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『しゃべれども しゃべれども』 佐藤多佳子 [読書]

佐藤多佳子さんの書くテンポのいい文章、
それが落語家さんの口調とよく合っていました。
派手さはないけれどとてもいい物語でした。
私は好きです この本。

みんなどうにかしなくてはと切実に思っている。
でもどうしていいかわからない。
口べたで不器用な人間が集まって
和やかな雰囲気になるわけないけど、
同じ悩みを抱えた者同志の連帯感のようなものが
そこには自然と醸し出されてくる。
そんなほのかな空気がとてもよく感じられました。

なにかが決定的に変わって、
登場人物たちが抱えている問題が
きれいに解決するという結末ではないけれど
少しだけラクに呼吸できるようになったかな。
読んでいて清々しい気持ちになりました。
三つ葉が冗談めかして言った合い言葉、
彼女は覚えていたんですね。



今昔亭三つ葉、二十六歳で二ツ目の噺家。頑固で気が短い。
あがり症のいとこに話し方を教えてほしいと頼まれる。
そこに、口べたで愛想なしの女、いじめにあっているらしい小学生
野球解説がうまくいかない元プロ野球選手が加わり
落語教室が開かれることとなる。
しかしなかなかうまくいかない。
三つ葉の落語も行き詰まってしまっている。
みんな崖っぷち。さてどうなるのでしょうか。

作者の佐藤多佳子さんはこの本についてこう書いています。
「落語家の二ツ目の青年の希望と不安にあふれた日常、
しゃべることにコンプレックスを抱えた人々の苦労と交流、
書きたいと思っていた二つのテーマが結びついて出来た物語は、
かつてなく難産でしたが、自分にとって、とても大事な
愛しい物語になりました。」

 

映画も観てきました。
国分太一くんの三つ葉。なかなか頑固そうでした。
頭が固そうな落語だなと思っていたけれど
師匠にほめられた「火焔太鼓」はよかったです。熱演だった。
十河五月を演じる香里奈、無愛想な顔がよく似合う。
村林優を演じる森永悠希くんがよかった!
本を読むだけではわからない関西弁のパワーが伝わってきた!
かわいかった。

松重豊(日本のクリストファー・ウォーケン^^;)と
八千草薫が揃うと「拝啓、父上様」を思い出してうれしい。
八千草薫さんは相変わらずかわいいです。
割烹着姿で家事をやりながら「まんじゅうこわい」をそらんじる。
「私の方がうまいわ」とつぶやく悪戯っぽい顔がキュート
(たしかにうまかった)
伊東四朗は着物が似合いますね。帽子も。

映画は本の雰囲気をよく出していました。
でも三つ葉が落語で苦しむところが
描写しきれてなかったように思う。
イケメンのいとこは登場しないのね。
ラストの抱擁シーンの固さに笑っちゃった。
彼女は感情を表すのが苦手で臆病だから
ああいう行動はとらないんじゃないかな。

「しゃべることにコンプレックスを抱えている」
十代の頃、私もこれにがんじがらめになってた。
呼吸できない感じで苦しかった。
そうすると壁をつくってしまうんですよね。
十河五月の気持ちがよくわかります。

脚本の奥寺佐渡子さんは『時をかける少女』を書いた方なんですね。

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しゃべれどもしゃべれども

しゃべれどもしゃべれども

  • 作者: 佐藤 多佳子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2000/05
  • メディア: 文庫




 


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コメント 7

おきざりスゥ。

未読です。
[映画]は今日みてきました(1日は[お金]1000なもんで[汗])

>村林優を演じる森永悠希くんがよかった!
ほんとうに最近の子役サンは演技が達者ですねー。
こまっしゃくれているけど可愛らしい様子には参りました。
お手本ビデオの故・枝雀師匠も懐かしい[テレビ]

>八千草薫さんは相変わらずかわいい
<まんじゅうこわい>出演者の中で1番うまかった気がしたくらいです。
実は女流落語家については雑音が多いのですが彼女を観ているうち上手に年を重ねて脂ッ気が抜ければ女流もウルサイことを云われなくなるかもしれないと思いました。

伊東四朗は江戸っ子ならでは舞台育ちの芸人ならではの空気感が実に好かった。
あんな師匠いそうだな[ニコニコ]と思わせます。
太一クンは大熱演でしたね[チョキ]
ジャニーズの子たちの集中力には感心させられることしきりです。

ごく個人的には落語指導の三三師匠と菊志ん師匠(撮影時は昇進・改名前でクレジットでは古今亭菊朗)がチラリと映っていたことが嬉しかった[ラブラブハート]のと楽屋場面で今昔亭小三文師匠と話していた師匠役に名古屋で友達になったオイチャンの弟サンが出ていた(舞台で活躍中の役者サンです)のがビックリ[目玉]でした。
お話したことのある人を映画の画面で観るって不思議な感じですね。

                     さて遅れ馳せながら原作を読むとしましょうね[ラブハート]
by おきざりスゥ。 (2007-06-02 00:26) 

おきざりスゥ。

あ。↑に追伸です。

http://www.ginza.jp/select/event/rakugo/index.html

いかがでしょう[!?]
by おきざりスゥ。 (2007-06-02 00:31) 

miyuco

>スゥ。さん
うちのダンナさんがおもしろい本ないかとうるさいので
これは私と二人で読めそうだからと買ったのですが
映画公開が迫ってる事に気づいて急いで読んだ次第です。
(地味な映画はロングランにならないので^^;)
関西弁の落語もいいなあと思いました。
優くんが自分で爆笑してしまう気持ちがよくわかります。
八千草薫さんのまんじゅうこわい、やわらかくて口跡がよくて
よかったですよね。
落語好きのかたにはなおさら楽しい映画だったかもしれないですね。
本もすてきですよ。
nice!とコメントありがとうございました♪

ウチから銀座まで行くのに2時間近くかかるんです。
スゥ。さんが銀座まで行くのとあんまり変わらないかも。
出不精にはきつい道のりですわ(><。)。。
by miyuco (2007-06-02 10:59) 

ミック

以前にも書いたかもしれませんが、miyucoさんのブログを拝見させて頂くと、子どもの年齢が同じくらいなせいか、不思議なくらい、感じ方が似ている様な気がします^^。私は映画を見に行く前にほとんど、ブログの映画評を読まない事にしています。映画を見た後で、誰が何をどう捉えたか、読むのを楽しみにしているからです。そして、miyucoさんからコメントを頂いて、ここに遊びに来て見ると、あまりにも書いてある事が似ていたので、笑ってしまいました^^。この記事を先に読んでいたら、きっと、意識して「違う感想を書いていたな」と、思わせる位、似ている気がしました^^!
この映画は誰にでも超えなければいけない壁とその壁超えたときの気持ちの温かさが描かれていて、見ながら、心が溶けていく感じがたまらなくここち良かったです。
TBかけさせて下さいネ^^!
by ミック (2007-06-05 01:17) 

miyuco

>ミックさん
いろいろな方の映画の感想を読んでいると
共感できる文章の書き手の方は
だいたい自分と同じような年齢だったりします。
やっぱり年代や家族構成によって感じ方の方向性は
似通ってくるのでしょうか。
新宿武蔵野館が満員だったとミックさんのところで読んで
うれしかったです。
私の記事は本の感想が入っていますけれど
TBさせてくださいませ。よろしくお願いいたします☆
nice!とコメントありがとうございました♪
by miyuco (2007-06-05 11:38) 

おきざりスゥ。

>出不精にはきつい道のりですわ(><。)。。

ではwebで[テレビ]
映画で三つ葉が演っていた<火焔太鼓>
今は真打に昇進して隅田川馬石師匠となった五街道佐助時代の高座です。http://streaming.yahoo.co.jp/c/t/00291/v01038/v0103800000000365062/
国分太一クンに落語指導をした古今亭菊朗
(現・古今亭菊志ん師匠)の演目は<鈴ヶ森(湯屋番)>
http://streaming.yahoo.co.jp/c/t/00291/v01038/v0103800000000364902/
どちらも07年3月17日の深夜寄席卒業公演の録画[映画]
スゥ。は後方で立見をしておりました[目玉]
他の新真打3人の同会の収録分もあります[ぴかぴか]
http://streaming.yahoo.co.jp/p/t/00291/v01038/11/
                       スゥ。の笑い声が入ってるかもしれません[ニコニコ]
by おきざりスゥ。 (2007-06-07 09:11) 

miyuco

>スゥ。さん
<火焔太鼓>見てきました。
どこで息継ぎしてるのと思うくらいのスピード。
おもしろかったです!
by miyuco (2007-06-07 14:05) 

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