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砂漠 伊坂幸太郎 [読書]

「大学生と超能力と大統領の話です」…伊坂幸太郎

「砂漠に雪を降らせよう」
5人の大学生が社会という「砂漠」に
巣立つ前の「オアシス」で、
あっという間に過ぎゆく日々を送る若者群像。

Are you taking over
or are you taking orders?
Are you going backwards
Or are you going forwards?   
“WHITE RIOT”  The Clash  J.Strumer

おまえたち、支配するのか それとも、命令に従うのか
おまえたち、後退するのか それとも、前進するのか      
“白い暴動”

    

きっと伊坂幸太郎という人は、
スラスラとこういった物語を書いてしまうんだろうな。
「その気になればね、砂漠に雪を降らすことだって、
余裕でできるんですよ」
こう語る西嶋が物語を動かしていく。
このキャラクターは口調からして山口隆そのものですよね。
最初からイメージがはっきりしすぎてですね、
どうにも西嶋のインパクトが強烈すぎるわけですよ。

「同じクラスに東南西北を名字に持つ人間がね、
集まっていたんですよ。
これにね、何か意味がなければおかしいじゃないですか。
これを無視してどうするんですか」
こうして出会った4人と、
スーパーサラリーマンになる予定の鳥井くんの物語。

「でも自分でも思うよ。少し、地上に近づいてきたって」
「僕はさ、上空でみんなを見下ろしているタイプなんだ。
入学した時に鳥井に言われた。
だけど、今は少し、目線が地面に寄ってきた」
「鳥から、人間になりつつあるわけだ」
「単に、地上にいる西嶋に、大きな竹竿か何かで
引き摺り下ろされているような気もするけど」
北村と鳩麦さんの会話です。

そしてそんな西嶋をかつて地面に着地させたのが、
家裁調査官。
「才能のある人間ほど虐げられる」
「逃げるための理屈をこねてはいけない」
こんなことを言うのは私の大好きなあの方ですね。

容姿端麗で無表情な東堂さん、
西嶋の好きなラモーンズのCDをがんぱって聴くのがかわいい。
ほんわかした超能力者、南さん。
すでに社会に出ている鳩麦さん。
(彼女だけが西嶋の言うサンテグジュペリの本を読んでいる)
女性陣が魅力的です。

西嶋と東堂さん。美女と野獣風味のお二人。
「笑ってる東堂の隣りにいるのは、
俺じゃないと嫌だって思ったんですよ」
後悔ではなく前悔(?)していた彼が
こう思うまで時間がかかりました。

オアシスについて語られた物語。
「俺は恵まれないことには慣れてますけどね、
大学に入って、友達に恵まれましたよ」
こんなふうに言うのが西嶋だというところがいいですね。

この物語で最大の不幸を味わった鳥井くん。
そんな彼をそれだけで終わらせなかった「冬」のラストが
小気味良いです。

砂漠

砂漠

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2005/12/10
  • メディア: 単行本

売れる小説の条件。
「ユーモアと軽快さと、知的さだ。
洒落ているだけで、中身はない」
伊坂幸太郎がこう書くと何だか笑える。
おもしろい人ですね。


タグ:伊坂幸太郎
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