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もう一つの万博 「ヤノベケンジ キンダガルテン」展と「日比野克彦の一人万博」展 [現代美術]

愛知万博が開催されていますが、
その裏で「万博」をキーワードとする展覧会が開催されています。

一つは先に紹介した水戸芸術館の「日比野克彦の一人万博」展
 http://blog.so-net.ne.jp/mckeee/2005-08-06
もう一つは、豊田市美術館の「ヤノベケンジ キンダガルテン」展です。

どうしても国家プロジェクトになってしまう「万博」に、
それぞれ個人として向き合っているのが特徴のように感じます。

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ヤノベケンジさんは愛知万博に関連して
幻の企画「マンモス・プロジェクト」を残しました。
産業廃棄物で制作されたロボットマンモスが
排ガスを撒き散らしながら街を練り歩き、
最後にシベリアに搬送され永久凍土の中に埋められる、
という途方もないプロジェクトです。

途方もないプロジェクトながら、
国家プロジェクトではなく、個人の誇大妄想としての大規模プロジェクトに
国家プロジェクトにはない奇妙な愛着を覚えます。

誇大妄想としての「万博」が示すのは、
国家プロジェクトの示す夢や希望ではなく、むしろ現実。
心に響きます。

豊田市美術館 http://www.museum.toyota.aichi.jp/japanese/index.html
ヤノベケンジ・アート・ワークス http://web.iminet.ac.jp/yanobe/index.html

KENJI YANOBE―1969-2005

KENJI YANOBE―1969-2005

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 青幻舎
  • 発売日: 2005/08
  • メディア: 大型本

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発想を自分の心の中で誇大妄想的に膨らまし作品を作り上げていくヤノベケンジさんに対し、
日比野克彦さんは、まず自らの発想をポンと目の前に投げ出してみて、
それを皆で形作っていくことで作品を制作しています。

一人万博の「HANDS HABIT」は、
ワークショップを元に、
日比野克彦さんがのべ千人の人手で作り上げた作品です。

国家プロジェクトとは異なり、
多様な人間による手作り感あふれる「万博」。
万博は観覧するものではなく、参加するもの。
大きな夢でなく小さな夢がいっぱい詰まっていました。

HIBINO EXPO.2005 http://www.hibino-expo.jp/
日比野さんのHP http://hibino.cc/

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お二人とも子供時代に大阪万博をリアルタイムで経験できた世代。
大阪万博がキッカケで今回の「万博」にたどり着いたかは不明ですが、
現在開催中の愛知万博も何かのキッカケになればいいなぁと思います。

今回の愛知万博がキッカケであり、はじまりとなって、
それぞれ何年もかけて個人の「万博」にたどり着く。
そうなれば、愛知万博は成功といえるんじゃないでしょうか?

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「万博」と芸術家といえばこんな本を読みました。

戦争と万博

戦争と万博

  • 作者: 椹木 野衣
  • 出版社/メーカー: 美術出版社
  • 発売日: 2005/01
  • メディア: 単行本

国家プロジェクトに取り込まれていく芸術家、建築家達の姿が、
興味深くて面白い数多くの挿話と共に書かれていて楽しめました。


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コメント 3

ももこ

椹木野衣さん、今いちばん気になる人かも。
つい最近まで、お名前さえ知らなかったのに、
ネットや雑誌で彼の書かれたものをいくつか読みました。
評論って苦手で避けて来たけれど、読まなくちゃ。
コメントじゃなく、ヒトリゴトになってしまいました。
mckeeさんのブログを読み、
いつも何か刺激のようなものを頂いています。感謝!
by ももこ (2005-09-10 00:36) 

じゃむ

mckeeさん、こんにちは。
私も凄く興味のある分野の話をありがとうございます。
知識は全く無いですが、このおふた方のア-チストには惹かれるものがあります。
きっと人間性もあるんでしょうね。
一昔のお堅いイメ-ジの芸術家ではない、何かそんな物をかもし出しているア-トをやっている人に惹かれます。
今は、どんどんア-チストも自分だけの殻にこもっていないで外に出て行くやり方で進めていく制作の仕方が大事になっているように思います。
昔の芸術家って言うのは、作品に関しても多くを語らず、評論家が、つらつらと一人だけ知っているような感じで書いているというタイプが多かったように思うのです。
今はそんなタイプのア-チストは受けないですよね。受ける受けないの問題ではないけど、ア-チストが自分の作品を言葉で表現できないのは、やっぱり自分の作品の意図を完全には自身で理解していないからだと思うのです。
とにかく見てください・・というのも良いのですが、それだけでは観客には伝わらない事が多いし、もったいないと思うんですね。
作家と見る側の間にポッカリ穴が開いて。
ですから、日比野さんやヤノベさんなんかのア-チストというのは本当に新しいタイプのア-チストだと思います。
by じゃむ (2005-09-11 01:56) 

mckee

>ももこさん
ぼくも今年になって初めて椹木さんの本を読んだんですが、、、興味深くて面白かったです。ももこさんにもオススメです。
思いつきの記事ですが、お役に立っていればうれしいです^^。ありがとうございます。

>じゃむさん
確かに、日比野さんもヤノベさんも観客というか一般の方を対象にして作品を作り、その反応を楽しんでいるような気がします。きっとそこが惹かれる要因なんでしょうね。ぼくもこれからも注目していきたと思います。
by mckee (2005-09-11 21:20) 

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