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村上春樹が語る (朝日新聞) [読書]

10/3、4と二日に渡り、朝日新聞夕刊に
村上春樹のインタビューが載っていました。

「東京奇譚集」を読んでから他の本を読めなくなってしまった。
あの空気感から離れられない感じです。
「指輪物語」「ハイペリオン」シリーズを読んだあともこんな感じでした。
そんな時にはゲームをして気分転換をするのですが、
今はPS2が息子の部屋に移動しているので
これを動かすのもちょっと億劫
でも、もしかすると、このブログが
「キングダムハーツ」のプレイ日記になってしまうかも(笑)

この社会の中で、どうやって少しでも自由に自分を維持して、
正気を保って生きていけるか

以下は新聞から抜き出した文章です。私にとっての覚え書き。

世界のどこでも、
「よくわからないけれど、よく分かる。
筋を整合的に論評はできないけれど、
すごくリアルに感じられる」
という反応が似ているという。

この言葉は、わたしの気持ちにピッタリです。
探していた言葉に出会った感じ。

僕自身は性的人間でも暴力的人間でもない。
書いているときは書きにくいし、苦痛です。
でもこれを書かないと、意識をこじ開けられない。
物語を大きく動かして違う場所に抜けたいときには、
時としてそのようなシーンを出さざるをえない

突然のように現れる激しいバイオレンスは
どういう理由なんだろうと思っていました。
彼にとって、意識をこじ開けるためには
そういった形をとる以外に方法はないという事でしょうか・・・

「小説は人間が生きていないとダメだと思う。
本一冊の中で、ひとりでもいいから、
生き生きと動いてくれれば、それでいい。
難しい感想を言われるよりも、
たとえば『カフカ』のナカタさんが好きだとか、
あの猿はすきだったとかいってもらえるとうれしい」
「誤読というものはないと思う。
私はこう読んだといえば、それが正しい読み方です」

作家さんにこう言っていただけるとうれしい。
ナカタさんもお猿も大好き。
と~っても難しいことが書いてある感想を読むと、
自分の文章を振り返って_| ̄|○ でしたが、
こんな私でも書いていいんだと少し安心しました。

「僕は、日本人であり、日本の小説家であって、
日本語で書き、日本の読者がいるわけです。
それは、僕にとって大事な事実です。
国家システムみたいなものから自由になりたいという思いと、
そこに小説家として関わっていかなければならないという気持ちが
同時にある」

「9.11同時多発テロのあたりから、
原理主義(ファンダメンタリズム)が、
世界のあらゆるところで目立つようになった。
グル(尊師)に殺せと言われれば殺したオウム真理教は、
原始仏教を模した原理主義ともいえます。
いちばん怖いのは、
体制がこのような原理主義的な行動に対抗するために、
同様の要素を取り入れていくことです。
オウム裁判のことなどを書くのは、まだ先になるでしょうね」

「仮説にすぎないが、
僕の小説は社会的に一種のカオス(混沌)状態にあるところで、
比較的よく読まれるようです。
ということは、日本はカオス状態という意味で先進国であり、
日本人はカオスや矛盾とともに、
それを自然なものとして生きてきたのではないか」

40代の私には、親世代との間の激しい世代間ギャップ、
価値観の違いがカオスと矛盾の根底にあるものでした。
若い世代にとっては、このギャップはもっと緩やかなもののような気がします。

「揺れ動いている社会においては、
静止したものを打ち立てようとしても、説得力がない。
ともに揺れ動いて揺れをのみこんでしまうもの、
両方が揺れながら関係を変えて動くもの、
その方がリアリティーを出す。それは、僕の書き方でもある」

日本の読者は、26年の間に世代がひとつ交代した。
「不思議にも、読者が感じていることは変わらない。
この社会の中で、どうやって少しでも自由に自分を維持して、
正気を保って生きていけるか
、ということです。
違うのは、今はフリーターになれること」
「フリーター文化というかニート文化というか、
怠惰かもしれないが、成熟した文化が育つ土壌になるのではないか」

意識の通路をくぐりには、「体力、集中力、持続力」が必要だ。
「ものを書くのは肉体労働」というのが持論。
「体だけは鍛えている」
村上さんは子供がいないので、年をとる実感がないという。
「だから、気持ちが若いかというとそうでもない。年相応です。
よく老人の知恵と若者の体力があればいいといわれるけれど、
僕の場合できるだけ肉体を鍛えて、
自分を少しでも強く、きちんと保っていきたい」

外国によく行くのは、
つねに新しい地平を切り開きたい欲求が強いからだ。
「ぼくは小説家になろうと思ってなったわけじゃなくて、
たまたま小説家になった。天の恵みみたいなもんです。
小説を書くのも翻訳するのも、楽しいから。
いくら文章を書いていても、本当に飽きないですね」

この年代の作家さんたちのインタビューを読むと、
たいてい若い人への繰り言が入ってくる。
しかし、村上春樹のそういった発言は読んだことがないです。
この自由な感性ゆえに世代を越えて読まれているんだなと思いました。
これからも楽しく小説を書いていただけるとうれしい。


タグ:村上春樹
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コメント 8

はじめまして。デイブギルモアで検索したら何故か辿り着きました。

「この社会の中で、どうやって少しでも自由に自分を維持して、正気を保って生きていけるか」

↑これは僕もグッときました。グランダディってアメリカのバンドも似たようなことを「サムデイ」ってアルバム出した時に言ってましたね。
by (2005-10-06 18:59) 

miyuco

かねこさん、はじめまして。
>デイブギルモアで検索したら何故か辿り着きました
ピンクフロイドの音楽とのファーストコンタクトを書いただけの文章が
検索に引っかかるなんて・・・申し訳ありませんでした(><。)。。

村上春樹のこの言葉は強い言葉ですね。
胸に響きます。忘れないようにここに残しておきました。
読んでいただいてありがとうございます。
by miyuco (2005-10-07 09:40) 

きの

村上春樹さんの朝日新聞のインタビュー記事が気になっていて、ネットで調べていたらここに到着しました。僕は記事を読めていないのですが、この要約でおおよその雰囲気はつかめたかと思っております。ありがとうございました。
他のブログ内の文章をいくつか読みましたが、僕は好きです。気に入りました。SO-NETでブロク書いてないのでお気に入り登録とかできませんが、また読みに来たいと思います。
by きの (2005-10-14 11:30) 

miyuco

きのさん、過分なお言葉ありがとうございます。
やっぱり検索に引っかかるのですか・・・
自分の文章を消して、記事の要約だけにしたほうがいいかなと
思っている今日この頃です。要約というかほぼ全文ですが。
私の文章、どう見てもジャマだし・・・
朝日がネット上でアップしてくれればいいのにと思います。
このインタビューが埋もれてしまうのはもったいないです。
by miyuco (2005-10-14 12:33) 

きの

miyuco さん
>私の文章、どう見てもジャマだし・・
そんなことないですよ。miyucoの文章があって村上さんの文章が引き立っていると思います。
このまま、残されることを希望します。
by きの (2005-10-14 19:45) 

miyuco

>きのさん
ハイ、残しておくことにします。
ありがとうございます(*^_^*)v
by miyuco (2005-10-15 08:04) 

マーキー

村上春樹さんのインタビュー、興味深く読みました。
nice !つけておきますね。
by マーキー (2005-11-06 17:19) 

miyuco

>マーキーさん
nice !&コメントありがとうございます。
このインタビューを読んで、
村上春樹に少し近づけたような気がしました。
by miyuco (2005-11-06 17:27) 

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