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ある子供/ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ(2006.01.09) [映画・ノンジャンル]

社会派監督(現代で言うとケン・ローチとダルデンヌ兄弟あたりが筆頭だろうか)の映画を微妙に避けてしまうのは、「映画で社会の矛盾や醜さなんて描けるわけないじゃん、ふん」と思ってしまうペシミストぶりに原因があるのだろうれど、『ある子供』を観るまでそれで何か人生損をしたと思ったことはなかったのである。
『息子のまなざし』はその恣意性の高いカメラ位置やカメラワークが、あざといような気がしていま一つ好きにはなれず、たまたまヒッチコックの長回しのことを考えていた関係で、『ある子供』を観ることにしたのだが、意外やこれが気に入ってしまった。『ロゼッタ』を前日に観たせいもあるとは思うのだが、貧しさゆえに(観客にとって)驚くべき行動に出てしまう若い主人公、最後に湧き出る感情や涙、という設定や構成の類似点が気にはなったのだが、私が驚いたのは似ている、同じことを繰り返しているように見える、にも関わらずそれが『ある子供』の足を引っ張っていない点である。
何か苦労を抱えた子どもAちゃんとB君に、実際に逢ったとしたら、誰かに「AちゃんとB君、どっちが好き?」と聞かれても私は答えられないだろう。それと同じような感覚、愛情を私はロゼッタと『ある子供』のブリュノに対して抱いたのであり、そんな感情をフィクションにも関わらず抱かせるということはやはり映画としては成功していると言わざるを得ないのであり、それは「擬似ドキュメンタリー」などという言葉で片付けられる(例えば阿部和重はダルデンヌ兄弟の一連の作品を「映画覚書」の中で「擬似ドキュメンタリー」として批判している)ようなものではないと思う。
まぁ確かにまたパルムドールを与えるカンヌもどうだろうと思わないこともないのだが、『息子のまなざし』はまぁまぁだけど『ロゼッタ』や『ある子供』は擬似ドキュメンタリーしているだけで全然工夫がない、みたいな巷の評には強く抵抗したい気になっている。
そういえば昔、もう20代前半というくらいしか時期も特定できなくなっているが、ドキュメンタリー作品を好んで観ていた時期があった。一番好きだったドキュメンタリーはというと小川伸介の『クリーンセンター訪問記』が浮かぶ。観た時の幸せな気持ちは今でも幽かながら甘く湧き上がってくる、映画が好きで失ったことも多いものの、こういう時は映画が好きで良かったなぁと思う。
ヒッチコックが一段落したら『息子のまなざし』も見直して、『イゴールの約束』も観てみよう。それで昔考えていた(確か流行ってたんだよね)ドキュメンタリーとフィクションの狭間のことでも考えてみるか。


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因幡屋

はじめまして。主に舞台について書いておりますが時々映画も取り上げています。ごく短い印象評ですがTBさせていただきました。
by 因幡屋 (2006-02-12 20:55) 

NO NAME

因幡屋さん、はじめまして。お返事が遅れてごめんなさい。演劇に詳しい方なんですね、私も興味はあるものの何に行ったらいいかよくわからなくて。確か今年ロベール・ルパージュの来日公演があるのでそれは行こうと思っているのですが・・。また時間のある時にブログ拝見させて頂きます。
by NO NAME (2006-02-19 19:19) 

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