「ダック・コール」 [小説]
第4回山本周五郎賞受賞作。最近読む本がないなぁと思って前に読んだこの本を読み返しました。書評とか見ると「稀にみる美しさを持った小説」とかありますが、同感です。
6編の短編からなっているんですが、「狩猟」が書かれているんです。もしくは鳥について。作者自身「狩猟小説」と言っているみたいです。ちなみに「ダックコール」とは鳥笛のことです。バードウォッチングに使われますよね。
小説はよくカテゴライズされます。大きくは「純文学」「大衆文学」。さらに細かくいくと「恋愛小説」だったり「青春小説」「SF」「全体小説」とか。数ある文学賞がけっこうそういう範囲をつくっていると思うんですけどね。個人的にはそういうカテゴライズに興味ないので、読んで自分的に良ければよしです。
でも最近の本はなんかしっくり来ないんですよね。いま大きな流れは「癒し」みたいな感じが。ちょっと感動してしまうストーリー。キライじゃないけれど、食傷気味です。個人的に好きな傾向はやっぱりあります。作家を上げれば話は早いんでしょうけれど言いません!
で、この「ダック・コール」。とても、とても素晴らしい小説だと思います。
「生きる」ということをシンプルに書いています。そこには変な飾りもこじれた人間関係や恋愛関係もなく、ただ物を食べ自然の一部として生きている、自分自身として生きる姿描かれています。
「感動」とか「興奮」とかを求めるならNGですが、こういう小説に出会えることは自分にとってとても大切なことです。宝物のようなものです。
作者の稲見一良は残念ながら故人です。本当に残念なことだと思います。
きっとベストセラーになれなくても素晴らしい小説はたくさんあるんですよね。こういう小説に出会うために読み続けているんです。
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