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Vol.50 ドル安は複合的な悪循環が原因

投資や保険など、お金に関する様々な質問や相談に
幅広い分野のプロフェッショナルがズバリ答えるこのコラム。

今回も前回に引き続き「FXをするなら知っておきたい、
急激な円高ドル安、そのカラクリと対応」
について、
年間150回前後もの講演の他、
テレビや雑誌など様々なメディアで活躍中の
経済アナリスト 田嶋智太郎さんに答えてもらいました。


田嶋智太郎 プロフィール

慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJ証券勤務を経て転身。

金融・経済全般から戦略的な企業経営、
個人の資産形成、資金運用まで幅広い範囲を分析・研究する。

週刊現代など、活字メディアの連載執筆、コメント掲載多数。
数多のWEBサイトで株式、外国為替等のコラム執筆を担当し、
株式・外為ストラテジストとしても高い評価を得ている。

テレビ(テレビ朝日「やじうまプラス」、BS朝日「サンデーオンライン」)や
ラジオ(毎日放送「鋭ちゃんのあさいちラジオ」)などのレギュラー出演を経て、
現在は日経CNBC「マーケットラップ」のレギュラーコメンテータを務める。

主な著書は「財産見直しマニュアル」(ぱる出版)
外貨でトクする本―10ドルから始めよう!」(ダイヤモンド社)など。

オフィシャルHPは http://www.e-minamiaoyama.com/

前回も触れたように、 ドルの対円レート(ドル/円)は'07年6月まで
基本的に上昇トレンド(円安基調)を続け、
1ドル=124円台で天井を打ってからは
下落トレンド(円高基調)に転じました。

周知のとおり、ことの発端は米国のサブプライムローン問題にあり、
その背景には米国の「住宅バブル」がありました。

米国の中央銀行であるFRBは、この住宅バブルと景気の過熱、
インフレ圧力の高まりを抑えるため
'04年6月から'06年6月までの間に
政策金利を1.0%から5.25%にまで
引き上げるという金融政策を実施。

ほどなく、その「効果(=影響)」が現れるのは言わば当然のことで、
結果的に住宅バブルは解消に向かい、住宅価格は下落、
住宅市場は縮小しはじめました。

住宅価格の下落は確実に米国の個人消費を鈍化させ、
米経済の成長も鈍化します。


米国の消費者は、その多くが
「ホームエクイティローン(=住宅担保の借入)」を活用して
手に入れたお金を消費に回していますから、
住宅の担保価値が目減りすると引き出せるお金も減ってしまいます。

米国の国内総生産(GDP)の約7割は
個人消費に支えられているため、
消費が落ち込めばたちどころに経済成長のペースも鈍ります。

経済成長の鈍化が進むと、
最終的には「景気後退期入り」してしまう恐れが高まり、
そのことが最近のドル安の一因となっている
ことは間違いありません。

■信用不安と原油高もドル売り材料

昨今のドル安の要因は複合的なもので、
サブプライムローンの返済遅延率上昇によって
同ローンを裏づけとする各種の証券化商品
(サブプライム関連商品)の価格が急落し、
これを大量に保有している米国の大手金融機関が
巨額の損失を抱える羽目に陥っていることも一つの要因です。

いまだサブプライム関連商品の価格下落には歯止めがかからず
(というより、買い手が現れないため値がつかない)、
金融機関は関連の損失を膨らませています

損失があまりに巨額であるため、
ヘタをすると多くの金融機関の経営が危機的状況に陥る恐れ
(引いては信用不安が高まる恐れ)も・・・。

信用不安の高まりは、
世の中のカネの流れを一気に滞らせることとなります。

具体的には、金融機関の融資姿勢がどんどん厳しくなり、
資金を必要としている企業や個人に、
その資金が行き届かなくなってしまうのです。

結果、経済活動は停滞し、
いよいよ米経済は「景気後退期入り」をより確実なものに・・・。

当然、ドルは売られることとなります。

一方で、昨今は原油価格の高騰が続いています。

その原因の一つは新興諸国の目覚しい経済発展にあり、
結果的に原油高が「自動車社会」である米国の消費者負担を増大させ、
消費の落ち込みに一役買うこととなっています。

また、サブプライム関連商品の価格下落に伴う
米景気後退懸念や米国株の下落、
それに伴うドル安などによって世界のマネーが
複雑でリスクの高い投資先から逃避し、
次々と原油や金などの国際商品にシフトしている
ことも
原油高の一因です。

米景気の後退期入り懸念が高まる 
⇒ 米国債やドルから国際商品にマネーがシフト
 ⇒ 原油価格が高騰
  ⇒ 米国の消費が減退
   ⇒ 米景気は益々悪化
    ⇒ マネーシフト(ドル離れ)が一段と進む・・・
という悪循環の繰り返し。

この悪循環をどこかで断ち切らない限り、
ドルが売られて原油や金などが買われるという流れは止まりません。

■いずれ米景気は底入れから回復へ・・・

blogFIN50.jpg悪循環を断ち切る方策がないわけではありません。

まずは、信用不安の元凶となっている金融機関の経営を安定させることです。

そのために各金融機関が自ら増資にのり出すことを政府や政策当局は求めています。

自力では無理と判断されれば、もはや何らかの形で公的資金が動くしかありません

経営破たん状態に陥った米大手証券ベアー・スターンズに対しては、
すでに事実上、公的資金の後ろ盾がなされました。

場合によっては、過去の実例を参考に
経営破たん状態の金融機関を「国有化」するという手もあります。

また、サブプライムローン関連商品に買い手がつかないのなら、
それを公的資金で買い受けるという方法もあります。

デフレ不況下の日本でも、
最終的には公的資金が金融機関に投入され、
それを契機にデフレは解消に向かいました。

これまで鍋のフチを滑り落ちるように悪化してきた米景気は、
度重なる利下げと減税、公的資金の投入などによって、
いずれ鍋の底に達することでしょう。

しばらくは「低空飛行」が続くものと見られますが、
1~2年もすれば再び回復の兆しが見えてくるはずです。

注意しておかねばならないのは、
必ずしも「米景気回復=ドル買い」ではないということです。

実は、過去の歴史を紐解くと、
米景気が「回復期」を迎えるタイミングというのは
最もドルが売られるタイミング
なのです。

それは、米景気の回復によって先々の利上げ観測が高まると、
利上げによって価格が下がる米国債を売っておこうという動きが強まり、
結果、米国債からの資金流出=ドル売りが生じるからなのです。

今回のポイント!

・円高になるほどFXの魅力は際立つ。

・FXなら「売り」から入って値下がりしたところで利益確定も。

・外国為替市場の懐は実に深い。

・外国為替市場は相場急変時でも確実に売買が成立する。

・米国の個人消費鈍化はドル売り材料。

・信用不安が米景気を一段と悪化させる恐れも。

・原油高⇒ドル離れ⇒原油高の悪循環がおきている。

・米景気の回復時にドルは売られる。


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2008-05-09 11:09  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(2) 
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