Vol.47 バランス型ファンドは1本で完璧?
引き続き、投資信託の個性を見ていきます。今回は、急速に純資産総額を伸ばしているバランス型ファンドについて見ていきたいと思います。
通常のバランス型ファンドとは、運用方針に応じて、国内外の株式や債券、短期金融資産などに、分散投資する投資信託です。そのため、1万円から購入できる1本のファンドに投資するだけで、たちどころに、世界中の株式や債券などに幅広く投資することが可能となるわけです。さらに、03年からは、株や債券などの有価証券に加えて、REITが組み込めるようになったことから、分散効果はより一層、パワーUPしていて、“資産分散ファンド”や“3分法”“6資産”などの名称で、それぞれ特徴のあるファンドが次々に設定されています。
なかでも、バランス型ファンドが注目されるきっかけといわれるのが、05年10月からの郵便局の投信販売スタート。今まで、貯蓄といえば、“定額貯金”オンリーだった人が、リスク商品の魅力や運用における資産分散のメリットなどを知って、馴染み深い郵便局での投信デビューが進んでいることが背景にあるようです。確かに、バランス型ファンドは、“お菓子の詰合せパック”のような感覚で、預貯金しか保有していない人にとって、たちどころに、投資対象を増やすことができます。
さらに、バランス型ファンドの大きなメリットといえる“リバランス効果”があることも大きな魅力です。リバランス効果とは、投資経験が豊富な人でも個人ではウオッチし続けることが難しい、投資対象となる各市場の時々の動向を、プロが判断して、それに応じて組入れ比率を適宜見直してくれるものです。投資対象が外債のみのファンドなどに比べると、おのずとプロに任せる意味合いも素直にうなずけるというもの。一層、全天候型を目指して、「分散が可能な限り分散してみよう!」という発想も浮かんできます。そうなると、バランス型ファンドは、誰にとってもオールマイティーな金融商品のように思えてきてしまいますが・・・、これまでにも、お話してきたように、すべての人に最適な金融商品は存在しないのです。
資産分散効果が魅力のバランス型ファンドですが、皮肉なことに、その弱点も分散されているところにあります。どういうことかというと、いくらプロが組入れ比率を見直すといっても、投資対象である複数資産には、あらかじめ組入れ比率の上限が設けられていて、上限を超えない範囲で組入れ比率を変動させることになります。そのため、REITや債券など、ある単独の資産のみを投資対象とするファンドに比べて、バランス型の組入れ投資対象のうち、ある資産のパフォーマンスが好調でも、残りの資産が思わしくないと足を引っ張る結果となり、運用成績に響いてしまうことがあります。また、複数に分散されればされるほど、上昇した時も下落した時も、「なぜ動いたのかがわからない」ことが多く、リスク商品を保有してみたものの、相場観を養うことには繋がらず、保有する投信そのものの投資判断を難しくしてしまうのです。
弱点はこれだけではありませんが、だからといって使い方によっては便利なバランス型ファンド。次回も、バランス型ファンドの個性を見極めていきましょう。
野尻美江子
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分散型ファンドの短所は、売るときも、まとめて売らなければならないということでしょうか。
たとえば債券はいい感じなので換金したいけれど、株価は低迷しているから持ち続けたいというような場合に、分散型ファンドは行動が制約されてしまいます。
したがって、中級者以上は、分散型ファンドに頼らず、やはり複数のファンドを自分でセレクトして保有する方がよいと思います。
by 世界のREIT (2007-01-04 00:11)
世界のREITさん
はじめまして。この度は、コメントを頂きありがとうございます。
運用において換金性・流動性を保つことはとっても重要ですよね。私も、世界のREITさんと同じで、複数のファンドを、ウエイトを自分で見直しながら運用していくのが好きなタイプですが、当社の会員さんの中には、投資歴ウン十年でもバランス型を一部組入れている方がいらっしゃいます。良くも悪くも毎年のリターンがつかみやすく、資産の目減りを防ぐことを期待しての選択なんです。でもやっぱり、リスクを取れる若いうちは、特に自分でフルに動きたいもの。よろしければ、VOL49以降も参考にして頂けると幸いです。
by 野尻美江子 (2007-01-22 09:36)