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『街の灯』 北村薫 [読書]

連れ合いが通勤電車内で読む本を、
ときどき私が選んだりしてます。
この本を読んだときに、読みやすくて、
かわいいのでちょうどいいかなと思ったので
文庫落ちを待ってました
単行本だと持ち歩くのに不便だというので。
(厚い本もイヤだとか、いろいろうるさい)

      

昭和七年、士族出身の上流家庭・花村家にやってきた
女性運転手別宮みつ子。
令嬢の英子はサッカレーの『虚栄の市』のヒロインにちなみ、
彼女をベッキーさんと呼ぶ。
新聞に載った変死事件の謎を解く「虚栄の市」、
英子の兄を悩ませる暗号の謎「銀座八丁」、
映写会上映中の同席者の死を推理する「街の灯」の三篇を収録。

     

喜劇王チャップリンが来日した翌日、
首相暗殺という大事件が起こったという
昭和7年が舞台。
時代は大きく動き始めていたけれど、
お嬢様の日常はまだ平穏です。

女子学習院に通う上流階級の方々の
優雅な生活を垣間見るのは楽しい。
話し言葉がきれいで心地よいです。
当時の銀座の様子もおもしろかった。
時計台から海が見えたんですね。

ベッキーさんは魅力的で謎めいています。
断髪で、西欧風の、睫の長い、瞳の大きな眼、
きりりと上がり気味に弧を描く眉。
宝塚のスターを見るように、
お嬢様たちの注目の的になるのも無理はありません。
運転手兼シャプロン(お目付け役の女性)
その上護衛までできる女性。
きっと英語も堪能なんでしょうね。
続編もあるそうなので、
だんだんとベールを脱いでいくことになるのかな。
ベッキーさんはお嬢様の視点を
さりげなく誘導する役割を果たしています。
気づかれないほどにさりげなく。
まさにシャプロンです。

『街の灯』
桐原侯爵家の令嬢、道子お嬢様。
美しく華やかな姉を持つ、地味めなお姫様。
婚約者を駄馬と切り捨て、自分をも駄馬だと言う。
駄馬でも裕福な人と結婚すれば、
今まで通り何不自由ない生活が送れる。

「わたしが会えるのは全て駄馬なの。
そして仮に、千里を行く馬から見れば、
わたしの方がただの駄馬なのよ」

寂しいお姫様が印象に残ります。

街の灯

街の灯

  • 作者: 北村 薫
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2006/05
  • メディア: 文庫


タグ:北村薫
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コメント 2

スゥ。

■単行本の時は高野文子サンの挿絵だったと思いますが(違ったかな?)文庫はどうでしょう?■夜店の状景と、別宮サンが内懐の銃に手を伸ばす場面とが映像として記憶に残っています。見上げる時計塔も目に浮かびますね■今PHSから投稿していますが『べっく』と入れたら『別宮』一発変換で『ベックリ』…失礼^^;イヤほんと。珍しい姓に思えますのにねぇ(^.^)
by スゥ。 (2006-09-27 00:49) 

miyuco

>スゥ。 さん
単行本は地味な色合いのお花の表紙でした。
文庫の表紙は内容と合っているしきれいです。
時計塔、印象に残りますよね。
別宮、PCは変換したけれど、ケータイはダメでした^^
by miyuco (2006-09-27 18:00) 

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