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歯科治療と価格2 [歯の話]

前回「歯科治療と価格」についてその特殊性を述べました。今回は保険診療について考えます。

歯が悪くなっっていよいよ歯医者さんに行かなければ・・・という時、皆さんが思うことは「前回治療したのにまた?回数がかかって、費用もかかるし・・・」ではないでしょうか。 近年、国家の財政危機により医療費の抑制政策がとられていますが、日本の歯科治療費は高いのでしょうか?そんなに日本の歯医者は儲けているのでしょうか?どのように歯医者さんとかかわるのがコストパホーマンスがいいでしょう? 

 根管治療(歯の根の治療)などは日本では6000円程度ですが欧米では5~10倍、クラウン(金属のかぶせ物)も日本では約9000円ですが高福祉国家で有名なスウェーデンでも42000円、日本が市場原理主義で目標にしている米国でも65000円~130000円もします。(日本歯科医師会HPより参照)つまり歯科治療費は先進国の中で日本は破格の安さで提供できているのです。

例えば年に何回も海外旅行に行ったり、ブランド品を買っても、歯にはお金をかけたくないヒトなどにしてみれば、保険の治療でも高いとおっしゃるかもしれません。安いか高いかはそれぞれの方の健康観や価値観の問題で人それぞれと思いますが、住人は海外に比べると日本の治療は安いと思います。(海外と比較して良質かどうかは別ですが・・・)

高野山の朝

 

しかも昨年より明細のわかる領収書の発行が義務ずけられましたが、医科と歯科で領収書をもらったことのある方は比べてみてください。初診料や再診療が歯科では医科ほどかかっていないはずです。お医者さんの能力の高さは否定しませんが、歯科では感染防止のために器具の滅菌や消毒にかなりコストがかかっていますが、まったく考慮されていません。このことは歯科医師の政治力の弱さの問題ですが、なぜ歯科と医科で初診料や再診料が異なるのかその理論背景はあいまいなままです。

 それではなぜそんなに安くできているのでしょう。費用の高い安いを議論するときに考えないといけないことはいくつかあります。

1、コストの中に安全性やサービスなどが含まれているかどうか。

わかりやすい例としては 商品で国産?vs中国製? 日本人の安全性やサービスに対する要求は日々高まっています。中国製の食品や商品が安いのは人件費はもちろん安全性などへの対策コストが入っていないからでしょう。皆さんがさらなる安全性やサービス(病院がきれい、説明に時間をかける、スタッフが多くて待たなくてよい、・・・)を求めるならスタッフ増員や設備にコストをかけないといけません。このコストを保険診療の中では国は見てくれてません。すべて歯科医師の手出しです。

2、物としての値段だけでなく、どれくらいの知識や技術が詰め込まれた商品なのか。

わかりやすい例としては 高級腕時計?Vs偽物の腕時計? 現在の歯科の費用は 昔1割だったのが3割負担になったり患者さんの負担は増えていますが、総額そのものは理屈ぬきで削減されています。そしてその治療内容というのは実は何十年も前からある治療法であり、新しい治療法はほとんど保険で認められていません。今後も医療費は削減方向でしょうから、新しい治療法が保険に導入されることはまずないでしょう。そういう意味ではどんどん時代遅れでしかも安っぽい腕時計になりつつあります。

3、最後に教育や医療という分野がそもそも「高い」、「安い」といった市場原理主義(市場原理で商品の値段が決まる)がなじむ分野かどうかです。 住人は医療と教育にコストという考えを持ち込むべきでないと考えます。

歯科治療において「手間ひま」かければ結果のよい治療ができることは前回説明しましたが、このことは教育と同じです。そして、市場原理が入ってくると当然よい治療法は高額でお金の払えないヒトは受けられないということになります。

以上を考えても日本の皆保険制度は多少「安かろう悪かろう」の部分もありますが、決して高くなく、きわめて良好な制度だったと思います。だったと過去形なのは改めて産科医不足の例を出すまでもなく、郵政民営化とおなじ政治の流れの中でどんどん劣化していっているからです。5~6年前に住人が「今に老人医療費は高くなるので今のうちにきちっと治療しておいたほうがいいですよ。」とアドバイスして、聞き入れてくだっさった患者さんからは「あの時きちっと治療しておいてよかった」と今になって本当に感謝されています。 現在、まじめな技工士さんや衛生士さんは技術や努力の割にはまったく報われていません。歯科治療がこの安さで成り立っているとしたら、それはこのような人たちの犠牲の上に成り立っています。歯科医がひとりで儲けているのかというとそうでもありません。昔から多くのまじめな歯科医師は保険の料金の中でその範囲を超えたよい治療(たとえよい治療であっても法的にはしてはいけないことになっている)を行い(当然不採算ですが)それでもなんとか食っていけていました。これは政治主導でなく、欧米並みの理想的なよい治療を提供したいと考える歯科医師の想いがそうさせていたのです。しかしながら現在の法的な締め付けと医療費抑制政策の中ではそのようなよい治療を行うことをあきらめる歯科医が増えてきました。そして時代の風潮が、簡単な(しかも採算に合う)治療を早く、安く、スマートにおこなう歯科医が一般人からの受けもよいので、隠れ重症患者が増えているのが現実です。保険診療というのは皆さんの税金の中から7割の費用が給付されていますので、税金から多くの予算が歯科の健康保険の予算に向けられれば、高い技術やサービスが可能となります。つまり皆さんが保健医療の充実を希望して、政治を動かせば変わる可能性があります。しかし、個人の患者さんや歯科医師のレベルでグズグズ言っても変えられるものではありません。

 話を元に戻しますが、現在の日本の医療制度の中で、軽症の疾患であれば保険診療の中で十分よい治療が可能でありその費用は他国と比べても十分安いものであるといえます。


[結論]
そこで、現在のところ個人でできるだけ歯科の医療費を抑えるための上手な歯医者さんのかかり方は
健康なうちに予防に費用をかけて、悪くなったら早めにキチット治療をする。
めんどくさい話ですが、自分のお口の全体としての問題点を説明してもらい把握したうえで、どのように治療するか考える。少なくとも「治療のメリットデメリット」を歯科医に説明してもらい納得した上で治療に取り掛かりましょう。保険診療の中でもさまざまな治療オプション(治療費が安いものから高いものまで)があります。問題点を残したままで予防に費用をかけても報われない場合もあります。
悪いところを治療した上で、予防にコストをかけると健康が維持できるうえにトータルコストは安くなります。
億劫がらずに、まずは健康なうちに歯医者さんでお口のクリーニング(PMTC)をしてもらいましょう。
近いからというような理由でなく、信頼できる歯医者さんにかかることが大切なのはいうまでもありません。

参考文献
歯科治療と価格 

世の中のからくりについて考える 

お勧めの一冊No5 小松秀樹 医療の限界 へ

2009/5/28 追記 医療においてビジネスモデルは成立しない

国民皆保険制度のしくみと国民皆保険制度崩壊の危機


タグ:価格 歯科
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