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『ゲド戦記 影との戦い』 アーシュラ・K. ル・グウィン [読書・海外]

ジブリ映画『ゲド戦記』が7/29に公開になります。
それまでに本を読んでおこうと思っていました。
『影との戦い』を読み終えたので、映画の情報を少し読んでみたら
3巻『さいはての島へ』がメインのストーリーだという事が判明。
…がんばって読まなくては

岩波書店から最初に出版された本には、
小学6年、中学以上 とあります。
確かに子供向けの本ではないです。派手な冒険はありません。
つらい旅が続きます。
ゲドが「自分自身の本当の姿を知る者」になるまでの物語。
私はこの物語が好きです。とても心惹かれる。

 

影と対峙したゲドが影の名を呼ぶシーンがとてもよかった。
恐れていたそれが何か、理解した瞬間。
世界が反転する感覚。スッと色を変えるような。

ゲドが師と仰ぎ敬愛する寡黙な魔法使いオジオンが大好き。
(ロード・オブ・ザリングのストライダー、アラゴルンのイメージ)
こういう方に名を授けられた幸福を
ゲドが実感するのはずいぶん後になってからでした。
オジオンのもとに帰ったゲド。
「やあ、来たか」と声をかけられ
「はい、出ていった時と同じ、愚か者のままで。」と答える。
かつて傲慢だったゲドがこう言えるようになっている。
相手がオジオンだからこそ、
なおさら素直に出てきた言葉のように思います。
追いつめられたゲドは、オジオンと語り合った後、
影から逃げるのではなく、向きなおることを決意する。

『影』というのは内なるもの。内なる影との戦い。
ゲドの影響下として、よく言われるのは、
スター・ウォーズでのダーク・サイド。
ブレイブ・ストーリーでもそういうシークエンスがありました。
ブレイブ・ストーリーにあるという事は
ゲームのRPGにも見かけるということ。

宮崎駿が『ゲド戦記』を読み込んでいる
という事は知りませんでした。
ナウシカの肩にのるテト、ゲドの肩にのるオタクという小動物。
ハヤブサに姿を変えるゲド。
「魔法使いが自分の姿を変える時には
自らの呪文にとらえられてしまう危険を覚悟しなければならない」
「自分自身を失う危険、真の姿をなくしてしまう危険がつきまとう。
姿を変えている時間が長ければ長いほどその危険は大きい」
映画のハウルを思い起こします。

「ゲド戦記」第一部『影との戦い』は
傲慢な若者ゲドの文字どおりの影との戦いを描いたものでした。
多島海(アーキペラゴ)を舞台に、
狩る者と狩られる者の戦いは場所を変え、
立場を変えて激しくくりひろげられ、
ついに追いつめていった世界のはてで、
ゲドは己の分身たる黒い影を自らに吸収して、
苦しかった戦いを終えました。
分離し、敵対していた光と影は、
その時ゲドの中でひとつになりました。 
 …『こわれた腕環』訳者あとがきより

端正な訳文がとても好きです。清水真砂子訳。
「『ゲド戦記』映画化にむけて」
映画作りの協力を断った経緯があります。

私は恐れたのだ。
自分がこれ以上の影響を与えることを。
訳者として、すでにして私は日本語版の「ゲド戦記」の読者に
大きな影響を与えている。
意図しなくとも、私の読み、私の解釈を強要している。
日本語版「ゲド戦記」は私の朗読、
私の演奏になる「ゲド戦記」なのだから。
影響は本まででじゅうぶん。
そこから先へは一歩もしゃしゃり出てはならない。

こういう考えはとてもすてきだと思う。
ハリポタの訳者さんもこうだといいのに

萩尾望都さんが『闇の左手』を大好きな作品としてあげていたので
アーシュラ・K. ル・グウィン の名前だけは知っていました。
当時、この本を探したんですが、
書店で見つけることができませんでした。

影との戦い―ゲド戦記 1

影との戦い―ゲド戦記 1

  • 作者: アーシュラ・K. ル・グウィン, 清水 真砂子
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2000
  • メディア: 単行本

ロークの学院で魔法を学ぶ。
そこにはゲドを挑発する鼻持ちならないライバルがいる。
魔法学校とライバル、ここを拡大再生産して、わかりやすくすると
ハリー・ポッターですね。

ハリー・ポッターシリーズを読めないのは、
訳文が好きじゃないからかなと思ったりする。
内容もちょっとですが。
(『炎のゴブレット』友の死の扱いが
あまりに軽いと感じて、許せなかった。
でも、もし原文で読んでいたら
違う印象になっていたかもしれない)
子供たちが待っているのに、
原書の発売と日本での発売のタイムラグが大きすぎる。
優秀なプロの翻訳者の方の手を借りて、
もっと早く発売すればいいのに、と思ってしまう。
書店に買い取りを要求する静山社のやりかたも好きじゃない。
…余計なことでした…

 


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コメント 8

KANAchanMaMa

はじめまして。こんにちは!(^_^)/
ジブリ映画の公開を前に、あせって 原作を読んでいる者デス。(^^ゞ
とても分かりやすい解説を 読むことができて、とても 嬉しく思っています♪
by KANAchanMaMa (2006-06-08 11:48) 

miyuco

>KANAchanMaMaさん、はじめまして
映画公開まで一ヶ月半、あせりますよね。
いま『こわれた腕環』読んでます^^v
nice!とコメントありごとうございます♪
by miyuco (2006-06-08 15:47) 

ゲド戦記、私の三種の神器の一つです。ファンタジーは、「指輪物語」、「ゲド戦記」、「ナルニア国物語」を読んで育ってきました。
「闇の左手」も面白くて好きです。
この第1巻はあまりの暗さに挫折した、という友人もいますが、シリーズ原点だと思います。映画もアレンが同じような試練を受けているような…(よく知らないのですが)?
清水真砂子さんの訳は私も大好きだったんですが、映画化協力をお断りされたんですね。潔い方ですね。
TBさせていただきますので、よろしくお願いします。
by (2006-07-13 11:47) 

miyuco

映画のアレンには『影との戦い』のゲドが投影されているようですね。
わたしはオジオンが大好きなので、この物語が一番好きです。
暗いと言えば暗い物語ですよね^^;
by miyuco (2006-07-13 14:52) 

おきざりスゥ。

<ゲドを読む>配布は今週6/6(水)ですね[プレゼント]
http://club.buenavista.jp/ghibli/special/ged/about.jsp
                                   何色を入手できるかな?
by おきざりスゥ。 (2007-06-04 09:14) 

miyuco

スゥ。さ~ん、ステキ情報ありがとう[ラブラブハート]
忘れないように本屋さんに行きます!
手に入れられなかったら捜索隊(息子)を
派遣しようと思ってます^^
by miyuco (2007-06-04 13:21) 

春分

ル=グインはSF(特に短編)の方が好きです。
これもいいけど。
by 春分 (2009-08-09 20:45) 

miyuco

>春分さん
ル・グウィンの名前を初めて聞いたのは
萩尾望都さんのエッセイ漫画でした。
「闇の左手」を絶賛してました。
あの頃読めばよかったのに
何で読まなかったのかな?と後悔してます。
by miyuco (2009-08-11 00:05) 

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