公開記念「ホテル・ルワンダ」映画+シンポジウム観覧記1(映画編) [映画レビュー※ネタバレ注意]
かなり遅くなりましたが、1月6日に行われましたホテルルワンダ試写会ならびに映画のモデルとなったポール・ルセサバギナ氏を招いたシンポジウムの模様についてルポします。
今回のシンポジウムはピースビルダーズ・カンパニーが主催し、映画上映後、ポール・ルセサバギナ氏を交えてシンポジウムを行うというプログラムとなっている。入り口にてパンフレットをいただき、会場へ入場。結構人が多く、会場は8割ぐらい埋まっていた。
予定時間あたりに、司会者登場。ピースビルダーズ・カンパニー代表篠田英朗氏、「ホテル・ルワンダ」日本公開を応援する会代表水木雄太氏の挨拶後、上映される。上映後20分ほどの休憩を挟んでポール・ルセサバギナ氏、(名著「カラシニコフ」の作者である)朝日新聞編集委員松本仁一氏、アジア経済研究所アフリカ研究グループ長武内進一氏を交えたパネルディスカッションを行うというのが本日の流れである。
こちらがピースビルダーズ・カンパニー代表篠田英朗氏。さすが挨拶はお上手でした。ピースビルダーズ・カンパニーは紛争後地域における平和構築活動を軸に展開しており、安直な分け方で言えばばりばりの左といえる。(その区分に意味があるかどうかはおいておいて)それは後でよく思い知らされるのだが。閑話休題。
この方がホテル・ルワンダを日本で公開させた原動力となったといっても過言ではない水木雄太氏。たぶんに緊張してらっしゃるのか、ちょっと落ち着きのない壇上の様子が気になった。先ほどの篠田英朗氏の落ち着きっぷりと好対照となっている。まあ慣れですよなれ。
映画がはじまる。
内容についてここではくわしく触れない。既にいろいろなところでながれているだろうし。知らなかったら詳細はコチラで確認して欲しい。そしてできるならば実際に映画館へ足を運んで自分の目で「4月のある日にそこでなにが起こったのか」を確かめて欲しい。ルワンダはフツ族によるツチ族虐殺により3ヶ月間で80万人~100万人にのぼる人々が命を落とした。(ルワンダの人口は2004年現在で約841万人)この物語はその狂気の中で、自らは多数派フツ族に属しながらも、家族を守ろうと決意し結果1268人もの人々を救うことととなったミル・コリンホテル元副総支配人ポール・ルセサバギナの格闘と家族愛の物語である。
最初はツチ族虐殺を示唆する露骨な民族主義(フツ・パワーと呼ばれる)の台頭に心を痛めながらも、まさか現実になるとは考えていなかった主人公。姉夫婦が情報を得て“これは現実になるから今のウチに逃げよう”と意見するが耳を貸さなかった。ある意味インテリ・知識階級であるがゆえの現状認識の甘さが描かれていた。だが彼は実際にコトがおきると、見て見ぬふりを決め込んだりはせず、ホテルマンとして白人社会でのし上がってきた実力をいかんなく発揮し、賄賂・ハッタリ・脅しなどあらゆる手段を駆使して虐殺者たちに立ち向かう。圧巻は、国連による介入軍の到着を待ちながら、国連は単に外国人居住者を引き上げさせPKFも特に増員もせず、結局ルワンダを事実上見殺しにした部分の描写だ。黒人たちを尻目に白人たちは自国の軍隊が用意したバスに乗り込む。現地人たちはそれをただ見守るのみだ。雨が降る。その中を白人宣教師に手を引かれた現地の孤児たちがやってくる。だが約束の地へいくバスに乗れるのは白人宣教師達だ。激しく降る雨の中、ポールたちは彼らが去っていくのを見つめる。絶望と安直に言ってしまうにはあまりにも言葉が軽いシークエンスだった。
映画は結末がつくけれども、現実は決してそうではない。この映画を見て、アフリカになにができるのかと考えることはたやすいが、それはある種の思考停止状態といえる。なぜならば、ではそこでアナタは今までアフリカのナニを知っていたのかと問われて、果たして答えられるのか。アフリカの歴史についてどれほど学んだのか。あるいは冷戦下においてソ連などの東側諸国がアフリカに及ぼした影響についてどれほど理解しているのか。それらの問題についてまず触れなればアフリカの現状を考える端緒に到達したともいえないのだ。白いバンドを買っただけではアフリカ・アジアの貧困についてなにも知ったことにならないのと同じように。
この映画をみることは非常に重要である。そしてそれと同じくらい重要なのは、今後アフリカ諸国、あるいは旧冷戦下の社会構造について多少なりとも知識を得ることではないだろうか。カラシニコフは旧ソ連が開発したモノだが現在それはどこが生産し、誰が使わされているのか。そういった国際社会構造における負の側面について考えることだと私は思う。
最後に、全く許せない出来事を二つほどあげたい。それはこの試写会に来ていた人間のマナーの悪さだ。私の隣に座っていた30ぐらいの男性は、映画のクライマックス場面で携帯を取り出しパッカパッカご開帳してくださった。こっちは集中できずいらいらしっぱなし。おまけに妙な臭いがするなと思いきや、映画終了後ふとその男性を見れば、靴を脱ぎ椅子の上であぐらをかいていた。まったく信じられない。こういう人間がこの映画を見てアフリカを救わねばなどと発言したら私は即座にぶん殴っていたと思う。そして試写会途中に来て終わる前に退場し、シンポジウム途中に来て、終わる前に帰ったりといった謎の行動を繰り返した若い女性たち。なんだかな。見たことで自己満足する前にもうちょっとなにかやりようがなかったのかと思った。(シンポジウムの内容については『ルセサバギナ氏講演編』『パネルディスカッション編』へと続く)
ちなみに頂いたパンフレット
表紙
中
裏表紙
TBありがとうございます☆TBが2つついてしまったので削除してください。
お手数かけてすみませんm(__)m
このシンポジウム行きたかったんです。世界中でさまざまな紛争や虐殺があり
知らないことがたくさんあると知りとても怖くなりました。
by Ren (2006-01-15 20:47)
>Renさま
はじめまして。ようこそお越しくださいました。
TBについてはこちらで処理しておきます。ご安心ください。
シンポジウムの模様についてはこのあとに記載します。
世界中で今この瞬間も多数の人間が殺し合い死んでいっている現状を考えると暗澹たる気持ちになります。でも知ることで少しずつでも変わるかもしれない。そう思ってこの映画の上映をこんな拙い私のブログでも支持してきました。わたしもまた見に行きます。みんな見てくれるといいですね…。
by 瑠璃子 (2006-01-16 01:01)
TBありがとうございます。
最後に書いてある「許せない出来事」。これは本当に許せないですね!
by norinori27 (2006-01-16 13:32)
私も居ました会場に。多分不審な行動の女性達は、一部にお手伝いの会場係をしたらしたボランティアスタッフではないかと…。しかしその男性は許せませんな。
あと別のほうのですが、never とagainでしたよ。
by sela (2006-01-16 17:22)
>norinori27さま
はじめまして。ようこそお越しくださいました。
なんだか映画を見る準備ができていない方が若干名おられたようで。まあ私が遭遇したのは特殊ケースだと思うんですけれども。
>selaさま
はじめまして。ようこそお越しくださいました!
なぜか現在ライブドアへTBが送れないようでして、あちらに書き込ませて頂きました。
ご指摘頂いた
>一部にお手伝いの会場係をしたらしたボランティアスタッフではないかと…
の件ですが、詳しくはパネルディスカッション編に書く予定です。
たまたま不審な行動をしていた女性達は私の近くにいたのですが、パネルディスカッション中に爆睡しておられたんですね。かなり前方の席だったので非常に気になりました。そんな不心得な方はボランティアの方にはいらっしゃらないと思ってます。ただこういったケースは私がたまたま遭遇しただけだと思うんですよね。皆さんきちんと見、聞いてらしたと思います。
neverとageinの件、ありがとうございました。訂正致します。ご指摘感謝です。
by 瑠璃子 (2006-01-16 19:02)
Ixtapa(イクスパ)と申します。TBを有難ういました。日本で上映されるようになった過程などは一切知らず、予告編を観ただけで、「これは絶対観よう」と思いました。
日本はこんなに平和なのに、世界中では戦争やら、民族紛争などが常にあることを思い知らされます。TAIMEの2005度に話題になっ写真やら観ると、いかに戦争や紛争の多いことかわかります。
たまには仕事を早く切り上げて、レイトショーでいいので観に行きたいと思ってます。
by Ixtapa (2006-01-16 23:55)
はじめまして☆
この映画に興味を持っている者です。
やっぱ改めて観たいなぁと思いました。
by dandelion_boc_lily (2006-01-19 15:40)
> Ixtapa さま
はじめまして。ようこそお越しくださいました。
確かに戦争は今このときも起こっているでしょうし、民族浄化を旗印に掲げ闘争が繰り広げられる日々です。その事実に忘れがちですが、目を向けるためにもこういう映画をみるべきだと私は思います。もし鑑賞されて感想を書かれたら是非TBください。お待ちしてます。
>りりぃさま
はじめまして。ようこそお越しくださいました。
この映画をみることオススメします。つらい現実ですが見て考えることもたまには必要だと思ってます。感想をかかれたらTBください。おまちしてますー。
by 瑠璃子 (2006-01-19 22:10)
こんにちは,TBさせていただきました。
これほどの映画が未公開に終わらなくて本当に良かったです。
本物のポール氏のお話興味深かった。
少しでも多くの人に観てもらいたいですね。
by ノラネコ (2006-01-26 12:13)
的確なレビューに脱帽しました。この映画、本当にいい映画ですね。隣のおばさんが終始ハンカチで涙をぬぐっておりました。わたしはショックで涙はかえって出ませんでしたが。
わたし自身は思考停止に陥るグループに所属すると思うんですが、アフリカについてもう少し知っていこうと思います。
by ジョー・N (2006-01-29 10:57)
こんばんは!
TBありがとうございます。
私もしばらく思考停止でした。
あまりにショックで友人とほぼ無言で渋谷駅まで歩きましたよ。
アフリカのごく一部だと思いますが、観て知ることができて良かった。
上映に関して動いてくださった方々に感謝です。
by sicca (2006-02-27 22:27)
((( イスラームを知る )))
http://alslamjp.blogspot.com/
http://acquaintedwithislam.maktoobblog.com/jp/
by عبدلله (2010-07-13 05:09)