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『天と地の守り人<第二部>』 上橋菜穂子 [読書]

天と地の守り人 第2部 (2)

 『天と地の守り人<第二部>』はバルサの生まれ故郷カンバル王国が舞台。
「カンバル王がロタ王国との同盟をむすぶかどうかに
北の大陸の存亡がかかっている」
このことに気づいたチャグムとバルサはカンバル王国へとむかう。
しかし、カンバル王の側近には、南のタルシュ帝国に内通している者がいた。
チャグムは北の大陸をまとめることができるのか。

      

第二部は、比較的落ち着いた気持ちで
読み進めることができました。
なぜなら、チャグムのかたわらにバルサがいるから。
若いチャグムはまだまだ学ばなければならないことが多い。
人の世に通じた百戦錬磨の用心棒バルサがいてくれれば、
背負っているあまりにも大きいものに
押しつぶされることはないでしょう。

「二頭の凶暴な獣がねらっている獲物を、
わたしは、その牙の間から、かっさらわねばならない」
そしてチャグム自身も獲物であるという難しい立場。
ひとりで進むには厳しすぎる道です。

「あんたは自分をせめすぎる。
ものすごく高いところを夢みて、
そこへとどかないと、自分をせめている。
でもね、なにもかもを背負える人なんて、
この世にはいないし、だれも傷つけず、
だれにとっても幸福な解決なんてものも、
きっと、この世には、ありはしないんだよ。」
バルサの言葉にチャグムはこう答えます。
「…でも、おれは…そういう解決を、したいんだ。」
チャグムの望むような解決策があればいいのに…



新ヨゴ皇国では聖導師が死を迎える。
「わたしにとって、いま、もっともたいせつなことは、
ひとりでも多くの民を生かしながら、
国のすがたをたもつことだ。」
シュガの考える方向も固まっていきます。
「天子があやまった道をえらぼうとするとき、
天子をいさめ、国をすこやかな道へとみちびくことこそ、
星読博士のつとめだ。」

チャグムとバルサは、タルシュの刺客の襲撃を
間一髪でのがれます。
カシャルのチカリのネズミさん、大活躍

カンバル王を説得するチャグム。難しい交渉です。
めんつを気にして、いったんくだした決断をひるがえすのを
躊躇するカンバル王。
怒りにふるえるチャグム。
それでも、怒りにながされなかった。
見事なホイ(捨て荷)でした。

チャグムは成長しました。
あの場面ではきっと最善の行為だったでしょう。
それでも、屈辱感に鬱々とするチャグムに、
バルサのフォローはとても優しい。

ノユーク(ナユグ)の春がこちらの世界に異変をもたらす。
すでにいくつかの雪崩が起こっていることからも、
それが明らかになる。
新ヨゴにも大きな天災が起きると予想される。
南からは侵略軍、北からは天の災い。
チャグムはロタへ、バルサは災いを告げに新ヨゴへと
旅立つことになります。

「アラム・ライ・ラ」
山が頬をそめている。
老いた山並みが赤くかがやいている。
「いとしいお日さまが、眠りにつくまえに、
ああして頬をなでると、山は頬をそめる。」
かわいたバルサのてのひらのぬくもりが、チャグムをささえる。
為政者として、民を守るため、
破滅にひた走る父を殺す決心をしたチャグムを。

第三部は新ヨゴ皇国が舞台になる。
バルサはタンダ、トロガイとともに、
天災から人々を守ることができるのか。
チャグムの決断がどのような結果になるのか。
続きを早く読みたいけれど、
シリーズが終わってしまうのはとてもさびしいです。

「ふくれっつらをして、だだをこねてたチビさんが、
一人前の男になって
いま、こうして、となりにすわってる…。」
人をたすけるために、人を殺す矛盾に
がんじがらめになっているけれど、
かなしみだけの人生じゃないよと言うバルサの気持ち、
とてもよくわかります。


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