「暁のローマ」出演者について [┣宝塚観劇]
「暁のローマ」という芝居について書くとすれば、99%が脚本家への苦言になりそうなので、それは公演が終わる頃に書きたい。
(じゃないと、営業妨害になってしまいそう)
ということで、今回のテーマは「出演者」について。
出演者は、初日明けた段階で、かなり高いレベルに到達していた。
もうほとんど出来上がっている、と言っていい。
ムラのラストがどういう出来だったかは、知らないのだが、私が最後に観た時(たしか、6月11日だったかな?)より、確実に全体のレベルが高くなった状態で東宝はスタートしている。
ムラ終わってすぐ東宝初日という流れは、出演者にとってはキツいかもしれないが、千秋楽が終わった最高の状態からスタートとなるので、確実に作品のレベルは高くなると思う。
まず、影の主役、ローマ市民たちのコーラスが圧巻だ。
研1さんの参加も大きかったと思うが、「エリザベート」を経て、歌詞をしっかり伝える歌唱ができてきたところに加え、今度はコーラスに厚みと迫力が出た。
また、市民や愛人のモブシーンであっても、個性を出してくる強い月娘たちが、相変わらず、すごくて強い。
次に、カエサル=轟悠だ。
「大物」というアジテーションソングは、「大きいわ、大物よ」という恥ずかしい合いの手により、ムラでは嫌悪の対象でしかなかったが、これが、真剣に聴いていると、「さすが大物の発言は違う」と思えてしまう。
今回の作品では「主演」というよりは、「象徴」に祀り上げられてしまった感の強い轟悠だが、その圧倒的な存在感はさすがだった。
主演コンビは最後にするとして、次はアントニウス=霧矢大夢。
オープニングとエンディングでは、いい人きりやんとして登場するが、アントニウスは決して善人ではない。
人としての器はカシウスと同レベル。保身のためには、カエサルの遺体の前でもブルータスと握手を交わす。
その直後に、人心を掌握し、一人で、ブルータスの演説を覆す。
その歌唱がいい。
これだけの歌を毎日歌い続けるなんて、すごい!と毎度感動している。
ついつい、追い詰められる暗殺者に目が行ってしまう私だが、きりやんの歌はBGMじゃなく、ちゃんと歌詞を聴きとっているし、その的確な表現力には、いつも脱帽させられている。
カシウスは、大空祐飛さんのための役という感じ。そういう役に作ってもらえた&曲も書いてもらえている。これは、ファンとして嬉しいし、また、その期待に応えてもいると思う。(もしかしたら、期待されていないのに、それ以上のものを勝手に作り出しているのかもしれないが、それなら、それで、さらに素晴らしい)
とはいえ、ビジュアル作りに拘りが見えるだけに、流れてしまえば、綺麗なだけの印象になりそうなところを、インパクトのある役にしているなぁ、と。(ファンゆえの印象かな?)
カシウスはクールで時局を適切に判断できる能力を持っているとは思うが、一番の見どころは、そんなカシウスが、ブルータスのために我を忘れて熱くなるところ、だと思う。
前回のショーで、あさこちゃんとのデュエット、声質が合わないなぁ…と、思っていたのが、今回、同質の声でデュエットをしていたので、びっくり!
そして、二人とも「ローオマは、みんなのもの」と歌っているところが、私のツボです。
オクタヴィアヌス=北翔海莉。
ちょっと間抜けな青年…と思わせておいて、カエサルの遺志をしっかり継承する若者。「ローマはわたしのもの」と歌う声には、うっとりする。
今回は、そのまっとうな部分を期待されての配役だと思うので、プラスアルファ抜きのまっすぐな人物として楽しんだ。
これは演出意図かもしれないが、カエサルの遺志を確認する時、一度も遺言状を開かない…というのは、人間心理としてあり得ないのではないか?というところが気になってならない。
ま、とりあえず、組替え後は、もう少し、野心をもって役に向かってほしいな…と思っている。
さて、主演コンビ(ブルータス&ポルキア)=瀬奈じゅん&彩乃かなみ
夫婦そろって、少々、痛々しい役作りになってしまっている。
今回は、かなみちゃんの柔らかな歌声が、エキセントリックにひきつって聞こえるのも気になっていたが、やはり途中で、咽喉の調子が悪くなってしまった。
音域が高すぎるのに強く歌わなきゃならない「男はみんな王になりたい」とかのせいかな?いくらかなみちゃんがシンガーでも、かわいそうだと思っていた。
…と、東京公演が始まって一週間くらいは、とてもつらい芝居だった。
今は、少し変わってきていて、愛されるブルータスと、そのブルータスが愛するポルキア、というやわらかい雰囲気に包まれている。
本当は、「カトーの娘」であるポルキアが、信念を持って夫を後押しする話であるべきなんだろうけど(だからこそ、罪の意識が潜在化して狂うわけですね。マクベス夫人と同じポジション)。
つまり「ポルキアが悪いのよ」(byセルヴィーリア)は真実っていうことなんだけど、それでは、夢がないので、今くらいのオブラートにくるまれている方が、私は好み。
…とまあ、前半の総括をしてみた。
最後には、どんな舞台に変貌しているか、月組の生徒に期待している。
【去年の今日】
星組公演のショーについて。
その前に、地震のことが書いてある。
そうだった。関東地方に大きな地震があった日だった。
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