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キッシンジャー、2006年大予測(前編) [国際法・国際関係]

1月8日になんとなくTVをつけたら、TV東京にキッシンジャー博士が出ていて、今年の予測なんてものをしてました。

キッシンジャーといえば、ニクソン大統領時代の国務長官にて国際政治の重鎮です。何故TV東京がこんな国際政治上の大物を?とか、色々疑問を抱かないではないですが、とりあえず見てみました。


はじめに簡単な概要。

2005年の米中関係を振り返ると特に具体的な紛争が生じることも無く、その意味で良好であった。2006年に話題に上がるのは、人民元切上げと軍事力拡大だろう。米中関係においては米国が強制を行うことは無い。ただ提案は行う。軍事的には中国とは台湾以外について問題はない。軍事力拡大はこれ程急ではないほうが良いと思うが米国の脅威というほどではない。

1.人民元について

人民元は政治的に安く抑えられており、このことが中国の好況の一因です。米国も中国の景気によって利益を受けています。しかし、中国の対米貿易黒字は1兆$に達するほどになっており、これから問題になるのは明らかです。ただ、切り上げについて、中国は外から言われるのを嫌います。過去の植民地の経験からです。しかし、人民元切り上げは確実であり、なかったらそれは驚きです。

A.安い元による中国の需要拡大が石油上昇を招いているのではないか?

それは人民元の問題だけが原因ではない。世界的に石油需要は高まっており、それに供給が追いついていないことが原因であると思います。私(キッシンジャー)は消費国、特に米国、日本、EU、中国など大消費国は石油の消費を管理するための協定を作るべきであると思います。

A.それでは中国の経済を抑えることになり、中国は参加しないのでは?

中国がこうした協定に参加するのは必要です。しかし、中国は国内事情のために経済拡大をとめることは出来ません。

A.元は基軸通貨となるか?

25年後ならともかく、今はまだ早いです。今は3つの通貨、ドル、ユーロ、円が重要です。ユーロがしばらく強かったですが、EU内の事情のためにユーロの信頼が低下しており、その影響でドルが資産のリスク回避ために重要性を増しています。中国はしばらく通過で米国と争うつもりはありません。台湾問題以外中国は米国の脅威でありません。

2.中国国内問題

中国は今だどの国も経験していないような驚くべき経済成長過程を経験しています。沿岸部は凄まじい発展をしていますが、内陸がまだ発展していません。歴史的に新しい階級が誕生すると彼らは政治活動を望むようになります。中国には金持ち階級が誕生しましたが、まだ彼らは政治的主張を行っていません。「金儲けは許すから政治には口を出すな」という政府の政策がうまくいってますが、こうした政策一時的なものに過ぎず、永久に続くものではないでしょう。現在の国内政治体制は色々いわれてますが、共産党の権力は今だ強固な支配力を有しています。軍部との関係も大きな部分においては問題ありません。

A.中国は分裂するか?

内陸西部でムスリムの活動が活発になっています。彼らは特殊な歴史観をこれまで無かったような激しい行動とともに主張します。しかし、中国政府もこれを理解しています。内陸部の問題もあります。また、オリンピックを成功させたいと考えています。しかし、分裂は、少なくともしばらくは無いと思います。民主化も近いうちには達成されないでしょう。

3.台湾

中国はミサイル、陸海空の軍隊の強化を続けています。これには2つの理由があります。第一に鄧小平が90s以降の改革開放で軍隊を軽視し、経済に集中したことがあります。経済的規模が拡大した現在、彼らはそれに見合った軍事力を持とうと考えています。第二に、中国は歴史的に戦いに負け続け、色々されたという経験があります。彼らは国際社会の協調体制に信頼を置くことができず、自分達で自らの安全を守りたいを考えているのです。中国から見れば周りには巨大な軍事を持つ国家に囲まれているという事実を忘れてはいけません。ロシア、インド、ベトナム、そして日本、これらの国と中国は戦争をしたという歴史があり、しかも多くの場合負けているのです。中国は日本やロシアを恐れています。

現在、中国は国際紛争を解決する手段として軍事力を使わない、という方針を採っています。軍事力が主要な問題となるのは10~15年後くらいではないだろうか。今は経済に集中しています。問題は中国の社会経済の亀裂であり、この問題は周辺国への影響を与えかねない重大なものです。

台湾問題については中国は独立宣言を行うようなことを行わない限り、軍事力を用いることはありません。逆に言えば、独立宣言を行うようなことがあれば軍事力の行使を行うと思われます。中国はオリンピックを成功させたいと考えていますが、だからといってオリンピックまでに台湾が独立を目指す行動をとっても許すつもりはありません。そしてオリンピック成功のためにオリンピックまでに独立を行えば大丈夫と思われるのを警戒しています。米国は台湾で問題が起こればいつでも行動する用意があります。しかし、米国は「一つの中国」政策を採用しており、問題が起こらない限り中国と戦うつもりはないのです。


というのが前半です。長いので続きは次回ということで。のこりは、イラク、北朝鮮、そして今年の10大予測です。


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コメント 3

ずみっち

当たり前なんですけど、やはり専門家の方は当たり前のことは当たり前に知ってて分かってるし、さらにそこから鋭い見解が垣間見えて、自分が考えてたことの薄っぺらさとかが思い知らされますなぁ。
by ずみっち (2006-01-10 02:20) 

mof

 そうですね。キッシンジャーは自分を歴史家だと言っています。
 こういう人から見ると、その日に中国や北朝鮮が何を言ったか、などということに一喜一憂したりしないのでしょうね。これくらい悟ってみたいです。
by mof (2006-01-10 18:23) 

kenta-ok

私も、読んでいて、コメントで彼は自身をhistorianといっていると
書こうとしたところでした。
by kenta-ok (2006-01-12 01:14) 

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