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『盾・SHIELD(シールド)』 村上龍 [読書]

この本のアイデアがどんなふうに浮かんだか
というエピソードを村上龍が語っています。

「サッカーの中田選手はとても優しい、
心のやわらかなコアが見えるような人。
何かに立ち向かう時は、とても強い。
肉体的にも精神的にも。
どんな時にも120パーセントの力を発揮することができる。
彼の柔らかな部分と、すごく強い部分は
どう関係しているのだろうと思った。
優しさとか傷つきやすい心は誰でも持っている。
でもその心が外部にさらされると危ない。
だから人は何かで柔らかい心を守っているのではないか。
中田選手にとって、それはサッカーの技術であったり、
集中力、頭脳の明晰さ
イタリア語でのコミュニケーション能力であったり。
シールドが多く、強固であれば、そのほうが有利ではないか。
シールドが強いからコアの部分が
やわらかでいられるのではないかと思った」

ほとんどの人がこの概念に気づいていると思う。
それを子供向けに伝えたいという事なのでしょうか。
でも[少年ジャンプ]を読んでいれば、さまざまな作品の中で
子供たちには伝わっているような気がする^^;
この本は、大人が読むにはあまりにステレオタイプ。
子供には伝わりにくい。中途半端な印象です。ズレてる。

『下妻物語』を観た方がよっぽどいいのではないかな。
彼女たちのロリータとヤンキーの装いこそ、武器であり盾。
ひとりで立つために必要な“誇り”です。
オタクで武装する人たちも同じだと思います。



「盾には集団的なものと個人的なものがあるのではないか」
…著者コメント

コジマとキジマという二人の登場人物が出てきます。
大企業に入社して出世街道まっしぐらのキジマ。
結果的に会社という後ろ盾を無くして転落していきます。
集団的なシールド。
これが絵に描いたようなステレオタイプ。
ひねりも何もないありふれたエピソード。
わざとこういうのを書いたのかな?わかんない。

集団的な盾を必要として、
そこで成長していく場合もあると思う。
悪い部分だけではありません。
ただし、それに依存しすぎて
自分を見失ってしまってはいけない。
そこがきちんと伝わってこない。

かつて優等生だったコジマは、うまく社会に適応できずにいた。
悩んだ末に考える。
自分が楽しかったのはシェパードと遊んでいたときだ。
シェパードといっしょにいられればそれでいいと、
犬の訓練所で働き始める。

所長にシェパードの取引に必要なので、
ドイツ語を覚えるように言われ、
努力して通信教育でマスター。
ドイツで結婚相手にも出会います。
自分はシールドを持っているとコジマは妻に言います。
「シェパードとドイツ語、そして君だ」

最初の名なしの老人とのエピソードは好きです。
「国や社会にとって利用しやすくて、
利益になりそうな子どもを、頭がいいとほめる。
国や社会の役に立ちそうにない子どもは、クズと言われる。
でも、そんなことには意味がないんだ」

「Ryu’s  Bar 気ままにいい夜」
という村上龍のトーク番組が大好きだった。
もっと若い頃、NHKラジオでDJをしていたのも聞いていました。
『限りなく透明に近いブルー』発売当時、読みました。
センセーショナルなデビュー作でしたね。
好奇心旺盛で、人懐こいかんじ、好きです。
同じ村上でも、村上春樹は人間としてはつきあいにくい、
ダークなイメージ。
どちらかとつきあうならば、大多数の人が村上龍を選ぶと思う。
もちろん、私もそうです。

それなのに、村上春樹の書くものは大好きで、
村上龍のものは苦手^^;
困ったもんです。

『限りなく透明に近いブルー』は
ドアーズの『水晶の舟』のイメージと重なります。

シールド(盾)

シールド(盾)

  • 作者: 村上 龍
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2006/03/24
  • メディア: 大型本


 


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コメント 13

miyuco

>ホシさん
読んでいただいてありがとうございます♪
by miyuco (2006-06-07 14:40) 

真紅

miyucoさん、こんにちは。私も「Ryu’s Bar」好きで必ず観ていました。
昔、W村上って言い方ありませんでしたか?W浅野みたいに。
私も両方の愛読者でしたが、いつの頃からか龍さんの著書は読まなくなりました。村上春樹はもう20年近く愛読しています。ハルキストってやつかも。
で、私は個人的に付き合うのも春樹さんがいいです。フフフ。
またお邪魔しますね。ではでは。。
by 真紅 (2006-06-08 20:06) 

スゥ。

『コインロッカー・ベイビーズ』『愛と幻想のファシズム』は好きでしたねぇ。
『新世紀エヴァンゲリオン』の登場人物名を知った時には驚きました。

今は『カンブリア宮殿』で落ち着いて小池栄子と進行しているけど
『Ryu’s Bar』の頃は、山田詠美や加賀まりこといった綺麗でつよそうな姐さんがゲストでやって来ると途端にシドロモドロになるあたりが可愛かったなあ(^^)

デビュー当時、雑誌で甲斐よしひろと対談した際、写真が入れ違っていた事に誰も気づかず校了してしまい、そのまま掲載されてしまった逸話なぞもはや誰も信じぬ面変わりの様ですが ヾ(>▽<)o
by スゥ。 (2006-06-08 22:38) 

miyuco

>真紅さん
そっか春樹さんのほうがいいかあ^^
彼は悪い人ではないんだけど、当たり障りなく
あしらわれてしまうような気がするんですよね。
…なに言ってんだ、自分…
これでは妄想系ですね☆
コメントありがとうございました♪
by miyuco (2006-06-09 09:20) 

miyuco

>スゥ。さん
『コインロッカー・ベイビーズ』でザセツしたダメ人間です(v_v。)
甲斐さんとそっくりでしたよね。今でもちょっと似てるところがある
と思ってるのは、わたしだけ?

ウチの息子は今朝、めざましテレビで「第九」を聞いて
「おお~エヴァだ」とつぶやいてました。
最後の使徒戦で流れていたそうですね。
「第九」→「エヴァ」
彼の世界は相変わらずよくわかんないです^^;
by miyuco (2006-06-09 09:42) 

sknys

村上龍の小説ベスト3を選ぶとしたら、
『コインロッカー・ベイビーズ』と『愛と幻想のファシズム』は
外せないでしょう(珍しくスゥ姐さんと意見が一致?)。

特に後者はエヴァ・ネタ本の1冊として超有名
‥‥鈴原冬ニと、相田剣介(ゼロ)→綾波レイ(零)という図式!

アニメに否定的なリュウ氏が庵野秀明に懐柔されて行く対談や、
坂本龍一のFM番組にゲスト出演した際のトークも面白かった。
最近の龍氏は、教育評論家のカバゴンみたいですが(笑)。
by sknys (2006-06-10 13:30) 

スゥ。

実は『新世紀エヴァンゲリオン』飛び跳びに5~6話分くらいしか見ていません。
興味はあるのですが、イマサラとゆー気は否めませんし…

龍氏の小説も、直近で『5分後の世界』『ヒュウガウィルス』を読んだくらい。
だいぶ御無沙汰です。
今でも甲斐サンに似てるのかどうかも、現在の甲斐サンもしばらく拝見していないのでナントモ申せません。
しかしカバゴンて…阿部 進氏でしたっけ?もう相当な御年なのでは?
                    最近はどうされているのでしょうね?
by スゥ。 (2006-06-11 00:15) 

miyuco

>sknysさん
その2作品は時代と密接に絡みついている気がして
「エヴァ」同様、何となく、いまさら感があります。
当時、読んでいればよかったんでしょうけれど、
ダメだったんですよね。

カバゴンって…笑っちゃった。・゜゜・(≧∀≦)・゜゜・。
by miyuco (2006-06-11 18:31) 

miyuco

>スゥ。さん
去年の夏、アニマックスで放送されていた「エヴァ」を長男が録画してました。
それをとびとびに見ていましたが、やっぱり、いまさら感です。
なんか歴史の遺物を見ているような気がして…
リアルで見ていた人たちが感じたであろうインパクトは
私にはよくわかりませんでした。
長男にしてみれば至る所で「エヴァ」へのオマージュに突き当たるので
元ネタとして、絶対に外せないもののようです。
by miyuco (2006-06-11 18:45) 

スゥ。

元ネタ…
先週の『ケロロ軍曹』には『ウルトラマン』と『アイアンキング』と…
『突撃!ヒューマン!!』のパロディ…もといオマージュ(笑)が!
ヒューマンて!誰に向かって製作されてるんだろう?
この番組、原作ネタも尽きちゃって、早朝枠だった1stシーズンの面白さは最早望むべくもないのですが、忘れた頃にこんなもん出してくるんで油断できません。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AA%81%E6%92%83%21_%E3%83%92%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3%21%21

                てゆーか、見た瞬間に思い出した自分にビックリ!
by スゥ。 (2006-06-14 18:36) 

miyuco

>スゥ。さん
たまたま先日こんな文章を読んでいて、『突撃!ヒューマン!!』って
そんなにレアなんだと思ったところです。(私は見たことないけど)
http://blog.livedoor.jp/insighter/archives/50625963.html
原盤が消失していて録画されたものも出てこないなんて。
スゥ。さんも生き証人ですね(*≧v≦) 
いつかyoutubeに出てくるかな?
by miyuco (2006-06-14 18:54) 

スゥ。

youtubeってビックリ箱みたいですね。アノ12話がフツーに視聴されてるなんて。
そして何でも御存知の早耳miyucoサンにも驚きです Σ(- -ノ)ノ

それにしても、この項のタイトル 『盾・SHIELD(シールド)』村上龍 ナンデスガ…凄いずれ方でコメントを延ばしてしまってゴメンナサイ m(_ _;)m

(そういえば新井素子の初期作に『ずれ』ってゆーのがありましたよ…
なぞと書いておくとayakaサンが喰いついて、またぞろコメントが長くなるかな?)
by スゥ。 (2006-06-15 01:16) 

miyuco

>スゥ。さん
youtubeってビックリ箱だし、時間を食いつぶす悪魔です〃(≧へ≦)〃
早耳というか…ネット上をフラフラしているヒマな主婦なのがバレバレですね。
ダンナにあの話、見られるらしいよと言ったら絶句してました。
ただ彼はyoutubeってものをよく知らないので半信半疑みたい。
by miyuco (2006-06-15 11:10) 

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