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『ねこのばば』 畠中恵 [読書]

連れ合いに『しゃばけ』を貸したら、
宮部みゆきの時代物に似ていると言われた。
『霊験お初捕物控』のことらしい。
…それ、読んでない 
時代物は苦手なのでスルーしてしまいました。
「やっぱ宮部みゆきってすごいよね」ってどーゆー意味?
自分ではおもしろい本を探せなくて、
つまんない本ばかり(妻の独断)読んでいるオット。
気の毒だなと思って貸してあげたのに、
何だかケチをつけられたみたいでおもしろくない。
(読んでない本と比べられて、
しかも相手が宮部みゆきなので反論できないし…)
シリーズ二作目の『ぬしさまへ』は貸してやんないと思っていたら
探し出して持っていってしまった。くやしー
結局は若だんなと妖、(とくに鳴家)が
とっても気に入ったらしいです。

 

「茶巾たまご」
病弱な若だんな。
ところがここ何日か人が変わったように体調がいい。
食欲もある。
めったにない事なので、それだけで大騒ぎ。
廻船問屋長崎屋の商売も大繁盛。
「福の神」があるのでは、と思い始める。
「貧乏神」の居心地を悪くする若だんなと長崎屋って、
いったい…

「花かんざし」
妖たちが大活躍です。幼子の命を守ります。
鳴家を見ることができる齢六つの於りんちゃん。
分厚く白粉を塗り立てているお雛ちゃん。
「漆喰の塗り壁に、目鼻口を書いた顔」と鳴家は言います。
人柄のよい正三郎さん。
そんなお雛ちゃんの聡明さ、気だての良さを知っています。
若だんなは、あの化粧すら気にならない正三郎が羨ましい。
祖父母の、父母の、大恋愛を身近に見ているので
なおさらそう思うのでしょうね。

「ねこのばば」
江戸の大店、長崎屋の若だんな一太郎は、
立て続けに三つの事件に出会ってしまった。
一つは、若だんなお気に入りの、
『桃色の雲』が無くなった件。
一つは、猫又が上野の広徳寺に捕まった件。
一つは坊主が縄もないのに、
松の木で首をつって死んだ件であった。

おもしろかった!
上野、広徳寺には妖封じで有名な、寛朝という名の僧がいる。
腕っ節も強く、迫力ある男。
仁吉と佐助を妖と見抜くこの僧と、若だんなは渡り合う。
成り行きから寺内の事件解決に手を貸すことになる。
若だんな、活躍します。
修行中の若い僧の厳しい生活。
甘い言葉で誘惑するのは造作もない事でしょう。
指導すべき僧が堕落して、そのおこぼれを預かったところから
何かが狂ってしまった。
若い者の行く末を慮った処遇でよかった。
寛朝は強面の男だけではありませんでした。
それにしても、『桃色の雲』があんなところから出てくるなんて、
そしてあんな形で無くなってしまうなんて。愉快です。

「産土」(うぶすな)
弘法大師が猪の害を防ぐために書いた呪禁の紙。
紙の封じ目を切ってはならぬと言い残されていたのに、
猪が出なくなると不思議の訳を知りたさに、人々は紙を破る。
中には一匹の犬の絵が書かれていた。
紙から抜けだし、犬神となり何処かへと去った。
佐助の過去が語られます。
「今度こそ、何が何でも、守りきるつもりでいる。」
仁吉と佐助の過保護っぷりは何故なんだろう
と思っていましたが
ふたりの妖の過去が語られた事で、ようやく腑に落ちました。

「たまやたまや」
甘やかされ放題の若だんな。
「こういう育ちをしたからには、
放蕩息子にならなきゃあ、悪いようなきがしてねえ」
止める屏風のぞきや鳴家をふりきり、
お目付役の手代二人の目を盗んで外出する若だんな。
大切な幼なじみのために。
「栄吉に約束したんです。
お春ちゃんをちゃんと幸せにするために、力を貸すと。
必要なら馬鹿に見えたって、お芝居の悪役のようなことも、やると」
お春のなぞかけに答える若だんなの気持ちが伝わってきます。
お春にもそれは通じたことでしょう。

「たまやたまやぁ」これはしゃぼん玉売りのかけ声。

若だんなが、さまざまな人たちと関わっていく。
そうして、人の心、己の心と
向き合っていく様子を読むのは楽しいです。

ねこのばば

ねこのばば

  • 作者: 畠中 恵
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2004/07/23
  • メディア: 単行本








 


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コメント 4

宮部みゆきの時代物に似ている?私も『霊験お初捕物控』は未読なので、なんとも言えません。あれだけ様々なジャンルを書き分ける宮部さん、あんまり私は好きではないのですが、文章のうまさには舌を巻きます。
でもお連れ合いさんが「鳴家」を気に入ってくれて嬉しいです。
かわいいですよね!
by (2006-08-23 04:51) 

miyuco

>ミミ猫さん
↑スゥ。さんが、こう呼んだのをマネしてみました^^なんか可愛くて好き
むかつくオットですが、鳴家をかわいいと言うところはナイスです。
私は宮部みゆきのファンなんですが、これは読んでないんですよ。
読んでみようかなと思ってしまいました。
「しゃばけ」シリーズ、累計100万部も目前と小説新潮の広告に
書いてありました。人気なんですね。うれしい☆
特集が組まれているようです。買ってしまいそう^^;
nice!とコメントありがとうございました♪
by miyuco (2006-08-24 08:56) 

びっけ

図書館に予約した「しゃばけ」シリーズ・・・うまくいかないもので、第2作を飛び越して、こちらの『ねこのばば』が先に戻ってきました。
で、やっぱり面白いです!
私よりも夫の方がはまっているのがちょっと悔しいけれど、まぁいっか・・・。
最後の「たまやたまや」に江戸っ子の粋な人情が感じられて・・・いいですねぇ。
「たまやたまや」が、しゃぼん玉売りの売り声とは知りませんでした。
思わず、大島弓子の綿の国星シリーズの、たまや猫を想像しちゃいました。(^^;
by びっけ (2007-04-02 23:13) 

miyuco

>びっけさん
若だんなには男気がありますよね。
見かけと違って(*≧v≦) 
恋愛にあこがれているとことも好きなんですわ。
なんかかわいくて。
たまや猫、わたしも思い出しました[ラブラブハート]
「どちらもおなじ
かがやくのはら」
nice!とコメントありがとうございました♪
by miyuco (2007-04-03 12:18) 

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