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9回目の「おめでとう」 [にゃんぐるズ]

1997年、8月27日早朝。
玄関先に、生まれたての仔猫が落ちていました。
それも4匹。

真夏にしてはずいぶん寒い朝でした。

外にてんてんと散らばったその子たちは、濡れそぼって冷え切っていたばかりか、
身体のいたるところに小さなかみキズがあり、
どうやら母猫に産み捨てられた様子。
あわてて獣医さんに電話をしたのですが、
「あー、それもう助かりませんよ。処分する施設の電話番号教えましょうか?」
と、なんとも冷たい返事…
身体をあたため、ミルクを含ませてみたけれど、
願い届かず、弱ったその子たちはあっという間に天に召されてゆきました。

ところが。

たったひとりだけ、生き残った子がいたのです。

その子だけ、無傷だったことが幸いしたのでしょう。
胎盤がついていたことからも、おそらく最後に生まれたのだろうということが
うかがえました。

この子だけでも、なんとか生き延びて欲しい。
お兄ちゃんやお姉ちゃんたちの分まで、頑張ってほしい。

でも、生き残ったものの体力のないその子は、
ほ乳瓶でミルクを含ませても力無く鼻から逆流させてしまう状態。
窒息しないよう、鼻腔にたまったミルクを口で吸い出し、
根気よく、少しずつ飲ませます。

時間をかけ、ようやく、おなかがふくらむところまで飲ませることができました。
せめて1日でも長く、生きてくれるといいけれど…
そんなことを話しながら、カイロをしきつめた小箱に入れ、
家族交代の24時間体制で見守ります。

そんな日が続き…



気がつくと、1週間が経過。
小さくてネズミのようだった身体が、どんどん大きくなってきました。

「なんだか、見るたびに大きくなるね…」
「よし! ムクムク大きくなるからむくと名付けよう!
 ほら(股間を差して)この子タマがあるし、男の子だし」

というわけで、母命名。
単純きわまりないネーミングですが、率直な思いがこめられた名前でした。

(後に母が主張した「タマ」はただの模様の具合で、
 実は女の子だったことが判明し、
 彼女は男の子のような名前を背負うはめになりますが、
 それはまた別の話ということで…)

むくはその命名通り、毎日たらふくミルクを飲んでむくむく大きくなりました。
目が開き、箱から出たがるようになったのもこの頃。
先住猫のみんなも、このちびっこい新顔を気にして、
何かと構ってくれたものでした。

やがて、生後2ヶ月近く経つ頃には、

まだまだ、ほ乳瓶を見ると突進してくる甘えん坊だと思っていたのに、

いつの間にか、先住猫のみんなに混じってドライフードをポリポリ。
1日1日、薄氷を踏むような思いで見守っていた子は、
たくましく離乳も済ませてしまったのでした。

そして2年後。
私が東京へとヨメに行った直後、母から電話がありました。

「むくが、アンタがいなくなってから毎晩、
 玄関のドアを見て哀しそうに泣きわめくのよ」

その言葉にいても立ってもいられなくなり、
むくを東京の我が家に連れてくることになりました。

「どーもアンタのことを『お母さん』だと思ってるみたいなのよね〜。
 まったく、みんなで育てたのに…」

ブツブツ文句を言う母のかたわらで感動の再会を果たし、
むくはひなとともに上京。
そして、本日、9回目のバースデー。

ちなみに、今日むくがやらかしたことリスト。

・ウォークインクローゼットの中に潜り込み、出られなくなって泣きわめく
・末猫「あや」のゴハンを奪って食べる
・オヤツの入った容器をこっそり狙ったつもりが、ひっくり返してバレ、
 走って逃げる

…まったくもう。

仔猫の時に自分が悲惨な状況だったことを、もちろんこの子は覚えていません。
実に気ままでワガママで、いまだに抱っこをねだってばかりいて、
元気ハツラツ、快眠快食、ヤキモチ焼きの大甘えん坊。

ただ、生い立ちが生い立ちだけに、
毎年この日が来るたび、私も実家の家族も、
あの夏の日の光景と、この子が年を重ねていくことへの感謝を感じずには
いられないのです。

誕生日おめでとう、むっちゃん。
ちびの時にいっぱい苦労したけど、その分いっぱいシアワセになれますように。
大好きなカマボコで、お祝いしようね。


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tabbycat

むくちゃん、お誕生日本当に本当におめでとう。
亡くなってしまった兄弟たちの分まで
たくさんたくさん長生きしてね♪
何だか目頭がつぅーんとしてしまったです。
苦労して育てた分カワイさもひとしおですね。(^_^)
by tabbycat (2006-08-27 19:22) 

のりりん

読んでいて、思わず目頭が熱くなってしまいました。
むくちゃんに、そんな生い立ちがあったなんて…。
ぴーさんのご実家の皆さんの優しい気持ちが、小さい命をすくったのですね。
私も、学生時代、アパートに住み着く様になった猫が、押し入れの中で出産してしまったことがあるのです。5匹生まれて、1匹は死産、4匹は、その後、母親がせっせと毎日育ててました。子猫は、しばらくうちで育った後、必死で里親を探して無事もらわれていきました。あの時の母猫も、うちにいなかったら、野良猫で育てられないから、どこかで産み落としていたのかなーと、久しぶりに昔の思い出にひたってしまいました。
むくちゃん、今ではこんな美人さんに♪
むくちゃん、お誕生日、本当におめでとう!!これからもずっと可愛がってもらってね♪
by のりりん (2006-08-27 20:23) 

ぴー

むくへのお祝いコメント、ありがとうございます。
拾われた当初は、明日もつか、もたないか…と危ぶまれた子だったのに、
こうしていろんな方からお祝いの言葉をいただけるなんて!
つくづく、運の太い子だ…

>tabbycatさん
お久しぶりです〜。共感していただけてうれしいです。
人同士の出会いと同じく、猫との出会いも必然ですよね。
むくはこういう経緯だけに、誕生日が来るとしみじみしてしまいますけど、
他の子たちも、それぞれ縁あってうちにやってきたんだな〜と思うと
どの子にもなんかこみ上げるものがあります。
tabbycatさんちのにゃんこさんたちも、その他のにゃんこさんたちも、
元気で楽しく暮らせますように。

>のりりんさん
そうなんですよ、ワガママ放題&お姫サマなむくですが、実は結構
ヘビーな過去でして… ただ、本人はそんなことを知る由がないうえに
たぶん自分のことを箱入りのお嬢だと思っているフシがありますけど(笑)
うちの妹曰く「間違いなく、我が家で最強の運の持ち主だよね!」

のりりんさんも、里親捜しに奔走されたことがあるんですか、
もらい先が見つかってほんとに良かったです。
いい話だ〜。そういう話を聞くと、心底嬉しくなりますよね。
by ぴー (2006-08-28 00:27) 

海莉

お誕生日おめでとう!

全米が泣いた・゚・(ノД`)・゚・。
by 海莉 (2006-08-28 03:26) 

ぴー

お祝いありがと〜。
全米が泣いた? 「子ぎつねヘレン」に迫れる?
ちょっとスピルバーグに相談してくるー!(笑)
by ぴー (2006-08-28 21:13) 

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