SSブログ

『密室キングダム』 柄刀一 [読書]

密室キングダム 

1988年夏、札幌。伝説的な奇術師・吝(やぶさか)一郎の復帰公演が事件の発端だった。次々と連続する、華美で妖艶な不可能犯罪!吝家を覆う殺意の霧は、濃くなるばかり。心臓に持病を抱える、若き推理の天才・南美希風が、悪意に満ちた魔術師の殺人計画に挑む。


大森望さんがラジオで絶賛していたのを聞いて読んでみた。
本格ミステリーを読むのはひさしぶり。
900ページを超えるボリューム、分厚いです。
なんという密室祭り^^;
「アンチ壇上のメフィスト」の絢爛たる殺人現場。
密室殺人が起き、それが解明されるとまたまた密室殺人が発生する。
目次を見ると第五の密室まであることがわかります。
探偵役をつとめるのは心臓に持病がある浪人生、南美希風くん。

内部からの施錠が密室を作り上げる。
どんなからくりでそれを成し遂げたのか。
使える技は過去のさまざまな作品で出尽くしてしまっているんだなと
改めて思った次第です。それは作者も重々わかっているはず。
その上で密室トリックを書く柄刀一に敬意を表します。

本家「壇上のメフィスト」がそうであったように注目され、
そのトリックに驚嘆する声を聞き、高揚していく「アンチ壇上のメフィスト」
その暗い喜びが伝わってきてゾクッとしました。

密室殺人が連続するのは目次でわかってたので
さて次はどうくるのかなとわくわくしながら読み進みました。
ただ美希風くんによる同じような説明が何回も繰り返されて
そこがちょっと退屈だった。読者への親切な解説なのでしょうけれど。

最近の本格ミステリー状況はよくわからないのですが
ラストの大技はありなのですか?

密室というと横溝正史の「本陣殺人事件」を思い出す。
この作品が映像化されトリックが再現されるシーンを実際に見て
やっと仕掛けの全体像がわかりました。
『密室キングダム』で鍵への細工がどのように行われたのか
説明されても、錠前のイメージがうまく捉えられなくて
いまいちスッキリしなかった。図書室の場面は特に。
簡単なイラストでもあったらいいのにと望むのは甘え過ぎ?

伏線はきちんと散りばめられ、回収されていました。
読者が「?」と引っ掛かりはするけれど
真相までたどりつけないという適度なものだった。
ラストの美希風くんの謎解きで結び目がほどけたような気がしました。
事態を急展開させる最終的な失言もよくできていた。お見事でした。
(以下、未読の方はご注意を)

*
*
*

ミステリーで一卵性双生児が登場した場合、
すり替わりが必然的に考えられます。
そしてその可能性は序盤で科学的に否定される。
否定されても心のどこかでは何か抜け道があるのではないかと
疑い続けて読んでいきます。アリバイも重点的にチェックします。
でも不可能だと考える。視覚障害者には無理だと思う。
最後に真相が現れたとき、う~んそうきたかとちょっと脱力…

1988年、昭和が終わる直前に起こった事件は
昭和のミステリーらしく、因習が素地になってたわけですね。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0