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松下電器が作った二つのイデオロギー装置 [メディア・出版・アート]

 「しんぶん赤旗」の24日のテレビ・ラジオ欄が,またしても「水戸黄門」を持ち上げた.第35部の開始に向けての提灯記事だ.このドラマが「道徳ポルノ」として,量り知れない「テレビの中高年への悪影響」をもたらしていると,以前の記事で述べた.そのような番組を同紙が持ち上げるのは残念だ.

 この番組が,権力依存精神を吹き込み洗脳する文化装置であるとの問題点を指摘して来たが,水戸光圀の史実との関係でも大いに問題がありそうだ.そこでインスタント歴史家になり,水戸光圀と水戸藩についての本を,ほんの2,3冊眺めてみた.すると,どうやら黄門さまは名君とは程遠く,逆にどうしようもない暗君であったようだ.TVドラマの視聴者は,諸国漫遊がフィクションであることは承知の上だからこの点は害はないだろうが,黄門がまさか悪人と言うべきキャラクターの人物であるとは思わないだろうから,これに関しては「歴史の偽造」に限りなく近い.国内の,一つの藩の,しかも中世という遠い過去のことだから,と軽んじる訳にはいかないだろう.

 その暗君ぶりだが,木村哲人の,そのタイトルも「水戸黄門は“悪人”だった」*という本によると,なんと小泉にかなり似た点があるのだ.藩の赤字の増大,改革者を気取ったパフォーマンス,他藩に比べて重い年貢,独断専行で人の意見を聞かない,などなど.特にパフォーマンスは,それが地元では反発されているという実態を知らない江戸の市民の人気を得て,名君伝説が生まれたらしい.

 ところで,この永年ドラマは,朝日新聞91年9月20日の「ペーパーテレビ」欄によると,松下電器の宣伝部の,逸見稔という人(故人)が発案したとのことだ.さらに,「22年間の平均視聴率が28.3%.40%を超えること22回」とある.このことからも,現在の中高年層に巨大な影響を及ぼしたことは明かだろう.

 民主党の新しい党首の前原氏は松下政経塾の出身である.水戸黄門ドラマと松下政経塾,松下電器が作ったこれら二つのイデオロギー装置は,上と下から,この国の保守反動化への作用を及ぼし続けている.

* 第三書館,2002年.末尾には25件の参考資料が挙げられている.
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追記 ひも解いた本の一つを見ると,どうやらこの国には膨大な数の一揆があるようだ.だれかその件数を数えた人がいるだろうか.本多勝一氏は,相変わらず「ヒツジ遺伝子説」を言い張っているようだ.しかしこの一揆の数の多さを考えると腑に落ちない.明治あたりで集団的突然変異が起こったのか?それとも一揆衆は皆殺しにされて「狼遺伝子」が残らなかったということなのか?

関連記事,文章
以前の記事:「水戸黄門ドラマ道徳ポルノ説」について
「しんぶん赤旗」が依然として「水戸黄門」を持ち上げ
「脳内リベラル」からの脱却
国立大の独立行政法人化・教育基本法・水戸黄門

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