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『一瞬の風になれ 第三部 -ドン-』佐藤多佳子 [読書]

いい結果が出せてよかった!
三冊の本を読み通すと、春高陸上部のメンバーと
気持ちが一体になってきます。
ドキドキしながら応援していた。
身体的にタフになってきた連、
精神的にタフになってきた新二。

これだけの分量を一人称で語られると、飽きてくる瞬間がある。
ずっと新二の言葉で語られるから、
感情移入しやすいという利点もある。
このスタイルでこの長さで、ここまで惹きつけられるのは、
作者の技量が優れているからですね。

第三部はほとんどが試合場面。
いままでのトレーニングの結果がどうでるか。
チクショーと思いながら、もっと速くもっと上を目指し、練習してきた。
持てる力を全部出していきたい。

4×100mリレー、4継(ヨンケイ)
四人のフィジカル、メンタル両面のコンディション、
バトンパスのリスク、不確定要素の多いリレー。
だからこそ、最高の走りで優勝した喜びは大きい。
「おもしろいよ」「リレー」
春高陸上部に入ったばかりの頃、
連が新二に言ったこの言葉の意味が
やっとわかりました。

南関東大会100m決勝、
競争相手のスタートダッシュを阻むために
卑怯な手を使う選手がいる。
「おもしれえ」と楽しそうにニヤッとする連。
抑えたスタートなんかしない。思いっきり飛び出す。
いい性格してるよね。これでこそ、一ノ瀬連です。



準決勝を走り終えた時、初めて、
「俺は本当に速く走れるようになった」と思えた。

新二も100m決勝を走る。

「光る走路を走った。俺の行く道を走った。
ただ、ひたすらまっすぐ走る100m、
この道が、何より好きだ。
身体が飛ぶようなこのスピードが好きだ。」

「未知の速さ、身体をフルに使えた感覚、
どんなに気持ちがいいか!
このスピードで走った奴にしか絶対わからない。」
たった10秒ちょっとの間に、技術や駆け引きがあるなんて、
見ているだけの私にはとても理解できない。
一歩づつ、新二はそれは身につけていく。
自分のものにしていく。

なにより新二のモチベーションを高めるのは、
個性的なライバルたち。
人を引き上げるのはやっぱり人なんだな。

気心のしれたメンバーでリレーを走るか、
実力が勝るメンバーにチェンジして
新たにチームワークを作り上げていくか。
迷いのある新二たちに、当事者の根岸は、きっぱりとこう言います。
「総体で優勝する」全国で勝つ。
自分が入ったら無理でも、鍵山ならばそれが可能だと言うネギ。
走るメンバーだけではなく、陸上部全体で見る大きな夢。
この物語で根岸の存在は大きいです。本当にいいヤツだな。

新二の兄、健ちゃんはリハビリを続けている。
新二のアスリートとしての成長こそ、
健ちゃんを喜ばせ、励ますことでしょう。
この兄弟のハハの熱血応援団っぷりも楽しい。

200mのレース前夜で物語は終わる。
基礎体力で連に勝る新二にとっては、100mより有利ではある。
でも、連も体力をつけてきた。
なにより彼は天才スプリンター。
「勝負しよう」
彼らの‘かけっこ’は、これからもずっと続いていく。

君たちと一緒に過ごした三冊の本、楽しかったよ!

一瞬の風になれ 第三部 -ドン-

一瞬の風になれ 第三部 -ドン-

  • 作者: 佐藤 多佳子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2006/10/25
  • メディア: 単行本


新二が大好きで勇気が出て試合前によく聴く曲
BUMP OF CHICKEN 『ダイヤモンド』

世の中にひとつだけ かけがえのない 生きてる自分
弱い部分 強い部分 その実 両方が かけがえのない自分
誰よりも 何よりも それをまず ギュッと強く 抱きしめてくれ
               藤原基央
 


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