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Promise  ~週末婚~ [あの日から今日まで]

11月に”彼”の両親からも強引に押し切った形ではあるものの、私たち二人の中では充分過ぎる理解を得られてからは、それまでよりも少しだけ自由に会うことが許された…とは言っても、”彼”の仕事の関係で時間的なものに制限がある事に変わりはなかったけれど。

”彼と彼女”という関係になってから半年が過ぎ…。初めてのクリスマスを迎えようとしていた12月の初旬に、私たち二人はお互いの母親から呼び出された。

それぞれが母親を伴い、待ち合わせの場所へと向かう時の気持ちは”彼”も私も少なからず不安があった…≪何を言われるのだろう≫と。

母親同士は”あの夜”には会っていない、後日”彼”の母親から電話があり挨拶が済んでいた事を知っていただけで、それ以上の”談合”が持たれていた事までは想像もしていなかったからだ。

終始和やかな雰囲気の中で、運ばれてくるご馳走を食べているうちに、”彼”も私も≪顔合わせの食事会か?≫と思い、気持ちが緩んだ…。

でも、その”油断”を見破ったのは私の母である。

「美由?あなた一体いつまで働かずにフラフラしてるつもり?」

「…いつまでって…」 (一番痛いところを突かれて返す言葉がない)

そこで、”彼”が言葉をつないでくれた。

「俺が仕事に就くことを止めていました。経済的な事の心配は俺が責任持ちますから…。」

「それは、この子を雅樹君と同じ姓を名乗れるようにしてくれてからでいいわ。今、そう言ってもらっても私はうれしくないの。確かに私は”アナタから預かる”と言ったけど、雅樹君からの連絡を待ってるだけの女にはしたくない。」

そして、”彼”の母親も参戦する…。

「それじゃあ、雅樹は美由さんを”愛人”みたいに囲うの?」

「そんなつもりはないよ!」と”彼”は少し怒り口調になる。

「二人の気持ちを疑ってるわけじゃないのよ。でもね男と女…ううん人の気持ちって実際のところはどうなるかなんてわからないでしょ。それは、結婚したから変わらないものではないけど、この先、万が一よ、二人の気持ちが離れた時…この子が何もない女になってしまうのだけが心配…。」

「私がちゃんと社会人として生活してなきゃダメってこと?」

「雅樹君が忙しいから、美由には時間的に自由でいて欲しいのは分からないではないけれど、これだけは、私のわがままを通させて。」

「雅樹、美由さんのお母さんの心配がそれだけではない事くらいはわかってるでしょ?今までは私たちに秘密にして分の不自由さだけは解消してあげるから、美由さんを社会人にもどしてあげなさい。それでダメになる程度の覚悟でしかないなら、美由さんに”待て”と言う資格はないと思うけど?」

「わかりました。でも、年があけて美由の誕生日が過ぎるまで、それまでは今のままでいけませんか?」

「…ということで。どうですか?お母さん(笑)」と”彼”の母。

「それでかまいません。(笑)」と私の母。

一つの裁判に勝訴したような二人の母の笑い…。

≪この”約束”をとりつける為の食事会だったのか≫と二人の思惑を悟ったつもりでいたのも束の間…。

今度は”彼”の母親がたたみかける様に問いかける。

「で、アナタたちはどうしても毎日会いたいの?」

 「ちょっと待って…それだけはどんなに言われても止めないよ。この間の夜は本当に初めての事で、あの日以外に家を空けた事はない。美由は時間がたとえ15分しかなくても何も言わない。」

「私、今までも電話でたくさん話をしてきました。でも、どれだけ話しても見えない答えが、会社で顔を見て話した時は、本当に少しの言葉の語尾で気持ちが分かるというコトが何度もあって。だから、わずかな時間でもちゃんと顔を見て話せる事を大切にしたいと思うのはわがままですか?」

 ”彼”も私も、二人の母親に口を開かせたら最後…とばかりにお互いの気持ちを次から次に力説した。

その努力の甲斐もなく、反撃が始まる…。

「今のままだと、二人とも息切れしちゃうわよ。」と私の母。

「これから、美由さんが働くことになれば尚の事。無理は続かない…。」と”彼”の母。

「いつだったか、美由に”ケンカとかはしないの?”と聞いたら”時間がもったいないからケンカなんてしてられない”って答えたの覚えてる?」

「うん…覚えてるよ。」

「そうやって、しなければいけないケンカを我慢してたら、最初のケンカが最後のケンカになってしまうかもしれない…って思わない?(笑)」

こんな会話のやりとりの中、私はというと、二人の母親の言葉に諭されてしまうのではないかという不安から、全ての結論を”彼”に委ねることにして黙り込んだ…。≪黙秘権の行使だ!≫

 そして、いよいよ言葉が無くなる直前に”彼”が切り札となる言葉をもらした。

「俺の身勝手な言い分を全部のんだ美由が”たった1つ”だけ俺に約束して欲しいって言ったことなんだ。だから、何を言われてもこの約束だけは破れない。」

この言葉の後、したり顔で私の母親が言った。

「やっぱり、美由が言い出した事だったのね。」

「どういうコト?」母たちの意図が呑み込めず問いかけた私。

「ママは美由が望んだ事だってすぐにわかったけど、お母さんは雅樹君が夜遅くに美由を連れ出してるんじゃないか?って心配して下さったの。」

「それでね、美由さん…金曜日の夜から土曜日は雅樹が子供たちの事を考えなくてもいいように私とお父さんが協力するから、日曜日は我慢できる?」

もともと”土日の休日は子供たちのために”そう言って”彼”の休日ですら、夜の一時間程度しか会っていない。

≪我慢なら、もうしてるもの…。≫

私は返事に困って”彼”の顔を見た。≪イヤならイヤと言ってもいい。≫そんな感じでゆっくりと頷いてくれたのを確認して答えた。

「私、土曜日ゆっくり会えるのはうれしいけど、毎日会えないのはイヤ。それなら、今のままでいいです。」それが私の答え。

「頑固な娘ですみません…。」赤面して謝る私の母。

「わかったわ。美由さんがそこまで望んでるのなら、何も言わない。お仕事に就いてからは、体を壊さない様にだけ気をつけなさいね、夜遅くにしか会えないんだから。それから…一旦口に出した以上、金曜日の夜から土曜日の一日は自由にさせてあげる。これは、お父さんと決めた事だから大丈夫よ(笑)」

 この思いがけない提案は、はなから諦めていて考えもしなかったコトだったため正直驚いた

私にとってはウレシイ事でも、彼”がなんと返事をするか…が気になって素直に喜ぶわけにはいかなかったのも事実。

案の上”彼”はその提案に甘えるつもりはないらしく…。

「そこまで、オフクロに面倒かけるわけにはいかない。」とあっさり断った。

≪やっぱり舞い上がらなくて正解。

「面倒って何?雅樹の子供は私の孫なんだから!!!それに、これは美由さんの気持ちにお父さんとお母さんが応えたくて決めたの!!!雅樹の返事は聞いてないから黙りなさい!!!」

この後、思いやりという名の約束事に感謝の気持ちを込めて、”彼”も私も、そして私の母も…同じ言葉でこの”会談”を結んだ。

「ありがとう」

「ありがとうございます」×2


お母さんからのこの一喝で、”彼”と私の今が決まった様なものだ。

ちょっと変則的な関係…[”恋愛”以上”結婚”未満]いわば、週末婚。 

紆余曲折を繰り返し、辿りついた私たちなりの形。

少女の頃から夢見ていた”家庭”とは似ても似つかぬこの形。

まわりで支えてくれる人の”愛”の重さを思う時≪こんな形もアリそう思えるようになって来た今日この頃の私…(笑)


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