006-02-26 12:34) 

労働者Ｍ、なんだか星新一の題材でもありそうですね。労働者と云ふ言葉が68年頃を感じます。わかりやすいものがもてはやされる昨今観客に自分の頭で考えて下さいと云ふ意図なんでせう。陸ちゃん、よそゆきですね。初めて見ましたこんな表情、うひゃ。
by わやや (2006-02-26 12:55) 

よそゆき顔の陸君、かわいい♪
ちゃんとお利口さん出来て偉いね～。
うちのあるとなんて。。。　　くぅ。。。。
by ぽちくん (2006-02-26 13:18) 

うわー、ムズかしそうｗ　観る側もそれなりの人じゃないと
楽しめないような、上級者向きの演劇（舞台？）って感じがします。
３時間半って長いのかな？フツーそんなものかな？
陸クンかわいい！特に３枚目の首の辺りがツボです♪
by churin (2006-02-26 19:03) 

陸君のよそ行きの顔に加え
甘えて見せてるようにも　見えましたが？
甘え上手で　ボクはおりこうさんだよってアピール上手
ナニゲニ外面が良い？('-')ﾌﾌ
by (2006-02-26 20:01) 

このお芝居、キャストも豪華ですが、観客も錚々たる顔ぶれだったんですね。
「お・ま・け」の遭遇シーンがうらやましい～。
でも内容は、抽象画の苦手な私にはついていけないかも・・・。
陸くんのよそゆき顔（特に1枚目）、うっとりしてしまいます。
定期入れに入れて持ち歩きたい！
by チヨロギ (2006-02-26 22:41) 

皆さま、ｎｉｃｅ！そしてコメント有難うございます！

☆きむたこちゃん
いつもよりおとなしくて、良い子でしたよ。
陸なりにキンチョーしてたみたい。
帰られた後は、すぐ横になりました　（笑）

☆ｋｕｒｕｍｉちゃん
本当に、クラリーノみたいです。
一般的には、「ケラさん」・「ＫＥＲＡ」、と呼ばれているようですが。
ところで、陸は最後まで、ええかっこ、しておりました。

☆きすさん　ｎｉｃｅ！有難う

☆ｔｏｕｃｏさん
「有頂天」時代のことは、サッパリ分かりません。
ｔｏｕｃｏさんのコメントで教えていただきました。

＞当時から考えながら観てしまうとワケわからんよーになってしまう音楽だった
お芝居も、おんなじ、おんなじ。
考えながら観るとワケ分からん状態に陥ります。
ところで、草なぎクン（つよぽん）さわやかですね～。
自然体でしたよ、でも、オーラが。。。

☆ｍｉｓｓｏちゃん
ｍｉｓｓｏちゃんも「有頂天」世代なんだ。
ｔｏｕｃｏさんとｍｉｓｓｏちゃん、繋がってますね～。

☆サフランさん
そんなこと、そんなことないです。
前説があるから、先入観をもって観れるし、ね。
ただ、一回より二回観る方が分かるとは思うけど。
賛否両論、あるのは確かですが。

☆わややさん
たしかに「労働者」という言い方は、年代物という感じがします。
星新一さんというと、ＳＦチックということでしょうか？
近未来のストーリーもあるから、そうかも知れませんね。
観る側が勝手に考えるのも、楽しいです。

☆ぽちママさん
陸は結構、ええかっこしーなところがあります。
9歳にもなってるしね。
あるとくんは、これから、これからですよ～。

☆ｃｈｕｒｉｎさん　ご訪問有難うございました。
上級者向けなわけはないですよ～、私が観るんですから。
一人が何役も兼ねるので、たしかに混乱するところはありますが、それがまた可笑しいし。
3時間半は長い方です。たいていは2時間ちょっとではないかしら。
でも、長さは感じませんでした。

☆ｔａｎｕｋｉさん
そのとおり、ピンポーンです。
自分をスキな相手は、よく分かるようですね。

☆チヨロギさん
抽象画、とは言い得て妙、ですね。
でも、前説もあるし、分からなくてもいい、って言ってるし、会話はいちいち可笑しいし。。（そういえば、松尾スズキさんはアドリブ連発してました。）
楽しめます。
シアターコクーンでのお芝居はなぜか有名人によく遭遇します。
by 柴犬陸 (2006-02-27 07:37) 

かなり、難しい舞台みたいですねー。。。
でも、興味あります♪(^^)

音楽でも絵でも、なんでもそうなのかもしれないですけど、
人と違う、前衛的なことをやってみた人が、新しいジャンルの第一人者になっていくのかなと思います。
演劇においても、こういう試みもだんだんふえていくのかなー、なんて思いました(^^)

よそゆき陸くん、かわいいです(^^)♪
緊張の面持ちですねー。陸くんは表情豊かですねー☆
by (2006-02-27 15:03) 

ケラマップってチラシ見ただけでも、むずかしそ～と思ってました。
やっぱり、難しそうですね。
克実さん、草彅君といえば、『父帰る』の前売りが始まりましたね。
どうせムリだと思って、チャレンジしなかったのですが････
by 柴壱 (2006-02-27 18:07) 

☆ｆｕｍｉｌｉｎさん　ｎｉｃｅ！有難うございます！

☆ｓａｔｕｋｉさん　ｎｉｃｅ！有難うございます！
考えながら観ると分からなくなってしまうかも、です。
でも、セリフを楽しむことが出来るので、退屈することはありません。
自分なりの解釈で良い、と理解しています。
ＫＥＲＡさんの固定ファンはかなりいると思います。

☆柴壱さん　ｎｉｃｅ！有難うございます！
今回配られたチラシで、『父帰る』のことを知りました。
すでに遅きに失しています。
シアタートラム（225席）だし、草なぎクンだし、チケットはムリでしょうね。
by 柴犬陸 (2006-02-28 00:27) 

なんか、おもしろそうな舞台ですね。わかるようなわからないようなものって、観た後に不思議な感覚が残るのでなんか好きです。と、思えるのはつい最近のことですが・・・
勘三郎が、来てらっしゃったのですか！！近くで会われましたか？私は大ファンで、襲名に駆けつけたひとりです。
by (2006-03-01 16:14) 

すんごい、興味をそそるけど、すーごくマニアックですね。
おもしろそうかも～。

よそゆきの陸、めっちゃかわいいし。
「よそゆき」って犬でもあるんやね～。笑。
by aloeDog (2006-03-01 17:18) 

説明を読んるだけで、頭がこんがらがりそうです。（汗）
陸くんかわいいですね。
よそいきの顔を持つなんて、大人だ。。
by massa (2006-03-01 21:34) 

☆ｆｕｋｕｍｕｓｕｍｅさん　ｎｉｃｅ！を有難うございます！
有名人シートが中段のセンター席に集中しているようでした。
勘三郎さんは、通路側に座って、気さくに近くの方と話されてましたよ。
私の座席より2、3段後ろでした。
そういえば、この劇場での次の演目が、彼の『東海道四谷怪談』ですね。

☆ａｌｏｅＤｏｇさん　ｎｉｃｅ！有難うございます！
マニアックなところもあるけど、セリフの面白さで結構ついていけました。
ところで、陸はＭさんがお帰りになってどっと疲れが出たようでした。
わんこなりに、好かれたいのかしら？

☆ｍａｓｓａさん　ご訪問そしてｎｉｃｅ！有難うございました！
一人で二役以上しますが、衣装も違うので観ている分には、そんなに混乱しないと思いますが、忘れてる場面もあるし、あまり自信はありません。
出来たらもう一度観たかったです。（28日が千秋楽でした）
by 柴犬陸 (2006-03-02 01:17) 

「労働者Ｍ」は、
大槻ケンヂ、ケラ、内田雄一郎がやっていたバンド
空手バカボンの「バカボンの頭脳改革－残酷お子供地獄－」
（1988年　ナゴムレコード　NG-047　LP）に収録されています。
詳しくはこちらで↓
「ケラのこと ： 音楽製品の数々 ： 特別企画とプロデュース」
http://www3.cds.ne.jp/~pear/KR/karabaka.html
タカノヨウコ as ミミナリ さんのサイト「Howling WEB」です。
以下は、ここからの引用ですが、当時、ケラは劇団健康を
立ち上げていましたので、その記念すべき収録版があります。

劇団健康　第1回サウンド公演「出鱈目的」
（2002年08月21日発売　テイチク　TECN-20811　12cmCD）
　　出鱈目的開幕
　　出鱈目都市東京
　　出鱈目彼氏
　　出鱈目的事務室
　　小さな喫茶店
　　出鱈目的希望
　　出鱈目的終宴
キャスト：ケラ，犬山犬子，まつおあきら，立野みちよ，みのすけ，藤田秀世，
　　　　　新村量子，手塚とおる，鈴木リエ，大堀浩一，三宅弘城
ゲスト：クボタアキ，EDDY三柴

この話題を、今日のTBSラジオ「ストリーム」で大槻ケンヂさんが
話していました。
現在放送中の「時効警察」(TV-asahi)の雰囲気がどうも、
ケラっぽいなと思っていたら、やはりケラ、大槻の両氏が
演出に関わっているようです。
http://www.tv-asahi.co.jp/jikou/
by 龍一 (2006-03-02 15:01) 

ナイロン100℃、一度見てみたいのですが、なかなか機会がありません。
もちろん私も有頂天世代です。
by (2006-03-02 19:14) 

☆龍一さん　情報有難う！
『時効警察』にＫＥＲＡさんがかかわっていたとは。。
ＫＥＲＡっぽいといえばそうかな？

☆ｃａｌｃａｍさん　ｎｉｃｅ！有難うございます！
有頂天世代がソネブロには多いみたい。
ナイロンの芝居は、本多劇場（東京）が中心ですが、最近は地方公演もこなしてるようです。機会があったらぜひ、ぜひ。
by 柴犬陸 (2006-03-03 16:41) 

　わたしは結構「難解もの」好きだったりします。ひとが読んでいて頭が痛くなるようなものをよく読みます（笑）演劇では「頃合いというか演出というか構成」が難しいと思いますが、柴犬陸さんのレポを見る限り成功しているようです。この反対に誰にでも理解できる作品も好きです。でも誰にでも理解できて誰でも親しめるというのはとても難しい高等技術だと思っており、難解ものよりむしろ難しい作業を強いられるのではないかと思います。
　でも、レポを見て『労働者Ｍ』に興味が湧きました。
by U3 (2006-03-07 11:17) 

☆ブラウンパパさん
ご訪問そしてｎｉｃｅ！有難うございます！
私は、ＫＥＲＡ作品を深くつきとめて観ないようにしているせいか、それほど難解だとは思わないのですが、まとまりがない、と思われるむきもあるようです。
たしかにそうかも知れません。
実際、この『労働者Ｍ』は、彼にしては評価が低かったようです。
読んではいませんが、酷評したマスコミもあったとのこと。
彼の作品の常連客にとっては、シアターコクーンも9000円（Ｓ席）という価格も、どうもしっくりこないものだったようで、前説ではさかんに、このことも触れていました。ＫＥＲＡ自身が気にしているのでしょう。
コクーンで芝居を打てるほどに、メジャーになったということでもありますが。
彼の次回の公演は本多劇場で、5800円です。
金額ではないけれど、金額分だけの内容を要求されるのも事実ですね。
ブラウンパパさんがおっしゃるように、誰にでも分かって誰にでも親しめる芝居というのは、本当に難しいことですね。
ＫＥＲＡ作品に興味を抱いていただけたら、幸いです。
わたしには、『労働者Ｍ』充分楽しめました。
by 柴犬陸 (2006-03-07 15:41) 

難解で迷路のようなストーリー、
観る人それぞれで抱く感情はもしかしたら違うのでしょうけれども
スポットライトの下で繰り広げられるＫＥＲＡ作品は
記事を拝見する限りとても素晴らしかったようですね♪
生のお芝居は体験した人でしか分からない力強さがありますよねーー
役者の方々のパワーは一体どこから出ているのか
舞台を見るたびに圧倒＆感動の嵐です！

少しよそいきでも
陸くん、お姉さんにお顔をうずめていますね♪
by nico☆ (2006-03-13 09:11) 

☆ｒｉｋｏさん　ｎｉｃｅ！有難うございます！
ｒｉｋｏさんもお芝居好きとお見受けしました。
どんなに難解と思えても（実はそうでもなかったけど）、自分なりのポイントが見つけられたら、楽しめますよね。
4月にもＫＥＲＡ作品を観劇の予定です。
by 柴犬陸 (2006-03-14 00:43) 

☆おぺさん
nice！有難うございます
by 柴犬陸 (2006-04-26 19:08)