Vol.61 投信・個別株にみる資産への道
今回は、プロが選定するといった、一般的な投信と個別株との違いとは異なる角度から、投信の魅力について考えていきたいと思います。同時に、個別株における投資スタンスを再考するきっかけになれば幸いです。
“資産への道”としたように、将来、資産と呼べるリターンを享受することをめざす方法のひとつに、割安な水準で仕込んだ銘柄を持ち続けて大きな収益を得る方法があると思います。いわゆる長期投資のスタンスです。当然、結果が出るのが遅いため、マスコミなどがテーマとして取り上げるのも限定的で地味な存在だったわけですが、そろそろ、その実力の片鱗がみえてきたように思います。
そこで、具体的な例として、2003年からの日本株の動向を振り返ってみましょう。一見、「株価が上がった」という過去の話を聞いてもうらやましいだけのことのように感じるかもしれませんが、過去の動きを検証することで、ここからの、“自分にとって後悔しない投資スタンスの確立”に向け、何らかのヒントが存在するかもしれないと思うのです。
2003年の株価水準からみると、軒並み上昇しているので個別株の事例には事欠きませんが、例えば、『トヨタ自動車』の動きをみてみましょう。当時、代行返上の売りを浴びたことなどから、2003年4月につけた、2,455円を大底に、その後の安値は、2004年3,390円、2005年3,790円、2006年5,430円と着実に切り上げており、売上高2兆円突破などを背景とした株価の回復ぶりは周知のとおりです。時価総額トップで、手堅い銘柄と位置づけられることの多い『トヨタ』でも、わずか4年で株価は3倍以上(2007年3月現在)になっています。その間、さまざまなタイミングで『トヨタ』を保有していた人は多いと思います。
でも、今でも持ち続けている人は、どの程度、残っているでしょうか?
“割安な水準で仕込んだ銘柄を持ち続ける”ことが、感情を持つ人間にとって、いかに難しいことか、実感させられます。
一方、日本株を投資対象とする投信では、『トヨタ自動車』を上位に組み入れるファンドを数多くみかけます。ためしに、運用状況が詳しくわかるレポートなどで、保有するファンド、あるいは、いくつかの気になるファンドの『トヨタ自動車』の平均買付コストをチャックしてみてください。きっと、うらやましい水準で保有しているファンドがみつかるはずです。『トヨタ自動車』という銘柄を個別株として買うことは誰にでもできる。そこをあえて、投信経由でも日本株市場に投資をしてきたからこそ、間接的に『トヨタ自動車』を持ち続けていることに似た成果がある。個別株に比べて、“売りにくい”特徴を持つ投信には、こんな魅力もあると思います。そして、ターゲットとする市場で右肩上がりが続けば続くほど、その成果はますます価値を持つことになるのです。
次回は、ファンドマネージャーについて考えていきたいと思います。
野尻美江子
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