「嫌われ松子の一生」 [小説]
映画になりますね。だから読みました(流されやすいのです)
モラトリアムなセックスライフを過ごしていた笙(おそらく主人公)の元へ、ある日父親が上京してきます。松子伯母さんが死んだので骨を取りにきたと。松子の存在すらよくわかっていなかった笙。父親は松子のアパートの片付けを命じます。渋々松子のアパートへ赴く笙。隣に住む男にどんな人だったかを尋ねると、「あぁ、嫌われ松子か・・・・」
松子の波乱に満ちた人生が強烈な印象です。
教師になって赴任した学校で教頭からセクハラされそうになり、修学旅行で旅館の売店の売り上げが盗まれたことに端を発し地元にいられなくなります。そして作家の卵と同棲し、風俗に勤めるようになり、挙句に人を殺してしまいます。逃亡先で一人身の床屋の主人と暮らし始めますが、結局警察に捕まり刑務所へ。そこで美容師の資格をとり再起を図りますが、ヤクザの教え子と恋に落ちつつも、彼も刑務所に入ってしまい挙句の果てに捨てられます。生きることに意味を失っていたとき、刑務所時代の仲間から叱咤され、もう一度がんばろうと思った矢先、若者からリンチされ結局息絶えます。
傍からみたら「どうしてそんな人生選ぶの?」的な生き方です。でも人生なんて常に選択の連続。振り返ってみてどんな人生だったか考えるとき、他の人生は選ぶことが出来なかったと今を受け入れるのが普通です。だから他人が「ヒドイ人生」なんていうことは出来ません。それは自分の尺度ですから。
大切なのは真摯に自分と向き合っているか、ではないでしょうか。
松子は愛に飢えています。他人が自分を必要としているならそれが自分にとって一番重要なことなのだと思っているフシがあります。その時点で自分がどうなるかより、必要とされているか。解らなくはないですよね(一人は寂しいですもの)。
最後に自分がやりたいことを見つけ、今までの思考から一歩踏み出そうとした矢先、暴力によってさえぎられてしまう。
笙はそういった松子の(不幸に見える)前向きな生き方に次第に心動かされ、彼女の命を奪った若者たちの暴力に激昂するのです。「お前らを絶対許さないからな!」
世のなかは暴力に満ちています。セクハラだって不当な訴えだって若者のリンチだって暴力です。そんな社会を生きていくことは非常にタフなことです。大なり小なり自分の周りには松子を襲った暴力があふれていると思います。
でも自分に向き合って生きていくこと。そして得るもの。それはお金かもしれない。友情や愛かもしれない。人をだますことかもしれない。でもどんなことでも必死に生きること。そのことは人がとやかく言うことではないのです。
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