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『誰か』 宮部みゆき [読書]

後味の悪い作品でした。
人物の背景描写が相変わらず丁寧なのですが、
そこまで書かなくても支障ないんじゃないのと、思ってしまう。
様々な伏線が含まれているにしても、
もっと刈り込めるのではないかな。
いろいろと書いてあるのにも関わらず登場人物に魅力を感じない。
そして、結果があれでは…がっかりでございます。

「人生に不足がない、あるいは、
幸せな人生をおくっている探偵役というのは、
ミステリーの世界ではなかなか珍しいような気がする
― と、常々考えていました。」
そういう人物を主人公にしたいと宮部みゆきは思ったようです。
「その結果、彼が追いかける事件は、
とてもささやかなものになりました。」
それならば、もっとページ数を少なくしてもよかったのに。

冗長です。
以下、ネタばれがあります。

    

今多コンツェルンの広報室に勤める杉村三郎は、
義父でありコンツェルンの会長でもある
今多義親からある依頼を受けた。
それは、会長の専属運転手だった梶田信夫の娘たちが、
父についての本を書きたいらしいから、
相談にのってほしいというものだった。
梶田は、石川町のマンション前で自転車に撥ねられ、
頭を強く打って亡くなった。
犯人はまだ捕まっていない。
依頼を受けて、梶田の過去を
辿りはじめた杉村が知った事実とは…。
                   ― Amazon より

    

杉村は今多コンツェルンの娘と結婚したために
「逆玉の輿」という立場にある。
夫が妻の財力の恩恵を受けている事に対して、
他人は様々な感情を抱く。
本人がどのように振る舞ってもついて回る視線。
誰にでもたやすく攻撃できる部分を
あからさまにしながら生きていくのは辛いことでしょう。
そして、自分自身の醜い感情からそこを突いてくる卑怯な輩。
「あなたみたいな恵まれた人に、
わたしの気持ちがわかるはずない」

姉と妹の愛憎って金曜ドラマ
『想い出にかわるまで』みたい。
でも、真実が明らかになった後の
姉妹の壮絶な会話がこの作品にはありません。
それをやってしまったら、
メインストーリーがぶれてしまうけれど、
それにしても中途半端。
この姉妹は薄っぺらくて、嫌悪感を抱くのみ。
亡くなった父親は娘たちの修羅場を
見なくてすんでよかったのかもしれない。

おもしろいとは言えない物語でした。

誰か Somebody

誰か Somebody

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2005/08/20
  • メディア: 新書


タグ:宮部みゆき
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KANAchanMaMa

おお~!酷評ですね。
この続編と言われている 『名もなき毒』の書名が 出てきましたが、では
貴女は もう 読まれないかな~!?
by KANAchanMaMa (2006-09-04 19:23) 

miyuco

>KANAchanMaMaさん
酷評は書きたくないなと思っていたのに、書いてしまいました。
大御所になってしまうと編集者は及び腰になるのかなと思ってしまう。
読みやすい文章でうまいのに、歯がゆいです。
『名もなき毒』を読もうと思って先にこれを読みました。
でも、図書館の順番が回ってくるのはいつになることか…
nice!とコメントありがとうございました♪
by miyuco (2006-09-04 19:59) 

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