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『陰日向に咲く』 劇団ひとり [読書]

帯に載っている推薦文が傑作です。
「ビギナーズ・ラックにしてはうますぎる」というコピーがすばらしい。
恩田陸のネームバリューとともに大きな追い風になっています。

『陰日向に咲く』 この題名もいいですね。
全5篇からなる連作短編集。
TVで見る「劇団ひとり」の芸そのままの語り口で綴られていきます。
思いこみの激しい愛すべきひとたち。
勝ち組か負け組かといえば負け組かな。
「道草」のサラリーマンは世間的には勝ち組でしょうけれど、
実際にはあやうい人間です。
それでも、みんなとってもチャーミング

登場人物が魅力的だと、読んでいて楽しい。
どんなに素晴らしいプロットと文章でも
登場人物に魅力がなければつまんない。
人物に命をふきこむということを
技術的に考えてしまえば難しいと思う。
作者は易々とそれをやってのけている。
たいしたもんです。

短い時間で読めて、
ほんわりした温かみを感じられる作品集。
この本を薦めるかたの気持ちがよくわかります。



それぞれの短編の登場人物がリンクしています。
脇役で登場するひとが次の話では主役になっていたり。
ひねりがきいています。サービス精神旺盛ですね。
斉藤美奈子の「ふつうに直木賞を狙えるレベルでしょう」
というのは言い過ぎじゃないかな。
このひとがそこまで言うと逆効果になっちゃうってば

「拝啓、僕のアイドル様」
これが一番よかった。
作者が書きたくて書いた気持ちが伝わってきます。
崖っぷちアイドルを、一途に応援している男の話。
自虐的なまでの愛情。

「ピンボケな私」
ダメダメな女の子が生き生きと描かれています。
お馬鹿さんだけどかわいい。

「徹子の部屋」に劇団ひとりが出ていたのを
たまたま見ていました。
映画化されたら嬉しい、見てみたいですと言っていました。
もし自分が演じるとしたら
アイドルの追っかけをしている男を演じたいそうです。
南野陽子「ナンノ」のファンだったという事です。

「劇団ひとり」はもともと大好き。
TVの『電車男』に出ている彼を見て、
もっとファンになってしまった。
アニメオタの松永氏(実は大金持ち)
番外編「ギター男」の彼はさいこーでした。

「徹子の部屋」で家族でラスヴェガスに
旅行した話をしていました。
(彼は気持ちのいい男性ですね。黒柳さんも楽しそうだった)
帰国子女なのにもう英語はダメだそうです。
カジノのドリンクサービスに英語で話しかけることができなくて
八時間、何も飲めなかったそうです。
「英語を喋るのが恥ずかしいんですよ」
「発音しやすい単語を考えて“water”と
言おうと思っているのに言えないんです」

隣で見ていた次男が「その気持ちよくわかる」と言ってました^^;
こんな事言ったらこう思われちゃうんじゃないかとか、
そう思われたらこういう状況になっちゃうんじゃないかとか
いろいろ先回りして心配しちゃうんですね。
うちの息子も、
よくそこまで考えるよなという事まで
想像して心配しています。
…それって妄想入ってるんじゃない?
紙一重のように思えるんですけど…

恩田陸の推薦文の続き、
「あと二作は書いてもらわなきゃ」に同感です。

陰日向に咲く

陰日向に咲く

  • 作者: 劇団ひとり
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2006/01
  • メディア: 単行本

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コメント 3

スゥ。

>本は図書館で借りるものと今でも思って
らっしゃるのにUPされるコラムに新刊が多いのが素晴らしい。
お近くの図書館のフットワークがヨイのかmiyucoサンに秘策があるのか。

『陰日向に咲く』読みたいと思っています、劇団ひとり好きですし。
芸人には実は賢くてシャイな人が向いているようで、役者サンでも笑いを含んだ演技を得意とする名バイプレイヤー達は皆そんなタイプに思われます。
本当は内省的だからこそ狂気も醸し出せるけれどバランスが崩れると危うい。
噺家やお笑い芸人に自殺者の少なくないのは真面目すぎるからでしょう。

なにしろ本名からして川島“省吾”な彼には資質大。心配しつつ見ていました。
(コスプレ芸の人には、その傾向が強いと思います、竹中直人や志村けん等)
執筆きっと向いているんでしょう、北野武にとっての映画みたいなものかも。

紙一重のような先回りの心配と恩田陸も賞賛の小説は同じ根っ子から生えているものだから劇団ひとり自身の精神衛生のためにも続けて貰いたい物です。

今一番気に入ってるMy妄想は(ナンジャ,ソラ)こんなカンジ。
裕福な家庭で愛情一杯に育てられ、若くして経済力と包容力のある年上の男性と結婚、元気で可愛く優秀な子供にも恵まれ、友人も多く趣味も良く、皆の羨むような幸せな生活をしているオットリした専業主婦。
ヨン様が大好きだけど、追っかけなんて出来っこなく録画をみるだけの日々。

そんな彼女が、ある日TVCMを見る…『ぱちんこ冬のソナタ』
賭事なんて新婚旅行で行ったラスベガスで見ていただけの彼女。
悪所なので足を向けたことさえないがパチンコ店のある場所は知っている。
ついに人生で最大の勇気を奮って自動ドアの前に立つ!!(場違いな服装で)

そんなステキな奥様に、偶然通り掛ったパチンコ屋の前で遭遇したいのよう!!
一目で上記の経緯を見抜いたワタクシは(笑)そっと後を尾けて店内へ。
なんの機械をどーしたらいーのかも判らない様子を背後で見守りたいの!!
彼女きっと勘違いして大金持って来てるし(断定)ヨン様の画像見たいだけだから、そーゆー人にありがちな大勝するんだけど(またもや断定)急に銀球が出てきてビクーリしたりするのね。周りのギャンブル野郎共は初々しい奥様に存外親切で換金所を教えてくれたりする。

彼女はでも、そのお金でヨン様グッズを買ったりはしません。たぶん旦那様か子供へのプレゼントを買うでしょう。儲けた事に味を占めてパチンコに嵌ったりもしません。

しばらく経った午後、ホテルのレストランで再び彼女を見掛けます(勿論偶然)
品の良さそうな友人達と話す声が聞こえてきます。
「ヨン様の画像は見たいけど、パチンコなんて、ねぇ」溜息を漏らす1人に同意する友人達。彼女だけは何も言わずゆったりと微笑みながらお茶を啜ります。
でもワタクシは気づくのね、その顔に冒険を達成した満足感とチョッピリの優越感を。

そんな妄想。イヤほんといないかしら、そんなひと。美人より可愛いルックス希望。
広い日本に1人位条件に当て嵌まるひと、いると思うんだけどなぁ。
って、そもそもパチンコ屋自らの行動範囲内にないから遭うの無理なんだけどさ。

……えー、っと…長居しました、ごめんなさい…やっぱ紙一重かも…
by スゥ。 (2006-03-31 11:31) 

miyuco

>はははっ まずパチンコ屋さんの前で張ってないとムリですね。
こんな目的で張っていること自体がおかしくて笑っちゃう(*≧v≦) 
背後で見守っているスゥ。さんも注目されそうですね。

劇団ひとりが南野陽子のファンだというところ、うなずけますよね。
あーゆー女王様タイプみたいなアイドルが好きなんでしょうね。

図書館で恩田陸の『チョコレートコスモス』ゲットしてきました。
(恩田版ガラスの仮面、楽しみ♪)
わたしの住んでいるところは人口が少ないんです。
おまけに図書館のそばを通らなければ駅前に買い物に行けません。
新刊が出たらとりあえずネット経由で予約を入れておくと
わりと早い順番で読むことができます。
つまんなくて途中でポイッと返しちゃうこともありますよ^^;
by miyuco (2006-03-31 17:41) 

太田プロ 宣伝部

管理人様

突然の書き込み失礼致します。
不適切でしたら、削除お願い致します。

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応募先:reading@ohtapro.co.jp
件名:「そのノブは心の扉」 読書感想文係り
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太田プロダクションホームページにも情報を掲載しております。
http://www.ohtapro.co.jp/

どしどしご応募ください。お待ちしております。

太田プロ 宣伝部

by 太田プロ 宣伝部 (2008-08-08 18:30) 

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