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容疑者Xの献身 東野圭吾 [読書]

言わずと知れた直木賞受賞作。
「このミス」一位。評価の高い作品です。
私が東野圭吾の作品を読んだのは「秘密」以来、二作目。
「なんだか冷ややかだな」という印象は変わりませんでした。
これは好みの問題ですけれど。

人物描写が少ないので登場人物をイメージしにくかった。
たとえば髪が長いのか短いのかとか、
背は高いのか低いのか、仕草に何か特徴があるのか。
花岡靖子が美しいという描写さえなかなか出てこない。

もっと魅力的に書けばいいのに。
そうすれば「自分のような醜い男が、彼女のような美しい女に恋い焦がれる」と
自分を卑下する石神との関係が強くでてくるのではないですか。
それにしても湯川学の天才ぶりを強調したいためだと思いますが
警察があまりに無能では^^;
以下、ネタばれがあるかも

   

ラストは切なかった。
天才数学者が頭の中で考えた筋道では、
人の感情をコントロールすることはできなかった。
石神の献身は実を結びませんでした。

うまいです。
靖子が自分の幸せを優先させたいと望み、
身勝手かもしれないと揺れながら
石神の最後の手紙に縋ろうとする狡さ。
多感な中学生の娘が耐えきれないところ。
石神の献身は重すぎる。あれを受け止めてはいけないです。
受け止める方が犠牲になってしまう。

きちんきちんと収拾されていきます。
感情的な破綻はないように思います。
でも、ひんやりした読後感。
頭の中でだけ考えた石神のプランにも
似た感触を作品に感じてしまう。
トリックはよく出来ています。
私自身は、途中で少し感づいてしまったので、
サプライズの楽しみが半減。
残念でした。

バランスがよく、ミステリーとしても上出来、
読みやすい文章、幕切れも鮮やか。
ラスト、石神のモノローグ、「自分は勝ったのだ」と
思ったところからの展開は見事。
圧巻です。
でも、ごめんなさい(誰にごめんなさいかよくわかんないけど)
感動はしませんでした。

   

東野圭吾の本は家にたくさんあります。
オットが大ファンです。
でも、『秘密』を読んだときに違和感を感じて、
それ以降読んでいませんでした。
出会い方が悪かったのかな。
北村薫の『スキップ』を先に読んでいて、大好きだった。
そして「魂の入れ替わり」というモチーフは
大島弓子さんの作品での感動が心に深く残っています。
比較すると『秘密』は温かみが少ないような気がしたんですね。

そんな私でも、東野圭吾さんの直木賞受賞はうれしかった。
長年にわたって評価してくれている読者が
大勢いるのに受賞できないのはあまりにも不自然でした。
「勝てて良かった」というコメント、喜びが伝わってきて素敵でした。

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容疑者Xの献身

容疑者Xの献身

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2005/08/25
  • メディア: 単行本


タグ:東野圭吾
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ayaka

またこんな所掘り返してきてゴメンナサイ(笑)

実はちょっと東野圭吾さんにハマッてしまい、miyucoさんのブログなら
何か面白そうなのがわかるかな・・・と探しにきました。

しかしあまり好きではないのね。
残念、旦那様にお勧めをおうかがいしたいわ(^_^;)

入院中に読もうと本を買ったけど、入院が先に延びたので
まずは【予知夢】を読みました。
【容疑者Xの献身】も買おうと思います。

by ayaka (2008-05-12 20:57) 

miyuco

>ayakaさん
ダンナさんに聞いてみたら「放課後」がよかったと
言ってました。彼は「同級生」とか初期のものがお好みです。
映画化された「秘密」は私たちの年代にはとくにせつなさが
迫ってくるような気がします。
ドラマ化された「白夜行」も読み応えありそうです。
「容疑者Xの献身」は映画になるので文庫化する可能性大ですが
もう退院しちゃいますよね^^;
東野圭吾の作品はブックオフでの品揃えがよくて助かります^^
nice!とコメントありがとうございました。
by miyuco (2008-05-13 18:17)