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『あかんべえ』 宮部みゆき [読書]

文庫本になったので、読んでみました。
う~ん、やっぱり宮部みゆきって上手いな~。
(何回おんなじ事書いてんだ^^;)
題名の『あかんべえ』は最後まで読むとその含むところがわかります。
じんわりと胸に沁みてくるタイトルです。

生身の人間よりよっぽど分別のあるお化けが登場し、
主人公の12歳のおりんを勇気づけます。
女好きの若侍、玄之介、艶っぽい遊び女風美女、おみつさんが魅力的です。

江戸・深川の料理屋「ふね屋」にいるのは五人の幽霊。
玄之介、おみつ、あかんべえをする小さい女の子、按摩をする笑い坊、
刀を振り回すおどろ髪の男。
おどろ髪が暴れ回ったために開店したばかりの「ふね屋」は
曰く因縁付きのお化け屋敷と悪い評判がたってしまった。
このままでは商売が立ち行かなくなる。

ふね屋の十二歳の娘おりんは、高熱を発して彼岸に渡りかけて以来、
亡者を見ることができる。話をすることができる。

お化けたちは自分たちが何故この場所で迷っているのかわからないと言う。
それがわかれば、成仏させてあげることができるかもしれない。

この地にあった興願寺で起きた三十年前の事件。
それに彼らが関わっていたらしいことが、徐々に明らかになる。

おりんの他にも、お化けを見ることができる人がいる。何故だろう。
お化けとその人間が、似たような気持ちのしこりを抱えている場合には
見えてしまうのではないかと玄之介は言う。
どこか気持ちがシンクロしてしまうのでしょう。
特定のお化けが「見える」という事から、その人間の持っている
暗いものがあぶり出される。

七兵衛のように、亡者が見えないひともいる。
苦労の多い人生を送ってきたけれど、人を恨んだり、陥れたり、裏切ったりしなかった。
ただただ、まっとうに、真っ正直に、真っ直ぐに生きてきた人の目に亡者は映らない。
こういう人物を登場させるところが好きです。
まっとうに生きていても報われない、島次のような人もいます。
やるせない話です。

骨身を惜しまず働いて、まっとうに生きてきて、ふと夢を見る。
その夢に期待する気持ちが大きくなりすぎて、手に負えなくなったとき
悪いものに魅入られてしまう。
おつたさん、引き返すことができてよかったです。

12歳のおりんが見たものは、その年齢からはつらいできごとでした。
耐えられたのは、玄之介とおみつさんの助けがあったからでしょう。
現世では決してまっとうに生きたとはいえない二人ですが、お化けになっている今は
憑き物が落ちたように、すっきりと物事を見通している。
亡者たちが成仏するという事は、心が通じあった人たちとの別れにもなるわけです。
でも、別れなければならない。

玄之介さん、最後に主水助と会えてよかった。

「ふね屋」に影を落とすものが一掃され、新しい「ふね屋」が始まる。
きれいに物語が終わっています。

‘お化け比べ’をする浅田屋と白木屋のバカっぷりは、ひどすぎるヽ(`⌒´)ノ

あかんべえ〈上〉

あかんべえ〈上〉

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/12
  • メディア: 文庫

あかんべえ〈下〉

あかんべえ〈下〉

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/12
  • メディア: 文庫

タグ:宮部みゆき
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コメント 2

福田浩司賞味大臣

あかんべえ読みました。読んでああそうなのかと思いましたが途中で誰がどのお化けが見えて誰がどのお化けが見えないかこんがらがりそうでした。最近震える岩や天狗風も読んで超能力少女物続きましたがこれはこれで面白い小説でした。舞台でやったらこんがらがって混沌とした感じがより楽しいかもしれないとも思いました
by 福田浩司賞味大臣 (2008-11-13 14:40) 

miyuco

お化けと人の負の想念がシンクロすると見える
というのが物語の重要なポイントのひとつですよね。
by miyuco (2008-11-14 16:10) 

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