「赤い天使」 [映画(邦画)]
表題の映画は、1966年に大映が製作したモノクロ作品であり、戦時中の野戦病院を舞台にした愛のドラマである。が、どうしてこの作品を取り上げたかというと、この作品は「ケータイ刑事 銭形雷」のセカンド・シリーズの第3話(2006/7/15放送、監督:佐々木浩久、脚本:豊島圭介)の「瞬間移動した死体 ~元人気女優誘拐事件」の劇中に登場した「赤坂の天使」という劇中作の元ネタになっているためである。この度、WOWOW(192ch)で久しぶりに放送されたということで、取り上げることにした。尚、「ケータイ刑事 銭形雷」の該当物語(2nd.第3話)についてはここをクリックして下さい。(新しいウインドが開きます。)
この作品の監督は増村保造、原作は有馬頼義、脚本はこであり、出演は、主役の従軍看護婦・西さくらに若尾文子、岡部軍医に芦田伸介、その他の出演者としては井上大吾、河島尚真、喜多大八、川津祐介といった名前が並ぶ。尚、「銭形雷・2nd.3話」ではこれらの名前を色々ともじって、若尾文子→若尾早子(わかお・はやこ)、川津祐介→川津隆介(かわづ・りゅうすけ)、増村保造→増村幸造(ますむら・こうぞう)という人物が劇中に登場するが、こういう所は「ケータイ刑事」ならではです。(尚、ヒロインの「西さくら」という名前からは「轟轟戦隊ボウケンジャー」に登場するピンク・西堀さくらの名前を思い出してしまう。この苗字は第一次越冬隊隊長である西堀栄三郎氏の苗字を頂いたと言うことはわかるが、「さくら」という名前の方はひょっとしたら本作「赤い天使」のヒロイン・西さくらのことが頭にあったのかも...?)
物語は、日中戦争の昭和14年(1939年)、天津の陸軍病院に従軍看護婦として配属された西さくら。状況は良くなく、狂気と言わざるを得ない日常が繰り広げられている。仕事に没頭するさくらだったが、そんな中彼女はモルヒネ中毒の岡部軍医に次第に惹かれていく。そんな中、応急看護班として前線に向かった二人だったが、敵に囲まれ孤立、更にはコレラ患者が出た集落に取り残されてしまう...
モノクロ映像が、戦争の狂気(例えば、薬が無いために片っ端から腕や足を切断する軍医、女と言えば襲うことしか考えない患者である負傷兵たち、その他)を巧みに描写している。これがカラー作品だったら、あまりにもリアルすぎて、劇場で失神者が続出下のではないだろうかと思われるほどのエグい描写がされている。あまりにも過酷な場所が舞台となっているために、狂気が人を狂わせているが、それが生き伸びるためになされるという戦争に対する反戦メッセージを包含し、更には、極限状態での男と女の性の本質を問うている。日本では、本作の評価は高くないが、本作は海外では高く評価されている作品で、増村&若尾コンビは有名であり、日本映画に新風を呼んだ作品である。
そんな中、若尾さんの看護婦姿はエロティシズムも漂わせながらも、凛として仕事に励む姿、その美しさは、天使そのものである。尚、「銭形雷」の劇中劇『赤坂の天使』の物語は「誘拐犯の文太と人質になった看護婦の睦月。二人が落ちた禁断の愛の世界。二人の炎は赤坂の町を焼き尽くすのだった...」というストーリーと言うことになっているが、この中身までは本作には沿っていない。(こちらでは、ヒロインは石野真子、彼女の看護婦姿も悪くないが、若尾さんにはとうてい...)しかし、「禁断の愛」を描いたという所は一応受け継いでいます。更に、そのクライマックス、ヒロインは自ら命を絶つという設定や、ヒロインの手には短刀がある所などは、本作「赤い天使」のクライマックスに捧げている、と言うことが出来る。(こういう拘りは「ケータイ刑事」では多く見られます。)最近のヒットした大作映画だけではなく、本作の様なメッセージの込められた作品、しかも日本では今ひとつ評価が高くないが海外では傑作として知られている作品をとりあげる「ケータイ刑事」シリーズ。やはり日本映画界の期待の若手監督が集まっている作品であり、ただ者ではない作品である。
尚、「ケータイ刑事」ファンは、こう言うところから日本映画の過去の名作に触れてみましょう。また、古い日本映画などがお好きな方も、これをきっかけにして「ケータイ刑事」シリーズをご覧になることをお薦めする。(馬鹿馬鹿しい物語もあるが、先人が残した偉業に対してはしっかりと敬意を払っているのが「ケータイ刑事」です。)
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↓原作本です。
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- 出版社/メーカー: ハピネット・ピクチャーズ
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↓「2nd.3話」はこちらに収録されることになります。
↓その他の「ケータイ刑事」シリーズを...
ケータイ刑事 THE MOVIE バベルの塔の秘密 ~銭形姉妹への挑戦状 スタンダード・エディション
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↓ちらっと触れた「ボウケンジャー」と「西堀栄三郎氏」関係
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